150、陣営
普通なら口をふさぐのだが、この場合は不便だな。
とヒカゲは言った。
魔物の参加者は口で話しているというより、念話みたいな感じで意思を疎通しているようなので口をふさいでも意味がない。人間の参加者はどうなのだろうか、とサソリは思った。どうもヒカゲは普通に口を開閉して言葉を発しているように見えるが。
なんにしても、驚いた声を出してしまったサソリは恥ずかしくなりながら声を押さえた。
それから、ヒカゲに言われて木の上に登る。カバが木登りに自信がなさそうにしていたが、ヒカゲは怖がるその小動物を抱えて軽々と枝の上まで到達してしまった。
木々の枝の合間から、うまい具合に遠い向こう側が見える。
多くの人間たちが争っていた。カバが言っていた大きな音というのは、この争いのことだったのだろう。
人間だけではない、魔物も争いに加わっている。サソリは自分のような魔物の参加者かと思ったが、それにしては色がおかしい。緑ではなく紫色のオーラをまとっている。あれは魔物側の色ではない。
一緒に枝の上にいるネズミを見た。ヒカゲのペットで、このネズミも紫のオーラをまとっている。
ヒカゲは言った。
「あれは、魔物を従える技能持ちとそれ以外が戦っているのだ」




