43、グラの相談
ひとりを除いて全員が起き出してきた。カイトなどはすでに目が覚めていたものの、部屋から出ずに置いてあった本を読んでいたらしい。
サソリも自分の部屋に観光ガイドやそのほかにも数冊の本があったことを覚えている。きちんと自分が読める文字だった。
そして最後まで起きてこなかったのはグラだった。ドラゴンを選択した青年だ。
持ち前の図太さを発揮してぐっすりと眠り続けているのかと思ったが、そういうことではなかったらしい。夜遅くまで悩んでいたのだとか。
「よく分からないけど、相談に乗ろっか? それとも、気晴らしに世間話でもする? 他の人に迷惑をかけてはいけませんって、一夜にして立て札が立てられたらしいんだけど」
マタタビが食堂に行きたくないというので、サソリは食堂で持ち運べるものを注文して持ち帰り寮のラウンジで食べた。ユラユラと、そして人見知りするようなので来たがらないかと思ったカバが一緒に行った。
グラはまだ起きてこなかったので適当に選んで食べ物を持ってきたのだが、彼は文句も言わずに食べていた。
グラは思い詰めたような顔で言った。
「相談に乗ってくれ」
「うん……それで?」
促すと、グラは視線を女性陣に向けた。
「昨日、俺はひとりで魔物を倒しに行った。マタタビもそうだ」
「あ、うん。ありがと」
自分にも成長点が入ったので礼を言っておく。
「いや……。マタタビのやつは次々と敵を倒してたらしい。だがそれに引き替え俺は……」
「俺は?」
「……敵に囲まれて袋叩きにあった。どうにか切り抜けたんだが」
「うわぁ」
袋叩きに合う光景が容易に想像できて、サソリはうめいた。
「なぜあいつはうまくいって、俺はなかなか敵を倒せないんだ。どうすれば……」
「マタタビさん、速度と攻撃に特化してるみたいだからねー……。あれなら囲まれるようなことにはならないんだろうけど」
「このままじゃ、俺はかっこいいドラゴンになれない!」
グラの悲痛な声が、他の人を気にしたのか比較的小さな音量で響いた。