22話 211~220日目
211日目。
久しぶりにこの地へマクラス教の信者がやって来た。
新しい聖書を配って、布教活動をしていた。
聖書って……新しくなるんだ。
俺も聖書を貰い、中身を読んでみた。
今回は前の内容に加えて、短編が付け加えられていた。
枕が動き出して、冒険する短編だ。デベエロらしい短編で、心打たれた。
フューリにも聖書を渡して、マクラス教をお勧めした。
信者さんには白金貨20枚を寄付し、これからも布教を頑張ってほしいと伝えた。
寝ることは大事だからね!
212日目。
ファイン君を街で見かけて、少し会話した。
ファイン君の周りにいる女の子が二人から三人に増えていた。
腕は二本しかないから、隣を奪い合っていたのだが、目線の火花どころか雷出ている勢いだった。
ファイン君は凛々しい顔をしていたが、どこか疲れているように見えた。
話した内容は他愛無い物だったが、助けてくれ的なニュアンスをひしひしと感じた。
俺は何もできずに見送った。ぶっちゃけ関わるのが、めん……いや、俺如きでは恋愛のアドバイスは何もできないだろう。
強いて言えば、全員を囲む度胸を付ければいいと思う。樵の息子らしいから、まだ経済的余裕もないと思うが、そのボードゲームの腕を使えば養っていくことは無理ではないと思う。
がんばれ、ファイン君。俺は君を応援してるぞ。
213日目。
家の枝に虹色の小鳥が二匹止まっていた。
見るだけだったら、こいつらが次元の違う生き物には見えない。
隣のフューリには見えていないようなので、次元が違う生き物というのは間違いないのだろうけど。
俺と違って普通の人には観測できないから、もしかしたら小鳥やダイコンは俺より上の存在なのかもしれない。
やばそうな黒い霧と違って、安全そうなのが救いだ。
214日目。
森で歩くダイコンたちを見かけた。ダイコン、ニンジン、ラディッシュ、レンコン、と着実に増えていた。
こいつらも普通の人には観測できないんだよなぁ。
ふと思ったが、食べたらおいしいんだろうか?
黒い霧が残した粉と違い、見た目が野菜なら食べても大丈夫そうに感じる。
頭の葉っぱとか分けてくれないかなぁ。
215日目。
勇者との定期連絡の日なので、連絡。
勇者は仲間たちと協力し、第二の四天王を倒したのだとか。
第二の四天王は空高く飛び、空から一方的に攻撃してくる、風と飛行の蝙蝠人だったらしい。
竜騎士の力を借り、竜がボロボロになりながらも何とか勝ったのだとか。
勝ったのは良いが、竜の治療費や、食費、聖女の無駄遣いと金が嵩んでおり、また金が無くなったらしい。
それを伝えてくる勇者の声が切実で、俺はすぐに白金貨20枚を送った。
がんばれ、巻き込まれたくないけど、がんばれ。
金は送るから、勇者頑張って……。
216日目。
俺が剣の稽古をしている間、フューリは料理などの花嫁修業をしている。
貴族に料理の腕は必要ないのだが、嗜みということらしい。
俺はフューリの手作り料理を食べたいので、花嫁修業を頑張ってほしい。
好きな女の子の料理を食べたいというのは、男のロマンなんだ。
特にお菓子が食べたい。砂糖が入った甘い奴がいい。砂糖と生クリームの塊という、伝説のお菓子、ケーキというのがいいな。
甘くておいしいのだろうなぁ、フューリが作ってくれればよりおいしく感じるに違いない。
217日目。
珍しいものを持ってくる行商人が今回もやって来た。
今回持ってきてくれたのは、ポップコーンというものだ。
固いのか柔らかいのかよく分からない感触のする白い塊で、塩味で味が付けられおり、バクバク食べれる。
ポテチを彷彿とさせる感じだ。幾らでも食べられる。
行商人は俺のことを良く分かっており、元ネタを見せてくれた。
とうもろこしだった。爆裂種という特殊なとうもろこしらしい。
まさかポップコーンがとうもろこしだったことに驚きつつも、俺はトウモロコシを購入した。普通のとうもろこしではできないらしいからな。
白金貨20枚を今回も渡して、また来てもらうことにした。
それにしても、ポップコーンが旨い。毎回、行商人はいい仕事をする。すでに楽しみの一部となっているし、これからもがんばってほしい。
218日目。
地下都市で育てられていた蜘蛛から糸が採取された。
これにより、地下都市でも糸を使った布製品が充実していくだろう。
しかし、一つ問題が発生してしまった。魔王の負担が大きすぎるのだ。
新事業が増えていくたびに魔王が担当し、最近では寝れない日も多いという。
グレーターデーモンのグレグレ君も補佐しているが、手が足りない。
なので、エルダーリッチに地下都市に封印してある死体から人型のを蘇らせてもらった。
死んでも働くことになってしまったが、彼らには美味しい食事とかを提供するので、許してほしい。
とにかく、魔王の働き過ぎ問題は解決した。
地下都市に布製品も量産できるようになったから、とうとう引きこもっても大丈夫になってしまったのでないだろうか。
随分発展したと思う、最初はただの芸術品置き場だったのに。
これからも地下都市は成長していくだろう。その行く末が楽しみだ。
219日目。
星座を語るのはロマンチックな事らしい。なので、必死になって覚えた。
あれが大三角形、あれが天使のキューピットで、あれがハート座、この星座にはこんな話があって云々。星座には正直興味がないので、覚えるのは大変だった。
ずっと、本とにらめっこして覚えた。
その反対でフューリも星座の本を読んでた。あれ? これって教えながら、語るってシュチュエーションできなくない?
220日目。
異国にカボチャでランタンを作ると言う祭りがあるらしい。
カボチャが地下都市で収穫されたので、やってみた。
中身をくりぬき、人の顔にするのだが、俺はふと思った。
これ、またサウロモネの作品のようになるのではないかと。
なので、今回は手加減をして作った。普通に人の顔になり、俺は安心した。いちいち、兵器を作ってたまるか。
フューリが作ったカボチャランタンも可愛い顔をしててとてもいい。
くり抜いた中身は、パイにして食べた。
濃厚な甘みがあるカボチャパイは美味しい。
ランタンにしたカボチャも、楽しんだら全て煮込んで食べた。
煮込むだけでもカボチャは甘くておいしい。
カボチャを料理してくれた魔王には感謝だ。今度、何かほしい物がないか、聞いてみよう。
ファイン君「それで湖を覗いたらですね~(助けて! 助けてください!)」
主人公「へぇ~、金と銀の斧が……(無理! 修羅場なんて面倒!)」




