57、それぞれの考え
相談するためにふり返ってきたユラユラ。
話に参加できずにドラゴンの尻尾でぺちぺちと草を叩いていたグラは、その尻尾を止めてあっさりと言った。
「ぶっちゃけ俺たち関係ないんじゃないか。向こうが必要としてるのは通訳としてのユラユラだけだろ?」
「えー。冷たいじゃないですかー。私たち仲間なのにぃ」
あくまでものんびりとした様子でユラユラがそう言うと、グラが身じろぎをした。
「い、いや。悪かったって。うん」
そんなグラの態度を、マタタビが呆れた様子で見ている。
彼女自身の意見はというと、
「突発的なイベントみたいで面白そうよね。魔物ばっかり倒してるだけだとつまんないし」
グラは魔物ばっかり倒していても本望らしくその言葉に不満そうだったが、なにも言ってこない。
サソリさんは? とマタタビに問われる。
「まあ、困ってる人に力を貸すのはやぶさかじゃないかな」
「そうですねー」
と、ユラユラがうなずく。
サソリは、興味なさそうに黙っているカイトを向いた。
「カイトくんの考えは?」
「無駄、だと思いますけど」
この声は淡々として力の強さも弱さも感じられなかったが、その言葉を聞いて少なからず感情を揺さぶられる。そんな言葉だった。
「無駄、って……」
「騎士団を襲う魔物の理由を推測してみてください。ひとつは、面白半分。遊びのためにふざけて襲撃を行っているということです。もうひとつはなんらかの目的、たとえば騎士団に対して怨恨などがある場合です。そして、そのどちらの場合だったとしても」
カイトがここで小さく息を吐いた。
「魔物は襲撃をやめないでしょう。遊び半分で人間を襲っているようなら僕たちの話なんて聞かない可能性が高い。別に確固とした目的があるのなら、なおのこと行動の中止はしないでしょう」
「なるほど……」
言われてみると、たしかにそんな気はする。
「あ、あの……」
おずおずと。
サソリの後ろからわずかに身体を出して、カバが言った。
「そ、それでも。その。スウマさんは原因を知りたがっているわけですし、それを調べることができたら喜ぶんじゃないでしょうか、なんて……」
自分の意見に自信が持てなかったのか、カバがまた後ろに引っ込んでいく。
「頼まれてるのは会話をして原因を聞きだすことの協力だけなんだから、あとのことは向こうで勝手にすればいいってことかな」
サソリがそう言うと、否定したそうに、え、いえ……、とかカバがつぶやいていたが。
カイトが軽く首を振る。
「まあ、いいんじゃないですか。僕はただ無駄になるんじゃないかと思っただけで、別に協力するのを否定しているわけじゃありませんよ」
そっけなくカイトはそう言った。