158、貫かれる
思わずサソリはその光景を見ていた。
急降下してきたドラゴンが、最後に見た時よりも翼の成長したグラが、大男に一撃を与えながら互いに弾かれるように距離を取る。
本当ならばこのサソリの硬直は致命的だったのだろうが、他の人間もグラに意識がいっていた。
はっと我に返り、周囲の人間が動き出す前に位置を変える。ひきつった表情を相手が浮かべるのを見ながら尻尾を叩き込んだ。
サソリの行動に対処しようと数人が動き始めたところで、その声は響いた。
「来たぞ!」
冷静に戦闘に加わっていなかった少数のグループからの、注意をうながす声。それが聞こえてそちらを見れば、サソリにもその姿が視認できた。
ヒカゲが、そしてネズミのチュー太郎が地面を蹴って封印の場所まで駆けている。グラが降りてきたこの瞬間を好機ととらえたのだろう。
冷静に警戒していた相手が残っていたというのは悔しいが、それでも多くの人数を封印の近くから引き剥がすことができた。
(もう少しだ……!)
サソリは叫んだ。
「炎を吐いて! 少しでも足止めをっ」
「おお!?」
驚きながらも案外素直にグラが炎を周囲にまき散らした。火球ではなく放射する炎。
大男が怒りの形相で剣を振るった。
「てめえら……! あいつとグルか!」
サソリの発言に、ようやく彼はこちらの襲撃理由を察したらしい。だが今さら気づいても意味はない。
そしてサソリの視界の中で、ヒカゲが矢と槍で貫かれるのが見えた。