134、ヒカゲの願い
失敗を掘り返されて気まずい表情をするサソリに、ヒカゲが困惑しながらも気を取り直していってきた。
「私は今、特別な使命を……クエストを受けている」
「特別」
繰り返すサソリに、ヒカゲがうなずく。
「ああ、私には運よく受けるための適性があった。そのクエストというのが、とある場所に封じられた邪悪なるものの封印を強化することだ。このままでは近々封印が解け、邪悪なるものがよみがえることになる」
「邪悪……いや、待って。封印を強化するのはいいことだと思うけど、なんで同じ参加者から追われてたの?」
「うむ」
ヒカゲは重々しくうなずいた。
「別に私とあやつらの間に怨恨があるわけでもござら……こほん。あるわけではない。あやつらは私のクエストが失敗すれば、自分たちの利益が生れると信じているのだ」
そこでヒカゲは、ここにはいない人間の参加者たちへさげすんだような表情を見せた。
「つまり私が失敗して、邪悪なるものがよみがえる。それを……まあ、そちらの魔物側には分からないが、人間側には野生の魔物を従える技能があるからな。邪悪なるものを従えて、強大な力を得ようとしているのだ」
わずかに歯切れが悪そうにヒカゲが言った。
当然の疑問をサソリは口にする。
「その技能って、こっちには」
「もちろん効かない」
言葉の途中でヒカゲが断言した。
ほっと安堵の息を吐く中、ヒカゲがじっとこちらを見つめてくる。
「どうか、私を助けてくれないだろうか」
「助け?」
「復活した邪悪なる存在をあやつらがどうこうできるとは、正直なところ思えない。この森は大変な事態に見舞われるだろう。そうならないために、封印の地へたどり着くための手助けを頼みたい。場所はここから北西に進んだところだが、まだ襲撃はされるだろう」
「むう……」
話を聞いて、サソリはうなった。
仲間たちを見ると、彼らも困惑しているようだった。