40、戻る
あれこれと短くない時間を話してから、カボチャが言った。
「じゃあ、俺たちはそろそろ魔物倒しに行くから」
「あ、うん。頑張って」
返事をしてから、サソリはぎょっとした。
「え、これから!?」
木登りをしたりあれこれとアドバイスをもらったりして、すでに日が暮れ始めている。まさか冗談を言っているのかと思ったが、愉快なカボチャの顔にはそういった様子は見られなかった。
「うちのメンバーは夜のほうが得意なんだよ。俺も夜目が効くしな」
「あ、ああ……そういう場合もあるんだ」
「おう、それじゃあな」
「うん。いろいろありがとう。また今度」
「街で会っても気づかないだろうけどな」
笑いながら言うカボチャ。
サソリが意味を考えている間に、カボチャはぴょんぴょん飛び跳ねながら木々の向こうへと去っていく。
そして気づいた。
「ほんとだ」
街に入れば人間の姿に戻るが、自分も相手もお互いの人間の姿を知らない。たとえ道ですれ違おうと、近くで食事をとっていてもまるで気づかないのだ。
声で気づく、という可能性ならわずかにあるかもしれないが。
「ところどころ不便だよね、街のシステムって」
「そんなものなんじゃないですか」
どこか投げやりにカイトが返事をした。
なんとはなしに鋏を振りながら言う。
「とりあえず街に戻ろうと思うんだけど、カイトくんはどうする?」
「僕も戻ります」
「そっか」
くるりとカボチャの去っていった方向に背を向けて、ふたりで歩き出す。
「そういえば、装備をなににするか決まった?」
「盾を作ることにします」
「……武器作るって言ってなかった?」