63、仲間を見つけた
大丈夫。
自分は大丈夫。
繰り返す。本当に大丈夫であれば、繰り返す必要などない。分かっていても、雛子はそれでも言い聞かせていく。
まだ戦える。
部屋を出ることだってできるし、ご飯も食べられる。街を出歩ける。街の外にも出られる。入り口の前だけであれば。
恐怖は過ぎ去っていく。慣らされていく。無理やりにおしこめられ、平坦に。
きっとそれは、ここに自分たち参加者を呼び寄せた不思議な存在の力なのだろう。
部屋の中、顔を上げると青年がいた。
「ユッくん……」
「ほら、雛子。朝食を持ってきた」
「ありがと……」
たったひとりの仲間。ユッくん。
ほかの仲間とはいろいろあって別れてしまった。そのことが悪かったことも今なら分かる。あるいは、悪かったのはそのあとで他の仲間を探さなかったことだろうか。
皿と匙を受け取って、話を聞く。
「騎士団を襲っていたのは間違いだった」
「うん。私は大丈夫だからもう……」
「今あいつは別にいる」
「……っ」
行動の過ちを認めながら、けれど目的を諦めようとはしないユッくんに、雛子の持つ匙が揺れる。
そして。
「仲間を、見つけたんだ。そいつらと協力して、今度こそあれを追い詰めてみせる」
「…………!」
自分は見捨てられるのか。
その疑念からの衝撃と、そうなることがユッくんにとって最善であるはずなのに認められない自分の浅ましさに、雛子は目を見開いた。