16、合流と過激な方法
二足歩行の猫、マタタビがこつんと自らの後頭部を拳で叩いた。
「いやー、悪かったわね! こんな姿になったし、魔物を倒したい気持ちが逸っちゃって。ごめんごめん」
「気持ちは分かるけど……とにかく帰ってきてほっとしてる」
そう言ってサソリは、帰ってきた三人を眺めた。
マタタビが照れたように笑う。
「ユラさんに言われて戻ろうとはしたんだけど、サソリさんたちがどこにいるのか分からなくなっちゃって。カバちゃんの光が見えなかったら、大声で探して回ることになってたかも」
「ああ、そっか。なるほど……」
視線を向けられて、可愛らしい小動物がさらに縮こまっている。先ほど彼女が放った癒しの光は案外目立っていたらしい。
敵から見つかりやすい、ということにもつながるため、考えものかもしれない。
淡い青の毛色をしたそのカーバンクルに、元気をなくしたうつむきがちのドラゴンが近寄っていく。
カバはやや後ずさったが、それほど極端な反応を示していなかった。そういえば先ほども、ドラゴンはあまり怖くないようなことを言っていた。
ドラゴンの口が開き、ぎざぎざの歯が見える。
「悪いんだけど回復してくれ……」
「は……はい」
言葉に遅れて、ゆっくりと穏やかな光が力を落とした竜を包み込んでいく。そして、見るからに元気を取り戻していくのが分かった。
ドラゴン、グラが叫ぶ。
「おお、うぉおおおお! 回復ってすごいな!」
それから、熱烈な感謝の意を示している。叫ばれると怖かったのか、肝心のカバは後退していたが。
その様子を見ながら、事情を知っていそうな猫にサソリは訊ねた。
「グラさんが元気なかったのって、そんなに強い敵と戦ったの? それともたくさん敵が出てきたとか」
「ああ、違うわよ」
マタタビは苦笑した。彼女は自らの顔の毛を撫でながら言う。
「あれはユラさんが」
「え?」
思いがけない名前を言われて、サソリは聞き返す。幽霊のユラユラは、笑顔のままふよふよと浮きながら回復したドラゴンを見ている。
「グラちゃんがもっと魔物を倒したいって、帰ろうとせずにいたら、怒っちゃって。魔法だと思うんだけど、なんか水の玉をすごい勢いでグラちゃんにぶつけたのよ。それで」
いったん言葉を区切ると、マタタビはにっこり笑いながらやや首を傾げた。
あるいはそれは、ユラユラの真似なのかもしれない。恐ろしい幽霊よりも圧倒的に可愛らしい仕草だったが。
「これで回復しないといけませんから、みんなのところに戻るしかありませんよね? って」
「うわぁ。びっくりするほど過激だ……」
「戻ろうとしなかったらもっとぶつけてたんじゃないかしら」
「うわぁ……」
ほかに言いようがなかった。過激な行動をした張本人は、平和そうに浮かんでいるのだが。
鋏をだらりと垂らしながら、サソリは言った。
「カイト君。怒らせないように気を付けたほうがよさそうだよ」
「なんで僕に言うんですか」
「いやなんとなく」