66、ばったり
森の中、次々と魔物を倒して成長点を手に入れて、魔法に対する防御力を上げていく。どの程度上げればいいのかという目安が分からないので、なんとも息の詰まる感じがした。
遠くのほうから魔物の争う音が聞こえる。おそらくは他の参加者が自分たちと同じように成長点を稼ぎに来ているのだろう。
「別の方向に行こうか」
ほかの参加者と顔を合わせたからといって、最初のように即戦闘に陥るというわけではないが、なにもメリットがなかった。近くにいてもお互いに他の魔物を奪い合ってしまうだけだ。
サソリたちが別の場所に移動しようとしたとき、カバがふと足を止め、ユラユラが向きを変えてふり返った。
少し遅れてサソリも物音に気付く。木々の合間から小鬼が走り出てきて、そして相手もこちらに気づいたらしくびっくりしたように動きを止めた。その手には小鬼の背の丈ほどもある木の棒を持っている。棍棒というよりは、杖のように見えた。
ほかの参加者と戦っていた魔物がここまで逃げてきた、という様子ではない。他の参加者がここまで追ってくる気配もなく、遠くでまだ戦闘音が聞こえている。
どちらかといえば、この小鬼も戦闘している参加者を避けようと、前もってあわてて逃げてきたのだろう。その結果こうして他の魔物の集団に出くわすのは不運としかいいようがなかったが。
一瞬動きを止めた小鬼だったが、すぐに状況を理解したのか行動に移った。杖の先に光が集まる。魔法だ。
マタタビが叫んで走り出す。
「ようし! あたしがもらい!」
「待って、マタタビさん!」
「なに?」
「せっかくの魔法使いだから……練習してみない?」