28、街へ
戻ってきた、と感じた。
どちらかといえば人間の肉体よりも、ガイドに転送され、魔物として再び森の中にい
る時のほうが。
倒されたのが魔物の身体だったからだろうか? あるいはあの白い空間よりも、この変哲もない森の木々のほうが現実味があるからかもしれない。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
とマタタビが宣言して、けれど進む方向が分からずにサソリはずっこけそうになった。人間の身体よりもだいぶ安定感はあるのだが。
ユラユラが空へと昇っていく。成仏しそうな雰囲気ではあったがもちろんそんなことはなかったし、今度は敵に消し飛ばされることもなかった。
雪山の方角を確認してもらってから、街を目指して進み始める。最初に進んだ時とは違って、サソリはやや楽な気持ちでいることができた。他の参加者たちを例外とすれば、恐らくこの辺りには自分たちが倒せないような敵はいないだろう、ということをすでに知っているからだ。
それに、最初のころより成長している。倒されて成長点が減ったらしいので確認したが、最後に見た時よりも成長点は増えていた。動く木の魔物を倒した際に得た成長点がそれだけ多かったのか、それとも参加者との戦いによるものかもしれない。
驚くことに成長点が三百点を越えていて、それまで百点貯めることすら難儀していたので驚いた。さっそく足の速さと身体の耐久性に割り振った。それがあればもう少し戦えたのではないか、という他の参加者との戦いでの考えが理由だ。足の速さを発揮してみせたら、カイトが珍しく表情をゆがめて嫌そうにしていた。
気合を入れたカバは、なにやら気合が入りすぎているように見えた。
「あのさ、カバちゃん」
「は、はい……なんでしょう」
「そんなに緊張して周囲を警戒しなくてもいいと思うよ」
「で、でも! ……その、また急に襲ってくるかもしれませんし」
「それはそうかもしれないけど」
カバの様子を見る。
身体に力が入って動きが固く、あちこちに視線を飛ばして敵がいないか確認している。臆病な小動物。野生の動物なら敵が出た瞬間に逃げ出すかもしれないが、それだけの生存本能は彼女にありそうもない。
そもそも警戒する様子が彼女に似合っていない。つまり、慣れていないということだ。
「疲れるでしょ、それ」
「が、頑張ります」
「無理だって。街までまだ遠いんだから、それじゃ持たないよ」
「うう……」