110、二本
「いや、だって」
と言ったのは、カバが後ろに隠れているカイトだった。
呆れたような表情で、困ったような視線でサソリを見る。
「ぶっちゃけ気持ち悪いですよ」
「……いつも興味ない興味ないみたいな態度ばっかりのカイトくんにそう言われると、だいぶ落ち込むんだけど。カバちゃんに怖がられるよりショックが大きい気がする」
「そんなこと言われても」
「というか、悪魔の後ろに隠れられるほど気持ち悪いってどれだけ……」
嘆くサソリの尻尾はついに二本になっていた。後ろの身体の部分が途中から、二又になっている形だ。
外側からどう見えるのかは分からないが、こうも不評だとなんとなく悲しい気はする。
「き、気持ち悪いというか、怖いです……」
カバがそう訂正してきたが、なにか意味があるのだろうか。気持ち悪いよりはましか。
サソリが考えていると、マタタビが聞いてきた。
「それで、二本になった感想はどうなの」
「うーん」
サソリはうなった。
それから魔物に遭遇したので、尻尾で攻撃してみる。
少しの時間差で、相手の胴体に、上下ふたつの穴が開く。
「すごいじゃない!」
と、マタタビは言ってくれたが。
「このあたりの魔物だと尻尾ふたつ必要な場面がないから、まだなんとも」
「な、なるほど……」