第1編 出会い 学校なんてやめてしまえ-1
あの事件から1週間がたち、未だ追悼ムードの王国と違い、矢村の住むヘスト市では、いつもと変わらない日常が過ぎていた。
矢村もいつもと変わらず幼馴染の清水康夫と学校にいた。
「えぇ、ここは覚えておくように。それでは、今日はここまで。帰ってよし。」
と、先生が言うと、生徒が一斉に帰宅し始めた。
「なぁ、矢村。この後街行かない?」
「別にいいけど、どうして?」
「新しい魔法書と杖が入荷したらしいよ。俺のもう古いからさ。親に買ってもらおうと思ってさ。」
「清水のってそんな古かったっけ?まだ、新しそうに見えるけど。」
「あれは父さんにおさがりだからな。とりあえず行こうぜ。」
そう言って強引に連れていかれた。ちなみに、清水も矢村と同じ魔法使いである。
街に着くと、魔法使い専用の店があり、そこには『初級魔法書』から『超上級魔法書』まで売っていた。高いものは家一つ買えるものまである。
「清水はなにが欲しいんだ?」
「俺は上級魔法書かな。」
そんな会話をしていると、隣の人たちが話しかけてきた。
「ねぇ、僕たちあまりこの街のこと知らないんだけど、ちょっと教えてくれない?」
と、明らかに魔法使いの格好をしたひとが話しかけてきた。
「はい。僕たちでよければなんでもどうぞ。」
「この超上級魔法書なんだけど、内容は王国に売ってるものと一緒?」
「えぇ、一緒ですよ。」
よかった。怪しい人ではなかった。
「よかった。同じものならここで買おうっと。隊長!これ買ってもいいですか?あとこのリンボクの木から作った超高級杖も。」
それを聞いて、矢村と清水は驚きを隠せなかった。なぜなら、ただでさえ家が買えるものを二つ買うと言っているのだから。
すると、隊長と呼ばれていた人がその人に近づいてきた。
「コンセ、それいくらだ?」
「合わせて1000ゴールドです。」
「まぁ、いいだろう。大切に使えよ?」
即買いかよ、と思わず心の中でツッコんでしまうほど、驚くべき値段だった。
驚くべきことが目の前で起こってしまい、終始固まる二人をよそに、買い物は終わってしまった。
「二人とも、ありがとうね。教えてくれて。」
「いえ、だ、大丈夫です。そんなことより、そんなに高いものなんで簡単に買えるんですか?」
思わず矢村が聞いてしまった。
すると、隊長と呼ばれていた人が答えた。
「強くなれ。それだけかな?…おい、コンセ。この二人…」
「隊長、まさかあれですか?」
「あぁ、そのまさかだよ!まさかこんなところで会えるとは。」
矢村と清水は自分たちのこと話しているのはわかっていたが、なんの話かは全くわからなかった。
「君たち、俺たちと一緒に魔王を倒しに行かないか?」
「「はぁ⁉︎」」
「ちょっ、何急に言ってるんですか、隊長!」
「あ゛ぁ?善は急げだろ?」
話が急展開過ぎて、頭がパンクしている清水とは対照的に、矢村はいたって冷静に考えていた。
「あの、僕たち学校あるんですけど。それに、親にだって言ってないし、そもそもあなた方が魔王を倒せるかなんて保証はないですし。」
そう矢村が言うと、隊長が鋭い眼光で睨み、語気を強めてこう言った。
「学校なんてやめてしまえ!!!親は俺が説得する!!!魔王を倒せるかは俺のパーティーを見てから言え!!」
学校やめろ発言をし、強引にねじ伏せ、強引に路地裏までつれていき、矢村が頼んでもないのにパーティーの紹介を始めた。
「まず、こいつはコンセ・ザウタウロ。君たちと同じ魔法使いだ。レベルは185。スキルは永遠の魔力。いくら魔力を使ってもなくならないチート級のスキルだ。」
まず、たった一人の紹介が終わっただけなのに、空いた口が塞がらない矢村と清水だった。さらにこれと同等程度の人がいると考えると、魔王討伐できるんじゃないかと思っていた。