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161/163

161、再び封印の場所で2

 封印の上でネズミがチューと鳴く。

 二足歩行の猫、マタタビが近くにいるせいで今にも食べられてしまいそうな殺伐な光景にしか見えない。もちろんマタタビは本物の猫ではないので、ネズミなんて食べたくないだろうが。

 ヒカゲが言葉を続けた。

「それともうひとつ謝らなければな。陽動をお願いしたせいで迷惑をかけてしまった」

「いや、いいよ」

 これは人間に倒されて成長点が減らされた、ということについてだろう。参加者は倒されて復活する際に成長点が減る。もしも持っている成長点よりも減らされる成長点のほうが多い場合は、所持成長点はマイナスで表示された。

「他の参加者を倒してこっちも成長点が入ったし、それに知ってのとおりユラユラさんは生き残ったからね。まあ、どこかのドラゴンさんは二度も戻ってついにマイナスに突入したけど」

 木々の密集したところをひたすらうろうろすることで、ユラユラは生き残ったらしい。ユラユラを攻撃できる人間の大半が魔法使いで身体能力が高くなったことが幸いし、途中であきらめてもどっていったらしい。大男にばっさり切られてほぼほぼ致命傷だったサソリにとどめを刺したのは、その戻ってきた魔法使いたちだったのだろうが。

 ヒカゲがドラゴンに顔を向ける。

「昨日はすごい活躍だったな。空から飛んできた時は、誰もがそちらに気を取られていた」

「お、おお。そうか」

 グラが嬉しそうに応じる。

 これでもましなほうで、昨日は神殿に戻されたあとかっこいい活躍ができたとものすごく興奮していた。サソリやカバがそれをほめたたえたためでもある。とくにピンチだったサソリにとっては、飛び降りてきたグラは救世主のようにさえ見えた。

 それからしばらく、サソリとヒカゲたちは会話をつづけた。

「では、そろそろ失礼させてもらう」

「うん」

「このたびは本当に助かった。機会があれば、また会おう」

 言うと、ヒカゲがネズミのチュー太郎を抱え上げる。

 それからこちらを向いたまま、数歩後ろに下がった。

「では」

 言葉とともに木の葉が舞い上がり彼女の姿を覆い隠した。気づいた時には少女の姿は消え去っている。

 サソリは言った。

「うわ。唐突にすごい忍者っぽい」

 実は近くにいたりするんじゃ、とか言ってマタタビが周囲をきょろきょろとする。近くにいたとしても、カバより隠密性能が高そうなので彼女には見つけることはできないだろう。

「それじゃ、僕たちも帰ろっか」

 するとすぐさまグラが不満を表した。

「もうちょっと魔物を倒していこうぜ。成長点を手に入れたいしな」

「……もうマイナスのままでいいんじゃない?」

 もう二週間がたって現代社会に帰還するわけだし。

 しかしグラは不満らしい。とりあえずサソリはなだめにかかる。

「まあまあ、ほら、つい昨日平和を守るために激闘を繰り広げたわけだし。そんなに戦ってばかりいたら身体が持たないよ」

「む。まあ世界の平和を守ったわけだしな。英雄のひとときの休息ってわけか」

 うむうむと感じ入るようにグラがうなずく。

 カイトが言った。

「別に世界を脅かすほどとは言ってなかったと思いますけど。せいぜい、森の平和と近くの人間の街ぐらいじゃないですか」

「まあでも、すごいことだよね」

 サソリは苦笑した。自分たちはちょっと手助けをしただけだが、それでも胸を張れる出来事だと思う。

 そうですね、と小さくカイトが返した。

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