135、立ち去る
クエストを手伝ってほしい、とヒカゲに頼まれて、サソリたちは困惑した。
「こ、困ってる人がいるなら、そのう。助けてあげるべき……だとは、思いますけど……」
カバでさえその言葉にはためらいが混じっていた。
「実はヒカゲが邪悪を復活させようとしてる側って可能性もあるよな」
「そういう言い方はどうかと思いますー」
「ごめんなさい」
グラが即座に謝る。
ヒカゲが気を悪くした様子はなかった。
「疑われている、ということか」
「ごめん。失礼なことを言って申し訳ないんだけど……」
サソリは事情を説明した。
「これまで街にたどり着いたとたんにおんなじ参加者から襲撃を受けたり、仲良くなったと思った現地の人からだまし討ちされそうになったり、いろいろあったから……」
「それならば、仕方ないか……」
残念そうに言うと、ヒカゲは立ち上がった。
侍のような印象のその少女は、真剣な目でこちらを見ている。
「あまり長居しても敵が追い付いてくるだけだろう。これで失礼させてもらう。傷を治してくれた恩は忘れん。ではさらばだ」
そしてきっぱりとした態度で、ネズミとともに立ち去っていった。思わず引きとめるような言葉が出かかったが、結局なにも言えないまま少女の姿は見えなくなった。
気まずい空気だけが残った。