121、最後まで貯蓄
部屋の本が勝手に変わる機能はカイトのほかにもカバが知っていたらしい。
数冊をちらっと読んだだけのサソリには分からなかった機能だ。
ほかの仲間も本が変わることには気づいていなかったようで、そんなものかとサソリは納得した。もともと本を購入した人ばかり集められているはずなので、もう一人二人ぐらいは気づいていても良かったような気はするが。
霊体の魔物の情報をサソリが調べてきたので、あまり信ぴょう性のある情報でもなかったけれどその場所へ向かった。
結局霊体の魔物は見つからなかったが、そんな魔物を求めていたはずのマタタビは別の魔物を相手に大暴れして楽しそうだったので問題ないのだろう。
ユラユラさんを切るのがやっぱり一番楽な試し切りだよなぁ、などとサソリは思ったが当然のように口には出さなかった。
ユラユラが首を傾げる。
「どうかしましたかー?」
「いや……悩んでいた成長点の使い道はどうしたのかなと思ってさ」
「あー」
ごまかしたサソリの言葉に、ユラユラは楽しそうにうなずいた。
「必要になってから決めることにしますー」
「ああ、まあ……。急ぐことじゃないからね」
決めるまでの戦闘で成長した力が使えないのはもったいないような気もするが、差し迫って必要なわけではない。そういう選択もありなのだろう。
「このままずっと使わないままになったりしてー」
「いや、それはちょっと」
サソリは思わず突っ込んだ。