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間話 俺の婚約者

 どうも、こんにちは。

 俺の名前はウェルス・マーキュリ。

 マーキュリ子爵家の三男だ。


 俺には前世の記憶がある。

 あ、ちょ、引かないで。マジなんだって。


 前世は地球の日本の二次元が好きな何の変哲もないただの男子高校生だった。

 姉に虐げられつつも友達とバカやりながら平和に過ごしていた。


 享年16歳。

 死因は焼死。

 深夜に隣の家の火事が移って、逃げ遅れて死んだ。

 家族が出張や旅行や彼氏の家にお泊まりで居なかったのが、唯一の救いだな。

 親不孝者でごめん。


 まぁ、死んじまったもんはしゃーないのでそれは置いておく。


 俺は転生した。

 喜んだ。

 今度こそ彼女作ってジジイになるまで人生を謳歌してやると。

 何より、童貞を卒業してやると!


 転生先は中世ヨーロッパみたいなところで、タイムトラベル?とか思っていたんだが、2歳頃に何かおかしいと気付いた。

 国や王や王都名物などに、見覚えも聞き覚えもあるのだ。

 そして走馬灯のように思い出した。

 姉がやっていた乙女ゲームの世界に似ていると。


 ぅおーい、マジかー?


 これが気付いた時の心境。

 姉が俺の部屋のテレビでゲームをしてた上に、熱弁してくるもんで覚えていたんだが…、マジでー?

 似てるだけかもしれねぇが、でも違うとも合ってるとも言えねぇしな。

 でもよくよく思い出してみると、マーキュリ家なんて一切出てこなかった。

 ……。

 なら、どっちでもいっか!


 そんな結論に至ったのが3歳の時。




 子爵家の生活はそれなりに快適なものだった。

 仮にも貴族だし、貧しい生活を送ることはなかった。

 ゲームだからか、中世ヨーロッパのくせに近代技術が混じっていたのも功した。電化製品が魔法製品になっただけだった。流石にテレビとネットはないけどな。


 家族にも恵まれた。

 母親は俺を産んだあと体調を崩し、床に伏せることが多かったが、優しく息子の成長を喜んでくれた。

 父親は穏やかな人だけど、悪いことをするとスゲェ叱られる。でも理不尽なことは絶対言われないし、たまに息子たちにも嫉妬するくらい母親を溺愛している面白い人だ。

 兄2人は、姉しかいなかった俺には新鮮で、2人に連れられて虫採りや街に出掛けて食べ歩きや、街の子どもと遊んだりした。



 そんなのんびりとした日常を送っていた時、父親が俺に婚約者が出来たと言ってきた。


「え?こんにゃく?」


 思わずそう口にした俺は悪くない。

 一般庶民には馴染みない単語だったんだ、しゃーない。


 父親に婚約者は同い年と聞いて、俺はとても葛藤した。

 俺の身体はガキだが精神年齢は20歳。

 俺はロリコンじゃない!

 しかし、婚約ということは俺はロリコンになってしまうのかぁあああ!?

 とか自室で叫んだ。


 そんな感情を抱きながら、婚約者と引き会わされたのは4歳の時。


「初めまして、キャロライン・ティモールともうします」


 精神はともかく、同い年なのに丁寧な挨拶にびっくりして、どもってしまった。

 2人きりにされ、支障のない程度に会話を弾ませながら、俺は婚約者を観察してみる。


 栗毛の髪と、はちみつ色の澄んだ眼をした女の子だった。

 顔は素朴系。美少女!美女!って訳じゃないけど、子犬みたいで可愛い。


 だけど、女の子はずっと無表情だった。

 それが…。


「プリ○ュアとかセーラー○ーンとか魔女っ子が似合う年の筈なのに、マレフィ○ントとか悪役魔女の方が似合うってどういうことだよ…」


 それが、ヒヒヒヒと笑う悪役魔女が似合うと思ってしまった。

 うっかり口にしたが、まぁ意味は分かんないだろうし、変な子どもだと思われたくらいだろう。

 と思っていた、ら。


「………地球、日本、アニメ、漫画、ドラ○ンボール」

「!!? な、何で…………まさか!?」


 まさかの、婚約者も転生者だった。

 しかも漫画アニメラノベネタが通じる!

 それがどれほど嬉しかったことか!


「クリ○ンのことかぁー!」

「だが断る!」

「ゴム○ムのガトリングー!」

「『大嘘○き(オールフィク○ョン)』!」

「電○砲!」


 通じないんだぜ!?

 家族に不満はないけど、スゲー寂しかった。

 だからテンションが上がった。

 キャロライン…キャリーも一緒みたいだった。分かる分かる。

 俺たちはすぐに仲良くなった。

 あと、精神年齢聞いたらキャリーの方が年上だった。

 俺、ロリコンじゃないんだぜ!




 一緒に話している内に趣味が合うどころか、共に悪戯を大人に仕掛ける悪友みたいな関係になっていった。

 両家を行き来して寝泊まりも常になり、キャリーの親父さんに脅されたことを除けば平和に、親や使用人たちに微笑ましく見守られながら順調に育った。

 しかし、その頃とある問題が浮上してきた。

 精神年齢が年上なせいか、キャリーが何かと俺の面倒をみたがったことだ。


「こら、食べる前に手洗いしなさい」

「着替えるの手伝おうか?」

「寝る前に絵本読んであげる」


 ………。


「あの、もしもし?キャリーさん?あのな、俺もう精神は20歳過ぎだぜ?見た目通りじゃねぇの、やめてくれ」

「あ、ごめん、つい。どうしても小さい子に見えて…」

「俺もそうだから分かるけどさ。俺は違うから」


 だから、一緒に風呂に入ろうとしないで!

 身体はロリでも、いやロリだからこそ悪いことしてる気になるから!

 俺はロリコンじゃないから!


「お願いだからやめてくれ!」


 そんなやりとりをした5歳の時。




「キャリーはどこの学園行くんだ?」


 14歳の時、キャリーの家でカードゲームをしながら進路の話を振ってみた。


 当時、俺たちは貴族が行く国立の学園ではなく、民間の学校に通っていた。

 金持ち学園は肌に合わないとキャリーが親父さんを説得し、俺はキャリーを守るためと家族に説明し一緒に入学したのだ。


 男爵子爵と貴族からしたら位は低いが、庶民から見たら貴族は貴族。

 最初は嫌煙されたけど、俺らが庶民丸出しで過ごしていたら仲良くなれた。

 ちなみにその時に、かるたやそろばんや百マス計算など勉強に使える物や、娯楽にトランプ以外のゲーム、トレーディングカードゲームを浸透させた。

 カードはお手製。ベースはデュ○ルマスター。

 キャリーってイラスト上手いんだぜ。

 そんな感じで、今でも一緒に遊んだりする友達が順調に出来た。


 進路の話は、キャリーが先生と話してたのを見たから、気になってしまったのだ。

 キャリーは成績優秀だから、進路の幅は広い。

 だから聞いてみた。


「国立に行く」

「え!?」


 国立っつったら、ゲームが展開される場所。

 しかも俺らの年はドンピシャ。

 攻略キャラたちを好いてはいないキャリーが進んで行こうだなんて絶対思わないシチュエーション。

 …てことは、それでも行きたいと思えることが出来たってことか。


「何かなりたいものが出来たのか?」

「うん。学院に行って、教員免許とる」


 学院っつーのは、大学みたいなもんだな。

 確かあそこは国立学園の高等部を卒業しなきゃ行けなかった筈。

 だからか。


「教師か…。いいな、それ。キャリーなら厳しくも優しい良い先生になれるぜ」


 実際、民間学校でも生徒どころか先生たちにも物を教えてたし、キャリーの補習はスゲー分かりやすかった。


「ありがと。ウェルはどうするの?」

「騎士園に行くつもり」

「騎士園って、騎士育成学園?超厳しいって評判の?」

「そっ。家にも、キャリーの親父さんにも了承してもらった」

「何で?ウェルもう剣の師匠(せんせい)いるじゃん」

「強くなりたいから」

「師匠から3本中1本取れるのに?」

「1本じゃなくて、3本中3本取りたいの」


 不思議そうにキャリーは首を傾げているけど、強くなりたい理由は、ちょっと恥ずかしいから教えてやんない。


「騎士園に行って、生徒も教師も合わせて1番なる」

「ウェル目立つの嫌いじゃん」

「そーなんだよ、だからどうやったら目立たず1番になれるか考え中ー」


 注目浴びるのが嫌いなのは元日本人の性か?

 キャリーも目立つのは嫌いだし。


「…じゃあ、ウェル。こうしよう」


 うーんと悩んでいると、スッと目の前に出される小指。


「私は国立学園をトップで卒業し学院に代表として進学する、ウェルも騎士園をトップで卒業する。

…3年の最終試験に全てを賭ける。どう?」


 おぉ!


「それいい!流石キャリー!」


 それなら目立ってもすぐ卒業だし、何より面白そう!


「いいぜ、約束な」

「うん、約束」


 ニヤリと笑いあって、小指と小指を絡ませた。




 この頃には、悪友という認識は薄くなっていた。

 いやまぁ、相変わらず悪戯はするんだけどさ。

 婚約者という肩書きを、意識するようになった。

 社交界に出れば、キャリーは俺のパートナーとして一緒に出る。

 パートナー。

 それは、とてもしっくりくる言葉だった。




 約束を果たす為には、流石に底辺からトップになったら変だよな、と思い、成績は常に3番手をキープしている。

 学校では、騎士園で出来た友人とだべったり、何でか俺を異常に敵視してくる首席くんと、もっと出来るんじゃないかとつついてくる堅物先生をテキトーにあしらいつつ過ごしている。


「お」


 下校中、人混みの中にキャリーの後ろ姿を見つけた。

 間違いないかって?

 間違える筈ないだろ。

 俺は婚約者だぜ?

 大体、愛しい人を間違える筈がない。


「おーい、キャリー!」

「ウェル!」


 パァッと顔を綻ばせる婚約者に頬を緩ませながら、前世からの夢だった放課後デートに洒落込んだ。


中世ヨーロッパ風なので、学校が初等部からある。


ウェルはジャ○プっ子。

キャリーはどっちかっていうとガン○ン派。




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