133、いない魔法使い
執務室の中で、ゴードンは書類に必要事項を書き終え、一息ついていた。
この辺境を取り巻く問題は正直なところ山積みではあるのだが、ゴードンの手で進められるようなことは今はなにもなかった。
とはいえ、少しすれば面会の予定がいくつもあって、それを考えるとうんざりしてしまうのだが。
それを忘れようとただただ気を休めていると、秘書が部屋へとやってきた。気持ちを切り替え、彼から報告を聞いていく。
その中で、思い出したようにゴードンは言った。
「それと……例の場所は見つかったのか」
「兵が探索しておりますが、いまだに封印の地は見つかっておりません」
「そう、か。我らが先祖がかつて邪悪を閉じこめた、封印の地。いつ封印とやらが消えてしまうのかしらんが、せめて詳細に場所を書いておいてほしかったものだ」
「当時は分かりやすかったのかもしれませんが……」
「そうだな。まあ、見つかったとしても意味のないことだしな」
そう言って、ゴードンはかぶりを振った。
「弱った封印を強化できる魔法使いはいまだに行方不明、か。まったく、面倒な……」
拳を机に押しつける。
やってられるか。そう彼は胸中でつぶやいた。