7、自己紹介
他にやることもないので魔物選びの本を再び読みながら、しばらく彼が待っていると、ようやく他の人々も魔物の選択と成長点の割り振りが終わったらしい。そして当然、と言いたげな流れで自己紹介をすることになった。
ガイドをのぞいて、全員で輪になる。
隣で笑顔を浮かべている女性は他の誰よりも魔物を選ぶのが遅かったようだったけれど、成長点の割り振りはさっさと決めて、他の人たちが終わるのを待っていた。
その女性が真っ先に手をあげて、では私からー、と言った。
「どうもどうも。魔物は幽霊を選びました。魔法使いですー。ドラゴンさんがどうやら炎を吐くみたいなので、水の魔法を選びましたぁ。支援攻撃は任せてください。名前はユラユラです。どうぞよろしくお願いしますー」
にっこにこと笑うその女性の言葉に、彼は感心した。ちゃんとバランスを考えて魔物を選択したらしい。というか、六人の中で最後まで魔物を決めていなかったのは、他の人たちの選択の様子を見ていたからなのかもしれない。
時計順がいいですよね、と言葉を振られる。
どうせどの順番だろうと自己紹介はすることになるのだから、否やはない。彼は意識して笑顔を浮かべた。なんとなく学校のクラスで自己紹介した時のことを思い出す。
「えー、こほん。魔物はサソリを選びました。ハサミでパンチしたり、尻尾で刺したりしようと思ってます。付けた名前はサソリさんです」
それから、ちらっと輪から離れた場所の人物を見てから付け加える。
「どうぞ、お気軽にサソリさんとお呼びください」
軽やかに言い切ると、勝ち気な美人が、ぶふっ、と吹き出した。
口元を押え、面白そうに笑っている。
「……さ、さらっとさん付けを要求されてる。その台詞、ガイドさんのパクリじゃない」
とりあえず受けはよかったようなので、彼――サソリさんはほっと安堵の息を吐いた。