24話 231~240日目
231日目。
王都の貴族の間で腕時計を付けるのが流行っているらしい。
時計は高級品だ。しかも腕時計となれば、最新の技術を要する。魔法陣を組み込んだものなら安価だが、今の流行は魔力を使わないねじまき式らしい。
父上と兄上が時計を欲しがっていると聞いたので、竜人に頼む。
竜人なら、何でも作ってくれる。そんな安心感と信頼がある。
そして1日で仕上げてくれたのが、500以上の細かいパーツを組み合わせたねじまき式時計だ。デザインは吸血鬼。
内部構造が見えるという活かした作りになっていて、見ているだけでも楽しい。
普通に作ろうと思ったら、年単位はかかるだろう。
これを兄上と父上にプレゼントすると、二人はとても喜んでいた。
流行を気にするとは、二人も男子だな。
俺はつけないのか聞かれたが、面倒くさいので付けない。
時計を付けていると時間に縛られている感じがするんだよね。俺が縛られるのはフューリだけで十分だ。
それなりにかっこいいことを言ったところで、今日の日記は終わり。お疲れ様でした。
232日目。
キノコと毒キノコを見極めるのはとても難しい。
時々俺はキノコを家に持って帰って、調理して貰っているが、まだキノコと毒キノコを見極めれる領域に来ていない。
傘の形だとか、縦筋か横筋か、色だとか、生えている高さとか、色々判断する材料はあるが、かなり難しい。
キノコの専門家がいるほどには難しく、見極め検定とかあるらしい。
だが、しかし俺は天空都市にキノコのデータをインプットすることで、完全に見極めることに成功した。
これで、毒とか気にせずに食べれる! やったぜ!
233日目。
兄上がポテチを欲しがっている。ポテチに嵌った兄上はどうにかして、あれをまた味わいたいらしい。何か話す度に、ポテチの話題を出してくる。
兄上は今が一番忙しい時期だ。父上から本格的に仕事任され、毎日のように家にやって来る訪問者の相手をしている。
疲れたような顔をしているのも結構見かける。
ポテチ中毒になっては困るが、息抜き程度なら大丈夫だろう。
ポテチを魔王に作ってもらおう。そこで思いついた。どうせなら、兄上の好みのポテチを作ってもらおう。兄上は辛いのが好きだ。晩酌には香辛料を振りかけたナッツをよく食べている。
なので辛い香辛料を入れたホットなポテチを作ってもらおう。
ホットポテチは赤く染まり、食べてみると幾らでも食べれる病みつきな旨さだ。
塩味も良かったが、きっと兄上はこっちの方が好みだろう。
そして渡してみると、兄上のテンションは一気に上昇した。
これこそ望んでいた食べ物だという。
ホットポテチを肴にワインを美味しいそうに飲む兄上を見ると、ホットポテチをプレゼントしてよかったと思う。
同時に俺も酒を飲みたくなった。
ああ~、お酒を飲みたい!
234日目。
魔王がアルコールの入っていない酒を開発したと連絡をくれた。
アルコールが入っていなければ、俺でも飲める。俺はすぐに家を出て地下都市を目指した。
用意されていたのはワインだ。さらにはおつまみとして、ナッツを各種用意されてあった。
俺は魔王に礼を言ってから、さっそくノンアルコールワインを飲んでみた。
一口で分かった。
これ、ただのブドウジュースじゃねぇか!
騙された! 向こうを見ると、魔王たちが笑い転げていた。
ちくしょう! 子供の純情を弄びやがって!
235日目。
ファイン君が俺に相談しに来た。
恋愛の相談だ。面倒くさかったので、兄上に任せようと思ったが、来客中だったので諦めた。
ファイン君いわく、女の子三人との関係が掴めないらしい。
どうしたらいいのか、誰か一人に決めたらいいのか、そうしたら他の二人との関係は? そこにゼロックス大会で優勝したのときの表情はなく、苦しみ悩む表情をしていた。
俺は二つの道を示した。きっぱりと一人を選んで、交際する。それか、全員を養うことだ。
一番悪いのはこのまま引きずって全員と険悪な関係になり、将来に支障を来すことだと俺は思う。
ぶっちゃけ全員にその気がないって言ってもいいだろうし、そこはファイン君次第だ。
これ以上のアドバイスは恋愛経験が乏しい俺には無理だ。
ただ、全員を養う気があるなら、そのゼロックスの腕を活かせる道を用意しようとは、言った。
2日後には答えを出してくるらしいので、それまで俺は待っておこう。
236日目。
姉上とロッグがトンボを食べていた。エレキトンボという食べると舌がピリピリして旨い奴らしい。
それ、大丈夫なのか?
疑問はあるが、二人は美味しそうに食べてるので大丈夫かな。
ロッグに会うのは久しぶりなので、近況を聞いてみた。
実家の宿屋で働きつつ、虫の研究を続けているらしい。やっと渡り蜂の研究が終わりそうと喜んでいた。
まぁ、俺はちゃんと金を返してくれるならそれでいいが。
姉上とロッグは恋愛関係になく、友人同士のような関係らしい。
偶に虫談義をしているのだとか。
俺は去り際に、エレキトンボに激辛香辛料を掛けて去った。
遠くから辛さの余りの悲鳴が聞こえる。闇鍋の礼だ。よく聞くと、ロッグも犠牲になったようだったが……まぁ、ロッグだし、いいか。
237日目。
四天王からスカウトが来た。
現魔王の四天王だ。ヤギ頭の怪人で、炎を司っているらしい。
勇者の仲間のあなたが四天王に入ってくれたら心強いという勧誘文句から始まり、魔王の支配下につけばあなたはさらに強くなれるというメリット性を強く協調していた。
これ以上強くなってどうすんだ……と俺は切に思う。
俺が断るのを表情から察知したのか、ヤギの四天王はここで四天王にならなければ、死ぬことになるなど、実力行使をちらつかせてきた。
なので、俺も実力行使に出た。
天空都市を使えば、一瞬で消し炭に出来るが、竜人が研究材料としてほしいと言うだろうし、土魔法でできるだけ傷がつかない様に殺すことに決める。
やりかたはクリスタルに埋め込んで、相手を窒息にさせる方法だ。
迫りくるクリスタルをヤギは燃やしきることが出来ずに、あっさり閉じ込められた。残酷だがこれも戦い。諦めてくれ。
ヤギを竜人の所へ持って行くと、竜人は良いサンプルがとれたと良い笑顔をしていた。ナチュラルに死体を見て喜ぶのはクレイジーだ。
これで何を開発するか知らないが、竜人ならやばいのを作るはずだ。俺はそう思っている。
勇者に四天王を倒しておいたと、一方的に伝えておいた。
これで俺も少しは勇者の負担を減らせたはずだ。
238日目。
ファイン君が決意を固めた。
彼はゼロックスのプロになり、彼女たち全員と人生を歩むらしい。
彼が決めたことならば、俺は何も言うまい。その先のための道を用意しよう。
丁度、王都でボードゲームの大会があると聞いている。
日にちも近いらしいので、連れて行ってあげようと思う。デベエロにも会いたいしな。
それまでにファイン君にはさらに強くなってもらう。
今回のために、ゼロックスゴーレムを用意した。
ゴーレムというのは単純な作業しかできないが、命令を聞けばその通りこなしたり、ルービックキューブを五分で完成させたりと知能は高い。
なのでゼロックス専用のゴーレムを作れば、ファイン君の強敵になる。さらに強くなれるはずだ。
もしかして、叩きのめされ過ぎてゼロックスが嫌いになるかもしれない。でも、このぐらいの試練を乗り越えれなければ、ゼロックスで食っていくなど無理だ。
その覚悟が本物か、見せてもらう。
それが分かれば、パトロンとなるのもやぶさかではない。
がんばれ、ファイン君。
239日目。
庭に手紙を足に括りつけた鷲が来ていた。文通相手からだ。また来たのか、来なくていいのに。
相手は帝国の第三王子だ。仕方ないので、読むとする。
そこには好みの女のタイプについて詳しく書かれた10枚の手紙があった。
こういう女のこういうところが好きというのが、書き綴られてまくられており、俺はドン引きした。
いや、俺も似たようなことをしたから、人のこと言えないけどさ。
女のことしか興味ないのかこいつは。
とりあえず、書くことがないので姉上のことでも書いておこう。
こいつのタイプにどんぴしゃの、気の強い女性はギルエマさんだが、ギルエマさんは兄上の嫁だからな。書くのは流石にまずい。
姉上なら……たぶん大丈夫でしょう。ギルエマさん程ではないが、気の強い部分はあるし。
こいつが姉上の趣味に引かなければ、俺はこいつを認めようと思う。
さぁ、行って来い鷲! そして帰ってくんな!
240日目。
今日は小さい雪みたいな雨が降っていた。
いや、どちらかというと雨みたいな雪? どっちでもいいね。
とにかく水分には変わりないので、今日は家にいた。
天空都市で吹っ飛ばすのは流石に自重だ。また、王都の研究隊がやってきたらいけない。
そういえば、研究隊がやばいやばいと連呼していた俺の魔石はどうなったんだろう。
まぁ、大丈夫大丈夫。問題ないさ。
主人公「そういや、魔王は四天王とか作らないの?」
魔王「うーん、ないね。ほら、僕らが君の四天王みたいなところあるから」




