3話 21~30日目
21日目。
兄上が魔グロという魚を貰って帰って来た。
刺身で食べたが、実に美味だった。
母上は生で魚を食べることに躊躇して、結局食べなかったが、勿体ないと思う。
魔グロはかなり大きいので、当分は魔グロ祭りだ!
ひゃっほーい!
料理長に聞いたが、魔グロは一匹で白金貨10枚とか平気でするらしい。
これだけ美味ければ、それも納得だ。
明日のご飯も実に楽しみ、楽しみ~。
22日目。
地下都市に家より大きなパイプオルガンを作った。
重低音が素晴らしい。どんなに下手な楽曲でも、これで奏でれば素晴らしいものになるに違いない。
ゴーレムにオリジナル楽曲を渡して、弾いてもらった。案の定下手な楽曲でも素晴らしくなった。
でもその後に普通の楽曲を試したら、もっと素晴らしくなったので、そっちの方を奏でて貰うことにする。
23日目。
森に行ったら、町のガキンチョどもを森で見かけた。
この森は不思議なことに、魔物が全然いないから大丈夫だと思うが、大丈夫だろうか?
と思ったが、同い年ぐらいの俺が一人でも入って安全なのだ、平気だな。
あいつらはゴールデンスタッグのことを姉上から聞いて捕まえに行ったらしい。
森から帰って、森でガキンチョを見たことを姉上に言ったら、そう伝えられた。
姉上は虫研究家という事もあって、町の子供とも気が合う。
よく虫の話をしているらしい。
あれ? 姉上は町の子供と友達なのか?
ボッチの俺って一体……?
深く考えるのは止めた。
24日目。
兄上が家でゴロゴロしていた。
最近は社交パーティまみれで疲れたらしい。
兄上は今年で十六になる。結婚したら領主を継ぐらしいし、今は縁作りで大変だ。
兄上いわく、俺が羨ましいらしい。
まぁ、俺は何の使命もない次男だからな。
一応、領主を継ぐ兄上に子供が出来るまではスペアとして拘束されるが、それ以降は何をしてもいい。
それに拘束されている間は、合法的な居候だ。
といっても、長くても五年すれば兄上に子供が出来るだろう。
それまでに、仕事先を見つけなければ……と思ったが、オリハルコンを売った金があるから大丈夫だ。
あー、土魔法が得意で良かったー。一生安泰、遊んで暮らせる。素晴らしきかな、人生。
兄上は人生クソくらえって感じだが、強く生きてほしい。
果物をあげたら、涙を流していたし、限界が近いかもな。
頑張れ、兄上。
25日目。
今日は父上の友人という、冒険者がやって来た。
五年前にも来ていたらしいが、俺は覚えていない。
かつて父上が冒険者として家出していた時の仲間らしい。
丁度いいから、剣の稽古をして貰え、と言われてひどい目にあった。
マジでボロボロだ。凄い疲れた。
魔力を使えれば、一秒で勝てるんだけどな……。剣の稽古だし、仕方ないか。
冒険者はお土産として、メロンという果実をくれた。
家族で分けて食べたが、これまた美味かった。
この領地で栽培できないか? と聞いたら、出来ないこともないだろうが、初めての試みでする余裕はない、とのこと。
なら、俺が育てるか。
種をこっそりくすねたので、明日地下都市で栽培してみようと思う。
26日目。
森にいったら、1000年前に封印された魔王とやらに出くわした。
危なそうな奴だったので、簡易ゴーレムを作り出しフルボッコにしたら、泣いて土下座し始めた。
お前……仮にも王と名付いているものが……みじめだな。
魔王は封印される前は野望に満ち溢れていたらしいが、1000年間何もない空間に封印されて今は野望も何もないらしい。
久しぶりに地上に出られてはしゃいでいた所を、俺にフルボッコにされたらしい。
何か黒いオーラとかが出てたから、フルボッコにしたのだがやり過ぎたか。
魔王は、封印されている間に修行したから強くなったはずなのに……としょんぼりしていた。
ちなみに修行は野望の為でなく、暇だったからやっていたらしい。あわよくば封印を内側から破るつもりだったのだとか。
あまりにも惨めだったので、地下都市に案内して、そこに住んでもらう事に決めた。
魔王は俺の自慢の地下都市を見て、これより素晴らしい都市は見たことがないとはしゃいでいた。そうだろうそうだろう。
まぁ、はしゃぐおっさん魔王なんて見ても、俺は素晴らしいとは思わんがな。
27日目。
姉上がゴールデンスタッグの生態という本を出版した。
捕まえたゴールデンスタッグの観察日記と解剖結果が載っている。
サンプルを読ませてもらったが結構面白かった。
惜しむらくは7日でゴールデンスタッグが死んでしまったことだろうか。
もっと生きていたら、観察日記のボリュームも多くなったと思う。
28日目。
サーカス団がやって来た。
初めてサーカスを見たがそれは胸躍るものだった。
あんなバランス感覚をどうやって手に入れたのか気になるものだ。
玉に乗りながら、ナイフをジャグリングして、口から火を吐く。俺なら一生かかっても出来る気がしないね。
素晴らしく感銘を受けたので、チップを渡しておいた。
先行投資として、白金貨20枚だ。
これでサーカス団を盛り上げてくれ、といったら団長は感動していた。
これからも子供たちを笑顔にするために、頑張るらしい。
身を壊さない程度に頑張れよ、と言っておいた。
29日目。
魔王から友情の証として、魔石を貰った。
魔王が魔力を1日中詰め込んで完成させたものらしい。
闇の魔石で、これを使えば闇魔法が使える。
といっても、魔法陣で指向性を持たせないと意味ないのだが。
俺はお礼として、魔王っぽい伏魔殿を作った。
でも魔王は明るい方が好きらしく、俺の作った妖精城を拠点にしていた。
俺が伏魔殿を盛り上げるために、貰った魔石を土魔法でコピーしたものを大量に使っているのを見て、魔王が腰を抜かしていたのが間抜けなのを覚えている。
お前が魔王だったら三日で世界征服できるな、って言われた。
世界征服に興味はない。そんなことをしたら面倒だ。
俺はお気楽スローライフで暮らすんだ。
30日目。
父上が新しいものを買って来た。
彫像だ。サウロモネの新作らしい。
見ていると、相変わらず吸い込まれそうで不安になる。
金属を自由に生み出せるが、俺には作れそうにない。
母上がさすがに変な物を買い過ぎと父上を叱っていた。
そして、サウロモネの物は別館へと送られることになった。やったぜ。
これで夜にトイレに行けるぜ。
魔王「封印から解かれて喜んでいたら、フルボッコにされた……」
主人公「すまんな」