51、ふたたび
森の奥に生息しているという大猿を倒せば、たくさん成長点が手に入るのだという。
そんな話を信じて、サソリたちは森を進んでいた。
その途中、どう成長するかについての話をする。
「毒はちょっとためらわれるんだよね」
「なに、正々堂々ってこと?」
マタタビがくるりと振り返って後ろ歩きをしながら言ってくる。
サソリはつやのある鋏を左右に振って否定した。
「そういうことじゃなくて、ほら、敵が強い魔物とかになったりするとさ。毒とかに耐性を持っててまったく効果なし、とかありそうじゃないか」
「そーいうもんかしら……」
マタタビは納得していなかったようだが。
グラが明るく声をあげて言った。
「確かにあるよなそういうの。ゲームとかでさ、ほとんど状態異常効かなくて、じゃあこの魔法はなんのためにあるんだよっていう。逆に向こうの状態異常技はばんばんかけられたりな」
愚痴のような内容を楽しそうに言うグラ。
ユラユラが宙に浮いて移動したまま、そーですねー、と自然な様子でうなずいている。カバとカイトはよく分からなそうだった。
「ユラユラさんもそういうゲームとかするの?」
「ええ、ええ。昔は兄弟とよく遊びましたしー、今は甥っ子とかともゲームしたりしますよぉ」
「なるほど……」
サソリがユラユラの言葉にうなずいていると、カイトが呆れたように言ってきた。
「サソリさんが考えるべきは、自分をどう強化するかじゃなくて立ち回りだと思いますけど」
「というと?」
訊ねると、カイトはあっさり言ってきた。
「止められそうにない重量級の魔物はあっちのドラゴンに任せればよかったんですよ」
「う」
「無理やり相手に張り付いているから、こっちは流れ弾を気にして魔法で攻撃することもできませんでしたし」
「うう」
指摘の言葉にダメージを受けてサソリはうめく。あの状況では位置的にグラと魔物を交代するのは難しかった気もしたが。
それでも今後に活かせそうな建設的な意見をサソリが述べようとした時、ユラユラがその場に止まった。
「どうしたの?」
「いやー、それがー」
特に思うところのないような口調で、ユラユラが続ける。
「人間さんがいますねー」
マタタビが顔をしかめる。
また? と思っていることは明らかだった。