53、理由
のんびりとした口調で端的に説明を受けた年若い人間の男は、納得がいかなかったようで渋い表情をした。
「つまり、お前たちは魔物を倒すために行動をしてるだけだっていうのか」
「そーですよー」
ユラユラが肯定するものの、けれども男はその答えを受け入れられないようだった。ユラユラの態度が逆に信ぴょう性を失わせているという可能性も考えられる。
「お前たちは……魔物だろう? 魔物が魔物を倒すってのは、同士討ちにはならないのか」
「別に仲間でもなんでもありませんからー」
その言葉に、男は視線を下へ向けて、サソリたちを見た。
「……まあ、いいさ。じゃあなんのために他の魔物を倒そうとしてるんだ」
「なんのためって言われるとー」
そこで、くるりと振り返ってユラユラがサソリたちを見る。
グラは強くかっこよくなるためだと叫び、マタタビは楽しいからと答えていた。
仲間の意見はまとまらなかったが、ユラユラはひとつうなずいて人間へ向き直った。
「なんとなくですねー」
「な、なんとなく?」
「人間だって、どうして生きているのかとか訊かれたら困るでしょうー?」
「本能みたいなものなのか……?」
そういうものとはまったく次元の違う話の気はしたが。だからといって否定しても、なにが変わるわけでもない。
サソリがそんなことを考えていると、ユラユラが質問を返した。
「人間さんたちのほうは、ここになにをしにきたんですかー?」
それに答えたのは少年だった。
年若い男よりも、さらに……幼い。少年が前に出てきたことに、男がぎょっとした。
「それについては、僕からお答えします」