58、返答
仲間内で意見を統一し、ある程度協力することをスウマに伝えると、彼はどことなく安堵したような表情を見せた。ある程度というのは、目的の相手が見つからないままいつまでも彼らに協力し続けることはできないし、無茶な要求をされても困る。そういったもろもろを考えた結果だった。
ただし、スウマは騎士団を襲っている魔物を見つけだすことに自信があるらしい。なんらかの考え、作戦があるのだろう。
ほかの人間たち、スウマに雇われた冒険者も、魔物であるこちらを信用しているわけではないだろうが、今になって反対を始めるということはなかった。
それから、協力するにあたって報酬を用意してくれると言われた。
「といわれても食べ物とか用意してくれても困るよね。彼らの国のお金だって今の僕たちじゃ使えないし」
「じゃあ凄まじい威力の武器とか用意してもらったらいいんじゃないかしら」
「いや、無理でしょ。そんなのが用意できるなら自分で使うだろうし、いつ人間に牙をむくか分からない魔物にそんなの渡さないと思うよ」
「うにゃーっ、おのれ人間ー」
不満そうにマタタビがにゃあにゃあ叫んでいたが。
結局とくに要求がないと伝えると、スウマは目に見えて困惑していた。逆の立場なら自分もそうなったと思うので、サソリは彼の態度をなにも不思議には思わなかった。
それとは反対に、冒険者たちは平然としていて、金を使う必要がないならそれでいいじゃないかとでも思っていそうだ。
仕方がないので、なにか欲しいものを思いついたらその時に言ってみると提案すると、どうにかスウマは納得したようだった。
「それではまた後日ということで。それまでにこちらの準備はしておきます。よろしくお願いしますね」
「ええ、ええ。こちらこそよろしくお願いしますー」
それから、人間たちと別れようというとき、カバが小さな声で話しかけてきた。
「あ、あの。怪我をしている冒険者さんに、その、癒しの光を浴びてもらったらいいと思うんです」
「それは……」
いいんじゃないかと返答しようとして、少しサソリは考えた。
それから頭を横に振る。
「やめておいたほうがいい、かな」
「え……」
「魔物用の治療技が、人間にどんな影響を与えるか分からないから。……残念だけど」
「…………はい」
優しいカーバンクルは小さくつぶやくと、悲しげにうずくまった。