56、理由
協力してほしい、というスウマの言葉にサソリたちは驚く。そしてそれは他の人間たちも同じようだった。
雇われている手前なのか掴みかかったりはしていないが、若い男がスウマに詰め寄っている。
「協力ってどういうことだよ。なんで魔物と!?」
「彼らが僕らと会話できるからです」
「だからって」
「彼らが協力してくれれば、騎士団を襲撃している魔物と話すことができるかもしれません。こちらの幽霊のかたは、僕らと話せない魔物とも意思疎通ができているようですから。そうすれば動機を知ることができます」
倒すべき敵と話し合いをしようとしている。
サソリがそのことに唖然としていると、冷静に違うことを考えていたらしいユラユラが告げた。
「魔物相手でも話せる場合と話せない場合があるのでー。お役に立てるか分かりませんよー」
「それは……どういう差があるのでしょう」
「んー。説明しづらいんですけどー」
困ったようにユラユラは首を傾げる。
そんな彼女に、若い男のほうが言った。
「騎士団を襲っているっていう魔物と話せるかどうか、見た目から判断はできないのか?」
「会ってみないと分かりませんー」
こちらの質問にはきっぱりとユラユラが答えた。
ユラユラが相手の魔物と話せるかどうかというのはつまり、相手が参加者で中身が人間かどうかということになる。成長点を使った肉体の変化が極端なら参加者だと思えるが、それでも魔物の突然変異という可能性は消えない。
スウマがまっすぐな視線でユラユラを見つめる。
「もし話せなかったとしても構いません。可能性があるのなら、確かめてみたいのです。どうかご協力いただけませんか」
ユラユラはどう返答するつもりなのだろう、とサソリが彼女を見上げていると、
「ちょっと仲間と相談してみますねー」
と、振り返ってきた。