第三章-偽造がニュースになったお菓子でもしばらくすればまた食べられるようになる
今話でプロフィールに出てきた少年達が全員登場します。
「えと・・・・お前も万引きしたろとか言われたのか?」
そう言われた進歩であったが、なんのことかよくわからなかった。なぜなら、
「いや・・・オレは・・・とりあえず・・・警官に・・・なんかオレを探してるって・・・それで・・・いきなり眠らされて・・・」
眠って以来とぎれていた、感覚が戻ってきた。がたがた揺れている。トラックにでも乗せられているようだ。やがて、暗がりに慣れ、声の主の姿が見える。
「あー・・・俺、沖田。沖田健八ってんだけど。よろしく。」
自己紹介されたので進歩も返す。
「オレは・・・近藤進歩。よろしく・・・」
彼、沖田健八は見た目はいい顔をしている。少なくとも進歩には劣るまい。いわゆる美少年という奴か、可愛いというか、爽やかなルックスである。
「そうか。お前はそんな感じで連れてこられたのか。だが俺は少し違うんだ。」
「どんな?」
進歩は聞き返す。
「それはな、俺は三好・・・愛知県に住んでんだけど、ここに来る前に本屋にいたんだ。」
進歩は黙って相づちを打つ。
「『ジャソプ』や『スンデー』とかを立ち読みして、店の外に出ようとしたんだよ・・・その時にな・・・」
「その時?」
「アニメ雑誌コーナーに通りかかってな、オタクっぽい奴が熱心に『アヌメージョ』読んでたんだ。それでな・・・」
ごくっ、と唾を飲み込んだ進歩。そして、こう続いた。
「からかったらどうなるかと思って、通り際にそのオタクに、『ゴッド・オブ・無職』って言ってやったんだよ。そしたらさ〜そのオタク怒り出して、『無職じゃない!!ニー・・・いや、フリーターだ!』ってわめいてたんだぜ〜笑えるだろ〜。」
腹が立つほどのんきな声で健八は言った。
「はああああああ!!!????」
当然のように進歩はこう叫んだ。
「で、その後警察が来て、万引きしたろって言われて、なんやかんやでここに着いたわけさ。」
「いや、ついでみたいにラスト話さないでよ!メインはゴッドオブ無職!?後肝心な部分をなんやかんやは、なしでしょ!そのなんやかんやを話してよ!」
すると、
「ちょっと・・・ごちゃごちゃうっさいよ〜・・・静かにしてよ〜・・・」
と、声がした。
声の主は進歩、健八とはまた違う少年の声だった。彼の自己紹介によると、名前は山口登魯というらしい。
「ふ〜ん。君らもこのトラックっぽい所に連れてこられたんだ。奇遇だね〜ふふ〜ん。」
登魯は、アニメのネズミの声が1,2段階低くなったような声でこういった。丸眼鏡をかけていて、体は小柄。絵にするとグルグルの入っている眼鏡少年といえようか。
「で、山口君はどうやって連れてこられたの?」
進歩が聞いた。
「え〜と・・・警察に・・・・なんやかんやで連れてこられた。」
「だからなんやかんやは何だって言ってるでしょーが!!」
「うっせーな。俺ら寝起きで機嫌悪りーんだよ。百科事典の角で眉間殴んぞ。」
進歩のツッコミに健八がこう吐いた。続いて登魯も
「ったく、君は神経が太くていいね〜・・・僕は繊細だからそんなことできないや〜フフ〜」
「・・・・・・・・」
進歩は何も言い返せなかった。
「ん・・・・でもさ・・・なんでみんなこんなトラックみたいなの乗ってるかわかんないし・・・ねえ・・・・」
進歩が控えめに言う。
「・・・・・・まあ・・・しかたねえな・・話してやってもいいけど・・・」
健八達は話し始めた。
まず、健八は、オタクにキングオブなんとかといった後、書店を出た。すると、警官らしき人が前に出てきて、君万引きしただろ、という内容のことを言われ、もちろん健八は否定したが、署で調べればわかる、とその警官は言って、黒いてかてかした車に連れ込まれたかと思うとやいなや、後ろから取り押さえられハンカチを口に当てられ眠らされ、気が付いたらここにいたらしい。
登魯は、地元の秋葉原をぶらぶらしていると、いきなりまたしても警官と名乗る者から声をかけられ、ここらでひったくりがあって、犯人がこの通りを通ったので目撃してたら署まで証言して欲しいと言われ、急いでいると返答して去ろうとすると、逃げるのは怪しい証拠だとインネン付けられ、無理矢理引っ張られた。この後は健八と同じである。
「・・・・つまり、オレも含めてみんな警察に連れてこられて、眠らされたわけだね?」
進歩はまとめた。
「ああ。俺ら、警察署まで運ばれてんじゃないか?」
「ホントに・・・最近の警察はひどいもんだね〜。人の税金で食べてるのに偉くなったモンだね〜フフフ〜〜」
「ホンにえらいの〜。でも漁師の方がもっとえらいきによ〜」
「・・・・・・?・・・・ちょっと待て、お前誰だ!?」
いつのまにか健八でも登魯でもない、もう一人の少年が会話に参加していた。今度は天然パーマで、浅黒いサングラスを掛けた少年だ。
「ああ・・・誰って・・・ただの土佐っこじゃがの〜・・・・」
「ちがうって。名前はなんだって聞いてんだよ。」
進歩がつっこむ。
「ああああ、アハハハハハハハハ、そうじゃって。ホンにもう、おまんらはそそっかしいの〜アハハハハハハハ」
このとき、「土佐っこ」の彼を除く全員が腹を立てていた。こいつ殺してえええと、怒りのパトスを炸裂させていた。
「わし、坂本真九郎ってゆうきに。ちょっと海で潮風にでも当たろうとしちょったらなんやかん・・・」
「だーーー!!!だからそのなんやかんやを話してよ!」
「えいよ。なんか黒い服きたおんちゃんがこっちに来てな、こげなことゆうきに、付いてくるきたら眠らされてしもーたきに。アハハハハハハハハ」
「こげなこと・・・・・?どんな?」
「えーとな・・・・確か・・・ええと・・・あ、思い出しよった!」
「なんて?」
「えと、『おいしいお菓子あるけど、付いてきたらあげるよ』じゃった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
全員が黙り込んだ。いろいろと言いたいことがあったから。
「なんだ、お前は!子どもの頃母ちゃんや先公にさんざん言われたこと覚えてねーのか!!『知らない人には付いていくな』って!オレは英単語をいくら忘れてもそれだけは覚えてました!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハ、うちのご近所さんはみな家族みたいなもんじゃからの〜」
すると健八がこういう。
「なあ、おかしくねえか?」
「ん。」
「俺ら3人は警察に連れてこられたよな、だけど、その、真九郎って奴は明らかに誘拐犯みたいな奴につれてこられたろ。」
すると登魯が、
「じゃあ・・・・これはみんな誘拐ってことじゃない・・・?」
・・・・・・・・・・・・
全員が黙り込んだ。
「なあ・・・・・」
土佐っこの真九郎が口を開く。それに進歩が答えた。
「なんだ?」
「ひとつ気になることがあるんじゃが・・・・」
「なにかあるのか?」
今度ばかりは信用して進歩が聞く。
「おいしいお菓子はどこにあるんかの〜・・・・」
・・・・・・・・・・・・
また全員が黙りこんだ。今度は違う意味で。
「お前ええーーー!!!いい加減にしろ!そんなにおいしいお菓子が喰いたいんなら、その、いっそテメーがお菓子になれ!」
特にいいツッコミが思いつかなかった進歩。
「野郎!!お菓子の角で眉間殴んぞ!」
「いや、威力薄いでしょ!百科事典との格差は何!?」
「ん・・・・みんな、ちょっと待って!」
登魯がいった。
どうやらトラックっぽいものがとまったらしい。
「おう!やっとお菓子が食えるがか?」
「お菓子はいいっていてんだろうが!!」
そして、次第に光が見えてきた。
そして、次回、前書きで書いたあの組織登場です!