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116、ガラスのほう
参加者にとっての集会所のような場所で、サソリの顔なじみのひとりが建物に入ってくるなりどべーっとテーブルにつっぷした。まあ顔なじみと言っても数日前に出会ったばかりだが。
「やられたー」
とか彼は投げやりに言っている。
「そんなに強い魔物がいたの?」
「いやいや、人間ー」
「闘技場に出場してたとか?」
あまりなじみのない場所だが、今度少しぐらい観戦しに行ってこようか、などと考える。仲間も闘技場にあまり興味を持っていないようで、情報をそれほど持っていなかった。
だが、知り合いの男は机に顔をくっつけたまま首を横に振った。
「そうじゃなくて、外のー」
「外の?」
ということは、まさか、他の参加者に攻撃されたということだろうか。
サソリは自分たちが街にたどり着く前に受けた襲撃を思い出して、顔をしかめた。
だが。
「ガラスのほうー」
「……ガラス?」
「あれ? ご存じなーい?」
彼は戸惑うサソリの反応に、不思議そうに顔を上げた。