145、おかげ
「いやいや、なに言ってんのよ」
と言ったのは、三人も敵を倒し軽快な動きで戻ってきたマタタビだった。とはいえ弓で射られたらしく何ヶ所も負傷している。
慌ててカバが治癒の光を放った。
サソリは気まずい口調で言う。
「グラがやられちゃったし……街で合流したほうがいいんじゃないかと」
「いまから戻ったって新たに外出なんてする時間ないでしょ。このまま進んだほうがましじゃない」
「まあそういう見方もあるよね。戦力が減っちゃったからなぁ」
言いながら、周囲を見回す。
敵として戦った六人の人間は、もう誰も立っていない。
「それにしても、僕らも強くなったね。そろそろ二週間だけど、他の参加者と戦ってこうやって勝てるなんて」
まあ犠牲者は出たのだが。
マタタビが、自慢げに鼻から息を吐き出し胸を張った。
「あたしのおかげね!」
というのもさっさと後衛に突撃して相手をかく乱したことで、敵の連携を断ったからだ。そして二人分の攻撃を受けても健闘したグラの活躍のおかげでもあった。
マタタビが仲間を見回しながら言う。
「だいたい、これから帰ったらあの……刀を持った子のクエストが終わっちゃいそうじゃない。そんなのもったいないわよ」
それから、彼女はカバに視線を移した。