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129、刀と少女
でっぷりと太ったネズミ。
それだけならばただ、新しい魔物が現れたのだと思っただけだっただろう。マタタビあたりが真っ先に襲いかかっていたはずだ。
だが今、全員が動きを止めていた。
問題は、そのネズミが紫に光っていたことだ。紫色のオーラをまとっていたことだ。
サソリは唖然としながらも言った。
「このネズミは人間だ……」
「まじかよ!」
叫んだのはグラ。
驚きに身を固くしていたカバが、あわててサソリの後ろに隠れる。それから言った。
「ま、まだほかにも来ます」
その言葉にネズミよりも向こうを警戒する。
ネズミからも気を離すべきではないのだろうが、ネズミは見るからに弱そうだった。見た目をそのまま信じてはいけないと思っても、少なからず気が緩む。
それよりも、もう片方。
ネズミの向こうから、紫の光をまとった人影がやってくるのが見えた。少女だ。その足取りは遅い。
見るからにいくつも傷を負っているのが分かった。その手には刀。
「チュー太郎……」
痛々しい声で、少女はそう言った。