126、流れ弾
カイトと会話を試みるマタタビだったが、カイト自身は嫌がっている。
「別に話す必要がないでしょう」
「サソリさんとは話してるじゃない。ほら、あたしとも話しましょ」
「話す内容があるから話しているだけです」
「ぐぬぬ」
ぐぬぬって、と思いながらサソリはあきれた。
「無理やりコミュニケーションとってもしかたないでしょ。いきなりどうしたのさ」
サソリがそう言うと、マタタビは険しくしていた眼差しをわずかにゆるめた。
「いやほら、この子ってサソリさんとしか話してないじゃない。なんかむかつくなーと」
「…………そんなこと話してたの?」
あきれた眼差しをそのままに少し離れた場所にいるカバのほうへ向ける。隣でマタタビが首を横に振った。
「カバちゃんは、サソリさんとカイトくんがふたりで話しててさびしそうにしてただけだけど」
「…………!」
カバがびっくりしたような表情で、なにか反論したいのかぱくぱくと口を開けていた。ただそれは声にはならず、それから恥ずかしそうにうつむいた。
そんな事態を引き起こしたにもかかわらず、自由な様子でマタタビがひょいっと、机に置かれた紙をのぞき込む。
「なんだ……次の行き先を考えてるんじゃないんだ」
「え、うん。マタタビさんはどこか行きたい場所とかある?」
「幽霊のいるところ!」
「見つからなかったじゃん……。ユラユラさんがきたら、どこか行きたい場所がないか聞いてみよっか」