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31、思っていたのと違う

 ぼんやりとした薄い膜が覆っている。

 その向こうに、街の形が見えていた。ようやくたどり着いた目的の場所。外壁に囲まれたその街の中に、住民の姿は見えない。

 意を決して最初に飛び込んだのはマタタビだった。二足歩行の猫の姿が、膜の向こうへと消えた。それは文字通り姿が消えたということだった。すぐそこにいるはずの猫は、影も形も見えない。

 おそらく内側にいる生物を見えなくする仕掛けでもしてあるのだろう。

 あのガイドたち、やたら長ったらしい名前の会社の関係している街なのだから、どんな仕掛けがあったとしても驚くには値しない。

 なにもないと分かっていても湧き出してくる恐れを無理やり押し込んで、サソリも街へと進んでいった。他の仲間たちもそれに続く。置いていかれると思ったのか、あわてて駆ける形でカバが横に並んだ。

 膜の内側に入って、街の姿を目にしたサソリは目を見開いた。

 一礼するガイドの向こうに、活気のある人々の姿。先ほどまではまったく聞こえなかった騒ぎ声があちらこちらから耳に届く。

 真横にいた少女が、一歩後ずさったのを感じる。

 サソリが自分の手を――人間の手を見下ろすのと同時、ガイドが声を発した。

「ようこそ、魔物の街へ」

「いや、魔物いないじゃん」

 街路を歩く人々に目を向けながら、サソリは言った。なんだか思っていた街の様子と違う。魔物が跋扈しているかと思っていたのだが。

 しかし、ガイドは笑いかけてくる表情を崩さない。

「魔物の街です」

「…………」

 まあ名前がなんだろうと構わないのだが。

 ガイドが話を続けてくる。

「私はエリクシル434と申します。はじめまして、ええと……サソリさん様。カバ様。マタタビ様。ユラユラ様。グラムラント様。カイト様」

「…………最初のガイドさんとは、違う人なの?」

「ええ、同じような顔の社員が何人もいると考えていただければ」

 その言葉に、勢ぞろいしたら嫌な光景だろうな、とサソリは思った。

 マタタビが訊ねる。

「あたしたちのことを知ってるみたいだけど、もしかしてくるまでずっと待ってたの?」

「いえ、新しい参加者がやってくると、私がここへ自動的に転送されるような仕組みがあるのです。ふふふ。それに、あなたがたの情報でしたらタグが」

「タグ?」

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