155、サソリが
もしかして小鳥よりも遅いんじゃなかろうか。
苛立ち……というよりも焦りを抱えながら、必死に翼を振りつつグラはそんなことを思っていた。
まあ、小鳥が遅いわけがない。その辺の地面や電線でちょこちょこ歩き回っているのを見るとのんびりした生物にしか思えないが、飛ぶ速度が遅いわけがない。だから小鳥に飛行速度で負けたからといって恥ではないのだ。
いや、どうだろう。
小鳥に負けるドラゴン。やっぱり恥か?
(ぐぬぬぬぬ……)
歯噛みしながら、それでもやめる気にならずひたすら飛行し続けることができているのは、森の中をのそのそ歩くよりは早いということが感覚的に理解できていたからだ。
だがしかし、問題もあった。
だいたいの方向は分かっていたので飛んできたのがだが、生い茂る木々のせいで下になにがあるのかが見づらい。
仲間とともに辿り着いた虹色の光が降り注ぐ場所はすでに通り過ぎ、そろそろ合流できてもいいころだ。相手が見つかりさえすれば、だが。
(どこだ……っ!?)
もう通り過ぎているのではないかと疑わしく思えてきた時、響く物音が聞こえた。それと声。森の一角が開けている。
その上空へ近づくと、何人もの人間が見えた。人間はこちらを見ていない。振りかぶられる剣。
サソリが、いた。人間たちと戦っている。この場所が封印の地なのだろうか。他の仲間たちも、そしてヒカゲの姿も見えなかった。
サソリが苦戦しているのを確認するとグラは人間へ向けて一気に降下した。