25話 241~250日目
241日目。
小さいトカゲが大きい石の上で日向ぼっこしていた。
さんさんと太陽の光が降り注ぐ今日は絶好の日向ぼっこ日和だ。
地下都市で温度調整をして、あったかい物を食べるのも素晴らしいが、自然の恵みを全身に受けて過ごすのも素晴らしい。
庭の日当たりのいいところに、安楽椅子を置き、のほほんとしながら本を読んで過ごした。
242日目。
この世には足踏みマッサージなるものが存在するらしい。
うつ伏せになり、背中を足で踏んでもらう事で、コリなどをほぐすのだとか。
とりあえず、フューリとやってみたが、罪悪感が凄い。
相手を踏むというのはそれなりの侮辱行為だ。貴族同士でやったら、すぐに社交問題に発展するだろう。
そういう訳か、俺達に足踏みマッサージは合わなかった。
俺達には合わなかったというだけで、魔王には合うらしい。俺が足踏みマッサージをしてあげると、おっさんみたいな声(というか魔王はおっさん)を出して喜んでいた。
普段何も恩返しできてないから、これくらいならお安い御用だが、本当に喜んでいるのかよく分からない。踏まれて嬉しいのか……?
まぁ、本人が喜んでるならいいか。
243日目。
今日から、王都へレッツゴーだ。
今回は兄上の代わりにパーティに出席する。
もちろんファイン君も一緒である。
彼はゼロックスゴーレムとの修行でくたびれていた。
ゼロックスしかできない日々を送り、修行の日々を送った。
しかし、彼は乗り越えた。くたびれた顔の奥には絶対に負けないという闘志が今も見え隠れしている。
彼なら、きっと王都の猛者相手でもいい結果を残してくれるだろう。
彼の信念を俺は無駄にはしない。俺がパトロンとなり、彼にはゼロックスで世界王者になってもらおうと思う。
244日目。
馬車の中でファイン君とゼロックスをした。魔法陣が仕込まれているゼロックス盤と駒を使っているので、揺れる馬車の中でも悠々とできた。
俺も大会の日から指南書を読んだりして、腕を上げている。
しかし、全く歯が立たなかった。ファイン君は明らかに前より強くなっており、たった50手で俺は完封された。
ゼロックスは平均200手で終わると言われている。それを加味すると、ファイン君の腕前はやばい。
もちろんいい意味でやばいと思う。これなら、冗談ではなく世界王者になれるのでは?
期待を胸に俺は日記を書いている。
今のうちにサイン貰っておこう。
245日目。
王都に到着。明日がパーティでその次がゼロックス大会だ。
今日は時間が余っているので、デベエロに会いに行った。
デベエロは相変わらず元気なようで、よかった。
俺が渡した報酬で最近は良い物を食べているらしく、前来たときにはいなかったお手伝いさんもいた。
今回は軽く話すだけにとどめておいた。
小説談義もしたいが、丁度ノリに乗っているところだったようだからな。
新刊にサインを書いてもらって今日は退散した。
246日目。
兄上の代わりに社交パーティに出席、挨拶回りを繰り返していたら、すぐに終わってしまった。
兄上の代わりに社交パーティに行ったのは初めてだったが、まさか料理を一欠けらも食べれないとは思わなんだ。
事前に挨拶する人々の名前を覚えて行ったが、少し忘れていた部分もあって焦った。
兄上は大変だったんだなぁ、と再実感。
そして、俺が長男でなくてよかったと思った。
俺に領主だのなんだのは絶望的に合わないからな。
気楽に面倒くさくない範囲で暮らすのが一番だ。
そういえば、俺って将来どうするんだろう?
前に聞かれた気がするが、覚えてないな。たぶん、オリハルコン業者とかになるだろう。
安泰安泰。
247日目。
ゼロックス大会当日。ファイン君はまるで物語の魔王の様な覇気を背負ってやってきた。
王都でゼロックスゴーレムと最終調整をして、コンディションは最高潮らしい。
その言葉は嘘ではなく、俺が金の力でねじ込んだ王都ゼロックス大会をすいすいと駆けあがっていった。
各地で名をはせていた豪傑たちばっかりだったが、ファイン君は完封しまくって、格の違いを見せていた。
今日という前半の部があっと言う間に終わり、残りはベストエイトから頂点を決める後半の部だ。
後半の部は明日。いきなり王都でチャンピオンになるのか? 期待は尽きない。ファイン君はこの国の世界チャンピオンになる気満々の様だ。
世界チャンピオンになれば平民なら3年は贅沢して暮らせる賞金が出る。
王都のチャンピオンを踏み台にして、全国世界大会などに出場し、高成績を残せばさらに賞金は上がるだろう。
なにはともあれ明日が楽しみだ。
248日目。
ファイン君はとんでもない進撃を見せた。
対戦相手を一切寄せ付けず、圧勝して見せる。すぐに決勝戦だ。決勝戦の相手はファイン君にとって見知った相手だった。
決勝戦の相手、それはファイン君の父だったのだ。
ファイン君の父親は王都で度々優勝している猛者。それでも全国世界チャンピオンに届かず、普段は樵をして暮らしている。
俺を超えれるか? とファイン君の父はファイン君を挑発する。
ファイン君は、乗り越えますよ、と一言宣言した。かっこいい。
その後に、言葉はなく彼らはゼロックスで語り合った。
勝負は接戦だった。俺にはレベルが高すぎたが、何とか状況は分かる。ファイン君の父親の怒涛の攻め、それをファイン君がいなしているのだ。
勝負はたった一手が決め手となって終わった。
単純なファイン君のミスだ。これが上級者同士でなければ、問題なかっただろうが、ミスはミス。同格の人間との経験のなさが浮き彫りになってしまった。
優勝はファイン君の父になり、準優勝はファイン君となった。
ファイン君は悔しそうな顔をしていたが、どこかうれしそうでもあった。
父が偉大な存在と分かったからだろうか。
ファイン君は負けたが、これからも精進すると誓い、全国世界チャンピオンを目指すことを決めた。
それでこそ、俺のみ込んだ男。一回優勝を逃したぐらいで、メンタルが折れるのなら、パトロン何かになっていない。
彼は丁度いいので、父親と一緒に王都から帰るらしい
親子で語り合う事もあるだろう、きっといろいろ盛り上がるに違いない。
249日目。
ファイン君もいないし、天空都市で帰りたかったが、一応天空都市関連は隠している。素直に馬車に揺られて帰ることにした。
ゼロックス大会の熱に浮かされて、この日はずっとゼロックスをしていた。一回もゼロックスゴーレムに勝てなかった。ハンデ機能つけとけばよかった。
250日目。
馬車ぁあああああ!! ゼロックス飽きたァアアアア!!
フューリは今回いないので、寂しいぃいいいいい!!
日記終わり!!
主人公「まだ見ぬ強敵がファイン君を待っている!」
ファイン君「望むところですよ!」
ハーレム「新たな女性とのフラグを立てておいたぞ!」
シリアス「ハーレム内の不和は任せろ! バリバリィ!」
ホラー「行き過ぎた愛がどうなるか、知ってるかい?」
ファイン君「ああああああああ!!」




