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52、言葉

 ユラユラの間延びした言葉通り、そこにはたしかに人間がいた。

 戦うための装備に身を包んだ人間たちが数人。そのうち二人は怪我を負っているようで、地面に座り込んでいる。

 無事な人間がこちらに気づくと、剣を構え、にらみつけてくる。サソリは慌てて後ろに下がった。

「待って待って、戦う気はないから」

「善良なドラゴンだからな。うん」

「善……? あんたが?」

「あんまり人間さんとは戦いたくありせんねー」

「普通は魔物と人間なんだから、戦うものなんじゃないですか?」

 呆れた様子で最後にそう言ったカイトは後ろに下がらなかったので、自然と盾を持った彼が前に出る構図になった。カバはなにも言わずに、サソリよりもさらに後ろへ下がって尻尾の後ろに隠れている。

 人間の若い男は剣先をこちらへと向けたまま、じりじりと後ろに下がって言った。

「戦う気がないだと……? 魔物がなにを考えてるってんだ……?」

「え」

 相手の言葉に、思わずサソリはきょとんとする。

 それから叫んだ。

「言葉が通じてる! ええと、このままこっちは後ろに下がるからさ。そしたら戦わずにすむんじゃないかな」

「…………」

 提案してみたものの、相手からの返事はない。というよりも反応がなかった。

 残念ながら気づかざるを得なかった。

「通じて、ない。じゃあ、なんで……?」

 それから、仲間がそれぞれ人間たちへ向かって話しかける。

 そして分かったことは、

「こっちにはー、争う気はありませんよー。優しい魔物なのでー」

「どうみても邪悪な姿をした奴がなにを言う」

 ユラユラの言葉は相手に伝わっているということだった。

 サソリはつぶやいた。

「人間の幽霊だからとか、そういう理由……?」

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