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59、帰ったほうがいい

 なじみの商人と商談を終えたゴードンは、握手をして笑顔を浮かべて見せた。自分の街のためになるのであればこの程度の愛想は振りまいてやれる。

 自分も相手も、円滑に物事が進むのであればそれにこしたことはない。

「お前にはいつも助けられている。これからもよろしく頼む」

「おお、そう言ってもらえるとは光栄なことですな」

「この後のことだが、まだこの街にいるのか?」

「…………? ええ、まあ。魔物の領域に近い、ここでしか手に入らない貴重な商品も多いですから。少しばかりとどまるつもりでおりますよ。なにか他に、わたくしに用でもございますか?」

「いや。これは忠告だが」

 ゴードンは眉間にしわを寄せながら、窓の外をにらむ。

「取引や掘り出し物探しでもするつもりなら、今回はできるだけ早めに終えて帰ったほうがいい」

「どういうことです。まさか、魔物の大群でもこの街に攻めてくるとか?」

「そうじゃない。まあ相手は魔物のようなものだが……中央の魔法使いが来ている。この街にだ」

「なんですと?」

「中央の虎の子だ。少し前からとどまっている。こっちの気も知らないで、自由気ままにやっているよ。巻き込まれないうちに帰ったほうがいいだろうな」

「それはそれは。ええ、そういたしましょう。だいぶ……ひどいと噂ですからな」

 ゴードンは無言でうなずく。

 彼の言いたいことを正確に理解したのだろう。商人はさっさと去っていった。わずかな時間も惜しいというように。

 私室に戻り、ゴードンはひとり息を吐く。

 魔法使いが護衛を振り切っていなくなったとゴードンが報告を受けたのは、それからしばらくしてのことだった。

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