60、まあまあ
人間と別れ、もう帰ろうかという意見は出たものの、話し合いの結果そのまま大猿をぶちのめしてから、サソリたちは街へと戻ってきた。
いったん寮まで戻って解散し、自由行動になったのだが、街へ出たサソリが寮へ戻るとカバが両手を机の上において、なにやら難しそうな真剣な表情で前を見つめている。
まさか幽霊やら座敷童でもいるのかと思ったが、少なくともこの世界の幽霊は霊感がなくても目に見えるはずだった。
「ええっと……」
「あ、サソリさん。おかえりなさい!」
「ただいま。えっと、なにしてたの?」
「それは……そろそろ回復する技もある程度成長してきたので、他にいい成長点の使い方がないか調べてたんです。か、回復するのが嫌になったんじゃないですよ?」
理由に納得して、サソリはうなずいた。
「そっか。なにかよさそうなのはあった?」
問いかけると、カバは言いづらそうに、
「び、ビームとか……」
「ビーム?」
「あ、あとは、姿を見えにくくする能力とか。あの、サソリさんはなにをしていたんですか」
なぜか恥ずかしがっている様子でカバが話題を変える。
サソリは小さく息を吐いた。
「ちょっと街で聞き込みをしてきた。なにか騎士団を襲ってる魔物の情報があるんじゃないかなと思って」
「なにか、分かりましたか……?」
「んー。まあまあ、かなぁ」