9.そして
眩しい。眩しくて目が開けられない。しかし目を瞑っていることもできない。何らかの力によって無理やりこじ開けられようとしている。視界に暗黒の日の出が写る。真っ白な空と海に輝く黒い水平線。その向こうには何が…。
重たい瞼をこじ開けると、眩しい光が目を刺した。強烈な光がこちらを向いている。そのそばに青い塊がかすかに動いている。視界も頭もぼんやりとしている。顔に酸素マスクがつけられているようだ。冷たく澄んだ空気が流れている。
体が動かない。両腕と胸の下をベルトのようなもので拘束されている。右手の指先で心拍を、左の二の腕で血圧を計っているらしい。両足は開かれ高い位置で固定されている。ここは分娩台だろうか。下半身に白いタオルがかけられていて何が起きているのかわからない。体の感覚は何もない。
周りは看護師らしき女性たちに囲まれている。それぞれが口々に何かを言っている。何を言っているのかはわからない。情報が頭を素通りしていく。左の壁際に設置されたスピーカーから音楽が流れている。この曲は、ショパンだったかリストだったか…。
私は、この先の展開を知っているのではないか? 私は下半身が凍りついたように冷たくなっているのに気付いた。
悪夢は、まだ終わらないようだ。




