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27話 261~270日目

 261日目。

 母上が変な踊り? を踊っていた。

 謎のポーズで停止して、プルプルしてたので思わず吹き出しちゃったんだ。

 後から聞いたんだけど、ヨガの鷲のポーズってのをやってたらしい。腕を腕に絡ませて、足はもう片方の膝に乗せて、両膝を曲げるっていう。

 ツボに入って爆笑して笑い転げてたが、そのときには既に時遅し。当然母上に見つかって、アイアンクローをもろに喰らった。凄い痛かった。絶対頭ミッシミシいってたね、あれ。

 謎のダンス? ヨガとやらを、母上は健康のためにやり始めたって言ってたけど、絶対違うね。母上が健康のためにプルプルするわけがない。十中八九、美容の為だろう。母上は美容の為なら、何でもするからな。

 あれも一種の趣味なんだと思う。姉上に比べれば、すっごいマシだ。今、思ったんだが、美容の為って言ったら、母上は虫を食べるだろうか? 母上は虫耐性ゼロだが、はたして……。


 262日目。

 学院からパンフレットが来た。四国ガラティーン王立学院の奴だ。

 四国同盟の平和条約の証といえる、ガラティーン学院は四つの国が共同で運営している学院。学院に通う事は貴族の間で、金のかかる趣味、強い傭兵や冒険者を雇う、夫人や愛人を囲う、に続く一大ステータス。

 大抵の貴族、爵位が高い家の者となれば、大抵は通うのだが……面倒くさい。

 俺は家庭教師に習ってるから、わざわざ学院で習う必要はないし、何より四国ガラティーン学院なんだよなあ。

 あそこは四つの国から爵位の高い者が通うから、魔の巣窟になっていると兄上から聞いた。

 兄上はガラティーン学院じゃないが、貴族が通う学院に一年間通っていて、それだけでもいろいろ大変だったらしい。なのに、ガッチガチの貴族社会が四つも絡み合うなんて、聞いただけで震えくる。

 家庭教師がいて、今日ほど感謝したことはない。

 辺境伯の次男だから、入学OK! みたいな感じで来たが、俺は父上に丁重に断るようにお願いした。絶対絶対行かないからな。

 ガラティーン学院は大体10歳から15歳の間に通う学院。これから四年ぐらいは、パンフレットが来ると思うと……面倒の一言に尽きる。

  

 263日目。

 ロッグが次の虫を研究したいらしく、金をたかってきやがった。クラゲセミなるものを研究したいらしい。クラゲセミ? クラゲとセミが合体したのか? 想像がつかない。

 大変珍しい奴らしく、渡り蜂と違って見つけるのすら大変らしい。渡り蜂は渡り鳥の様に移動するから、研究が大変なだけで、見つけること自体はそれなりだったからな。

 渡り蜂の研究本はどうした? って聞いたら、普通だったと言われた。まぁ、売れないよりはいいが、滅茶苦茶売れたって感じでもなく、反応に困る。

 というか、姉上が一か月もしないで出したゴールデンスタッグとかの本に負けてるのはどうなんだ? あれは、大好評だったぞ。

 でも仕方ないか。研究ってのは大概こういうもんだ。いつもやばいのを生み出す竜人と違って、大半の研究は報われない。

 とりあえず渡り蜂の売り上げが出揃うまで、返事は保留ということにしておく。

 ロッグが帰ってから、姉上に渡り蜂の研究本ってどうだった? って聞きに行ったんだが、めっちゃダメ出しを食らっていた。

 一々変な用語回しをするなとか、まとめ方が雑だとか、研究結果への考察が浅いとか、解剖図のせろとか、調べている内容があやふやなところがあるとか。

 姉上の学者気質な一面が良く見えた。ただの虫を食べてる変人と思ってたが、そうじゃなかったんだね姉上。

 私が関わってれば、もっと質のいいものが……ってぶつくさいってたので、恋慕は時に足を引っ張るよなって感じだ。ロッグが恥とか関係なく姉上を頼ってれば、どうなってたんだろう。

 とにかく、白金貨50枚分は売れてくれ。徴収するからな。


 264日目。

 兄上が激辛パスタなるものを昼に食べていた。

 なんでも、面会に来た人が香辛料の詰め合わせを献上したらしい。どこかで兄上の好みを掴んだのだろうか、やるな。

 そんな訳で、兄上がコックに頼んで特別に作って貰ったのが激辛パスタだ。

 昼食として、一人だけ赤々としたパスタを食べていたので、当然俺たちはそれが何か気になった。気になってしまったんだ。

 人がおいしそうに食べてるものを、自分も食べたいとなるのは人のサガ。気がつけば今夜の晩餐が、激辛料理に決まっていた。

 さらに姉上が虫で刺激には慣れてるだとか、母上が辛い物は健康にいいんですって? とか言い出したもんだから、どれだけ辛い料理食べれるか競い合うことになっていた。

 俺も男だから、フューリに良い所を見せたくて、調子に乗ってしまったんだよな。

 辛い物は苦手と言って、早々に戦線離脱したフューリが一番賢かったよ。

 晩餐として出されたのは、激辛焼き肉だった。複数の香辛料を混ぜた真っ赤なタレを塗り込み、鉄板で豪快に焼く。

 焼いてる間から、すでに目が痛かった。一口食べたら、意外と辛くないか? という牽制からの、あっこれヤバい奴、ああああああ!! というクリティカルヒット。

 それでも美味いって感じもするから、侮れない。まぁ、幻想だったんだけどな。一口サイズで焼かれていたのだが、三枚も食べれば水なしでは食べれなくなっていた。

 何皿分食べれるか、で競争をしてたけど、それどころじゃない。兄上がバクバク食べてたのは目を疑った。

 何とか一皿分を食べ切って、俺はギブアップ。妊娠してるので劇物を食べなかったギルエマさんとフューリと兄上以外の、母上、姉上、父上、俺は内側から大ダメージを負った。

 兄上、あれ人間の食べ物じゃないよ。美味しかった部分もあるけど、二度と食べたくない。競争は兄上が当然のごとく優勝だ。

 日記を書いている今も口の中がヒリヒリする~。


 265日目。

 今日は雨だった。

 今は寒い時期だが、雪になるということはなく土砂降り。

 マテリア領では一番寒い時期でも雪が降るのは稀で、年に五回も雪が降れば特に寒い年と評される。

 それでも雨が降っているとやはり寒い。地下都市にはいかずに、屋敷でヌクヌクして過ごした。

 今日は大体そんな感じ。


 266日目。

 神の彫像へお参りに行った。

 掃除をした後、揚げドーナツをお供えした。

 マフィンに並ぶ定番お菓子を、まさかの油で揚げたとんでもない料理だ。

 ざっくりした感触と中のふわもち感がエクセレント。冒涜的なうまさが素晴らしい。

 そういえば、神の彫像って何がモチーフなんだ? 見た目じゃ何の神か分からないんだよな。強いて言えば、人型ってことぐらいか?

 神鉄だから、製造時期とかも分からないし。うーん、謎だ。

 

 267日目。

 父上が呪われた絵画を買って来た。手に渡った人に不幸が訪れるらしい。

 およそ百年前に描かれたもので、現在に至るまで持ち主が変わり続けてきた。

 持ち主が変わったというのは、前の持ち主に不幸が訪れたということ。いったいどんなやばい絵なんだと見せて貰ったが、結構普通だった。

 夜空をバックに稲穂が揺れている絵。どことなく不気味だが、言ってしまえばそれだけだ。

 サウロモネ作品の様な、見ただけで吸い込まれそうになるやばい感はない。

 別館ではなく、屋敷の廊下に飾られた。誰も反対しなかったし、やはり危険度は低いな。

 一応大丈夫かどうか、天空都市を介して竜人に検査して貰った。結果は問題なし。

 昔に毒を塗られた痕跡が残っていたが、今は効果が無くなってるという。

 おそらく貴族間の抗争に使われた名残だそう。たぶん憎き相手に送って、じわじわと毒殺しようとしたんだろうな。

 あながち呪いの絵画というのが嘘じゃなくて、恐ろしい。

 でも俺は、サウロモネ作品の方が恐いぜ。だってあれ、毒とか入ってなくて素であの吸引力だもん。

 

 268日目。

 町の子供たちの間で、サイコロ遊びが流行しているらしい。

 フューリによると、自分で作ったマイダイスでやるのが一押しだとか。

 へぇ~、ってそのことを何となく聞いてたんだけど、気づいてしまった。

 フューリいつの間にか町の子供たちと交流持ってない? 

 実は俺とフューリが一緒にいる時間は結構少ない。俺の習い事と稽古はフューリの花嫁修業と一緒にはやらないし、別に待ち合わせとか毎日しているわけでもないので、タイミングが合わない日は朝食時と昼食時と夕食時ぐらいにしか会わない。

 別に町の子供たちと交流を持っていても不思議ではないのだが……なんか負けた気がする。たまには町に行って誰かと交流を持つべきか? 

 久しぶりにボッチ感を味わった。


 269日目。

 ギルエマさんが編み物をくれた。剣の刺繍が入ったマフラーだ。

 お腹も結構目立つようになってきて、最近は剣を振る代わりに編み物をしているらしい。

 素振りしたいってぼやいてた。やはりドラゴンスレイヤーだなって思った。

 まだ男の子か女の子か分からないけど、子供が生まれた絶対鍛えるんだろうな。想像するのがたやすいぜ。


 270日目。

 流れの占い師に出会った。

 結構前に俺のことを占ってくれた人だ。Sランクの魔物に襲われるとか言われて、外れたんだよな。もっとヤバい奴にしか出会わなかったやつだ。

 再会した記念に、今回も占って貰った。内容は、二か月以内に牢獄にぶち込まれるかもしれないということ。それも大きなやつで、間違っても町の牢獄とかじゃないらしい。

 嘘だろ? マジか? ま、まぁ、前のは外れたし、今回も大丈夫だろ。

 一応、心構えだけはしておこう。念のため、念のため。ビビってるわけじゃないぞ。


占い師「二か月以内に牢屋にぶち込まれるぞい。それも大監獄とか、そんなやつ」


主人公「大丈夫大丈夫、外れるさ。前もそうだった」


占い師「前の奴を参考にすると、もっとヤバい牢獄にぶち込まれる気もするぞい」


主人公「ああああああ!!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 職場の厨房で働いてる調理士のオニーサンからの提案(?)で、元から香辛料で激辛化してた柿○ーにデスソース掛けて食べればその日一日中口は熱を持ってヒーヒー呼吸が苦しいわ排泄口は唐辛子塗ったかのよ…
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