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25/163

25、マイナス

 野々松綾香は首をぶるりと震わせた。

 彼女が最初の魔物選択で選んだのは、角の生えた純白の馬だった。聖なる力で味方を癒したり、敵を攻撃することができる。

 見た目が馬の魔物なので、それなりには足が速い。が、そのことを理由に仲間を背中に乗せて運ぶのは相当に不快だった。これは半人半馬であるケンタウロスも同じことを言っていた。

 なので、どうしても必要な緊急時以外は背中に乗せることを断っている。こんなことを理由に魔物を選び直し、成長点が減るというのは馬鹿らしい。

 仲間のスライムである誠也は最近、目標値まで移動速度を上昇させたらしく、敵に攻撃を当てられるようになったので攻撃の威力を上げるのだと張り切っていた。彼の場合、敵に触れることで溶かすことで攻撃をする。その威力を上げようというのだ。

 正直な所、人間との小競り合いで疲れていたのでしばらく休みたかった仲間のほうが多い。だが、誠也の熱意に押し切られた形だ。

 しばらく、街の近辺にいる弱い魔物を倒して回っていた。それほど成長点の入りは良くないが、楽ではある。

 そんな時、誠也が言った。

「おい、トレントと戦ってる奴らがいるぞ」

「そりゃそれくらいいるでしょうけど……」

 戦いの音が響いていて、容易にそれは発見できた。

 木の魔物と戦っている相手は、緑の光をまとって見える。自分たちと同じ参加者だ。トレント程度に苦戦しているので、あまり強そうではない。

 それが理由だったのだろう。

「あいつらを倒しちまおーぜ」

「は? それはちょっと……」

「あんなやつらでもそこそこ魔物は倒してるだろ。だったらあいつらが戦い終わって疲れきったところを倒して、がっぽりと成長点をいただかないとな」

 よその人たちの邪魔をするようなことを、嬉々と話す誠也。

 止めたかったのだが、押し切られてしまった。

 しぶしぶと聖なる魔法を放って、敵の幽霊を浄化する。

 そこからほとんど一方的に敵を倒していったのだが。

「あ」

 サソリのような魔物に飛びかかっていった誠也が、急に動きを止めた。肝心の敵も彼の溶解液にやられてどろどろに溶けているのだが、しかし。

 異変を感じた仲間が声をかけてくる。

「回復しないとまずいんじゃない!?」

「……もう手遅れみたいよ。まだ復活の魔法までは使えないし」

 どうやら誠也は、反撃を受けて相打ちになったらしい。攻撃能力だけでなく防御能力も鍛えておけばよかったのに。

 そして、倒した相手を見ていて思ったことがある。

「もしかしてなんだけど、この人たち初心者だったんじゃないかしら」

「初心者? って、もしかして街に行く前ってこと?」

「ええ」

「あーあー。やっぱり誠也に乗せられるんじゃなかったかなぁ。悪いことしちゃった」

 言いながらもその表情はそれほど悪びれているようには見えない。

 それより、そんな初心者に倒されたということは。

「誠也、だいぶ成長点が減ったんじゃないの」

「しばらく借金漬けかもねー」

 おそらく彼の成長点はマイナスに突入するに違いない。余計なことなどしなければよかったのに。

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