小さな川で
君と出会ったのは1年前の春。
桜の花びらが散る頃に、小さな川の横の草むらで眠っていた。
やわらかそうな茶色の髪に、男の子にしては長い睫に綺麗な肌。
触れてみたくて、ゆっくり近づいて手を伸ばした。
「なに?」
急に聞こえた声に驚き、伸ばした手はそのままで目を見開く。
驚きで何も言えないでいると、彼はゆっくりと目を開けた。
少し灰色がかったその瞳。
ただ目を開けただけ。けど、それすらも綺麗だと感じさせられた。
「倒れてるのかと思って」
私がそう言うと、彼は「ふ~ん」と言って私の目をじっと見つめてきた。
嘘をついていないか探るような目。
私も負けじと見つめ返す。
嘘はついていないと伝えるため。
「ただ寝てただけ」
それだけ言って、彼は再び目を閉じる。
「そう」
彼が再び眠り始めたとわかったけど、私はそこから離れようとはしなかった。
それは君のそばにいたかったから。
いま、このまま離れたら、もう君とは会えないと感じたから。
「なに?」
2度目の言葉。
目を閉じたままだけど、こちらを気にしているのがわかる。
「なにが?」
だから、あえて聞き返す。
ちょっとした悪戯心。
すると、彼は少し眉間に皺を寄せる。
そんな彼を見て、少し気分が良くなった。
「笑ってんじゃねぇ。変質者で通報するぞ」
少し低くなった声。
開いた目がまた、私を見つめてきた。
「どちらかというと君のほうが捕まりそうだよね」
そう笑って返すと、彼は苦い顔をする。
それが見た目よりも子どもっぽくて、可笑しくなって笑ってしまった。
恥ずかしくなったのか、ぷいっと顔を背けてしまう。
その行動に愛しさを感じてしまった。




