13話 131~140日目
131日目。
本屋に新しい本が入荷した。
もやし戦記3が販売されていた。今回は主人公のもやしと空豆が戦場でぶつかり、死闘を繰り広げた。結果は引き分けに終わり、次には決着をつけるッという感じだ。
さらには各国の情勢が動き出し、世界の闇が暗躍する素晴らしい章だった。
続きが気になる。デベエロをせかしてもいいが、こういうものは焦ってもいいものは生まれないと俺は知っている。今は二か月ペースで出版しているし、二か月の辛抱だ。
ああ~続きが読みてぇ!
132日目。
姉上がお見合いの写真と資料を持って、俺のところにやって来た。
ギルエマさんと母上も集まって、姉上のお見合い相手に相応しいかどうかを会議する。
その結果、三人の人物が選ばれることになり、家でお見合いパーティが行われることになった。
ああ~、家でパーティとか、絶対俺も出席しなきゃいけないじゃないか、面倒くさい。
しかも母上がそろそろ、俺の婚約者も決めないとね、とか言い出した。
やめろ! しがらみに囚われたくない。俺は自由に生きたいんだ!
仕方ないので、俺は前の社交パーティで会った、話題の合うあの子を呼ぶことにした。
母上があらあら~とか言って、からかって来るのがうざい。
名前を俺が知らなかったので、ちょっとてんやわんやしたが、資料を調べたらすぐに分かり、パーティに呼ぶことになった。名前はフューリ・ヴェンディゴというらしい。
母上がその子の情報を見て、唸っていたが何か問題があったのだろうか。俺に見せてくれてなかったので良く分からない。
とにかく、これで少しはパーティが楽しみになった。家でパーティが行われるので、当分は他の土地に行って社交パーティをしなくていいだろう。
133日目。
姉上が、庭で蝶々を捕まえていた。
それはいいが、煮込んで食べるな。お見合いの時に、好物は虫の佃煮です、とか言うつもりか? ドン引きされるぞ。
いや、それぐらい認める甲斐性がないと姉上との結婚は無理か。
たぶん、姉上の夫は虫とか食べさせられるんだろうな~。ご愁傷さま。
134日目。
町に変な奴が来た。冴えなさそうな若者だ。
自身を勇者と名乗り、大賢者とやらを探しているらしい。
町の広場で大声でそのことを言っており、腫物を見る目で町の住人に見られていた。
うわぁ、夢の通りなら俺が大賢者なのだろうが、行きたくねぇ。
なので、無視した。遠くから監視していたが、勇者がとても哀れだった。
だれも反応してくれないし、不審者を見る目で見られるし、挙句の果てにはマジで不審者として衛兵に捕まるし。
町の人に迷惑をかけたとして、彼は厳重注意の上、一晩牢屋の中らしい。
明日釈放されたら、会いに行くか……。
135日目。
うなだれた顔で留置所から出てきた勇者に話しかけた。
俺が大賢者らしいと言ったら、最初は信じていなかったが、夢のことを話すと信じてくれた。
勇者は、魔王を倒すためについて来てくれ! と言ってきたが、断った。
一か月後にお見合いパーティあるし、貴族の息子だからそう簡単に長期のお出かけなんてできないのだ。
なので、金銭面でのサポートと、天空都市によるサポートで手をうってもらった。
勇者は俺のあげた白金貨20枚を見て、泣いていた。
何でも、金がなくてここ最近は雑草や木の皮を食って命を繋いでいたらしい。
ええー、女神様、それぐらいはサポートしてやれよ。
定期的に天空都市を介して通信し、その時に金銭も追加することにした。
取りあえず20日ごとに通信だ。
勇者は次に竜騎士がいるらしい竜の里を尋ねると言っていた。そこまでは、過酷な道だが、何とかするとのことだ。
思ったんだが、勇者って本当に過酷だな。誰からも認知されず、挙句の果てに前科一犯、雑草を食って旅をして、やっと見つけた仲間には金だけ渡されて次の仲間を探す。
面倒くさいから、魔王討伐にも参加しないつもりだったが、せめて魔王討伐には参加してやろうと思った。
挫けるな勇者! 頑張れ勇者! 世界の未来は、お前の手に掛かっているかもしれない!
136日目。
ギルエマさんの妊娠が発覚。
ささやかなパーティが行われ、ギルエマさんは照れくさそうにしていた。
兄上、やることやってたんだな。
何はともあれ、兄上、ギルエマさん、おめでとう!
子供が生まれた時のプレゼントを今から考えておこう。おしゃぶりとかがいいかな?
137日目。
森の中でガルーダと遭遇。適当に土魔法で始末しておいた。
当分は地下都市で鶏肉を食べれそうだ。魔王に唐揚げにして貰おう。
138日目。
本格的に暑くなってきた。もう夏だ。
セミがうるさくて、朝早くに起きてしまった。
姉上が庭でセミを捕まえていた。セミは研究しつくしたから、食べるって言っていた。
一緒に食べようと言われたが、土下座して断った。
セミは無理っす。生理的に無理っす。
姉上の旦那は本当に苦労するだろうなぁ、俺には無理だ。
139日目。
今日の晩御飯にウサギの丸焼きが出た。
思わず叫んで、逃げ出した。記憶がフラッシュバックしてやばい。
ウサギィ、ウサギぃぃぃぃいいいい!!
家族から変な目で見られた。兄上に、嫌な事でもあったのか? って優しく聞かれた。
違うんだ兄上、普通にウサギがトラウマなんだ。
ウサギ耳とか、ウサギっぽい形を見るだけで無理なんだ。
ウサギの獣人にあったら発狂する自信がある。ウサギはマジ勘弁。日記のウサギの文字を見るだけでも、背筋が震える。これ以上は止めよう。おやすみ。
140日目。
吸血鬼から楽器を作ってほしいと設計図を渡される。
そこには俺の知らない楽器が大量にかかれていた。
特に打楽器というのはタンバリン以外見たことがない。
楽器は結構普通で芸術的という見た目はしていない。吸血鬼に聞いたところ、楽器なんだから、見た目が普通なのは当たり前と言われた。まぁ、そうなんだろうけどさ……。
吸血鬼いわく、ここらへんの音楽文化は管楽器が主で、それ以外は廃れているんだとか。
道理で、ドラムとか、シンバルとか、バイオリンとか、知らないわけだ。
吸血鬼はこれでハードロックやクラシックが出来ると喜んでいた。
ハードロック? クラシック? という感じだったが、ゴーレムに楽譜を覚えさせて、奏でてもらったところ。俺は甚く気に入った。
ハードロックは激しくテンションの上がる曲で、クラシックは緩やかでどこか壮大さを感じさせる曲だった。
特にクラシックを聞きながらの昼寝は穏やかに寝れそうだ。
惜しむらくは地下都市でしか聞けないって事だな。日の当たるところで聞いて、大自然の息吹を感じたかったものだ。
勇者「ひもじい、ひもじい……」
主人公「姉上を連れて行くか? 食事が虫になると思うが、腹は満たせると思うぞ」
勇者「!!」




