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間話 はじまり

壁|;゜Д゜)) こそっ


「ねぇ、ウェル」

「あん?」

「精霊、に興味ない?」


 キャロラインがニヤリと笑い、ウェルスにそう言ったのが始まりだった。




 双方、5歳の時の出来事である。




「んなのっ……、あるに決まってんだろ!!」


 ウェルスが握り拳を作って訴えた。

 精霊。

 幻想的で神秘的な生き物。

 二人の前世では架空の世界にしかいなかったが、この魔法と剣の世界には存在するのだ。


「でも適性がないと召喚できねぇんだろ? 精霊を見せてもらうにも、知り合いに契約者いねぇし」

「ふっふっふっ、じゃーん!」


 キャロラインが背中から出したものは、やたら分厚い本。


「これに召喚陣の書き方が載っています!」

「マジか! どこで見つけたんだよ!」

「父様におねだりした。書庫から持ってきたみたい」

「おぉう、相変わらずの子煩悩ダメ親父さん。流石に禁忌とかじゃねーとは思うけど、チビがやっちゃいけねぇやつとかじゃねぇの?」

「何事も冒険だよね」

「おいこら」


 ※年齢制限があります。小さな子供が禁止されているのは、身体がまだきちんと出来ていないこと、魔力を暴走させてしまう危険があるからです。ちゃんとした理由があるのでやめましょう。


「まずは適性を調べる、と」

「どうやって?」

「専用の魔法陣があるみたい。ウェル、紙とペン取って」

「ほい」

「ありがと。無駄に細かいなぁ…………はい、出来た」

「早!」

「模写は得意!」

「……大体二時間程かかるって書いてあんぞ」

「きっと書いた人はトロくさい人だったんだね」

「そういう問題か?」

「これに魔力流して光ったら適性ありだってさ。どっちが先にする?」

「じゃあ俺が」


 ウェルスが手を置いて魔力を流す、が。


「……反応なし」

「適性なしだね」

「マジかよ! がっかりだぜ!」

「じゃあ次、私!」


 キャロラインが意気揚々と魔力を流すと、ピカーッと魔法陣が光り出した!


「うぉおおお! キャリーすげぇ! めっちゃ光ってんじゃん!」

「目がぁぁ目がぁぁあ!」

「大佐乙!」


 二人は期待に胸を膨らませて、次の行程へ。


「次は召喚陣だな!」

「こっちは結構大きめにかかないと無理かも」

「庭で書くか」


 木の枝で地面にどんどん描き込んでいく。


「で、出来たぁー!」

「大人1人寝転がったくらいかな」

「じゃね? それより、次どーすんだ?」

「また魔力を流して、精霊が出てきたら交渉だって」

「キャリー頑張れよ!」

「うん!」


 婚約者の励ましにキャロラインは拳を握って気合いを入れた。


「ほりゃ!」

「(掛け声かわいいなチクショウ)」


 すると、庭に描いた魔法陣から六色の光が溢れ、収まったそこには。


『汝、何故我らを喚んだ』

『汝、何を望む』

『汝、何を欲す』

『汝、何を選ぶ』

『汝、何を消す』

『汝、何を望む』



 六体の青年・・がいた。



「……」

「……」


 二十歳頃に見える彼らは、それぞれタイプ違えど顔が恐ろしく整っており、いっそ人外染みていた。…いや、確かに人外なのであろう。

 フリーズして動かないキャロラインとウェルスを放って、紅い髪の青年が口を開いた。


『ちょっと、風の! あんたアタシとカブってんじゃないわよ!!』

『何や! 文句あんのかいな!』

『あるに決まってるでしょぉ?! イゲンってものがなくなるじゃないの!!』

『火のに威厳などあったのか? それは驚きだ』

『面貸しなさいあんたたち!!!』

『お断りや!』

『何を一人で叫んでいるんだ?』

『うるっっせぇぇぇ!! 黙れテメェるらぁあああ!!!』

『アハハ! ほんっと、バカだよねー』

『すまんのぅ、召喚者殿。同胞が騒がしくして』


 茶色い髪の青年に謝られて、二人はハッとした。

 そして渋面になったかと思えば、血を吐くように叫んだ。


「……そんなっ、有り得ない!!!」

「認めない認めねーぞ、そんなの!!!」




「「精霊ってのは手のひらサイズのカワイコちゃんじゃないの(か)!!?」」


『手のひらサイズ? 何じゃ、それなら成れるぞい』




 ポンッと音が聞こえたかと思うと茶色い髪の青年は消え、代わりにぷにぷにと愛らしい頬をした手乗りマスコットがいた。


「グッジョブご都合主義!」

「カワイイ! 契約して!」

「キャリー、マスターボールを使うんだ!」

「あるかぁ!」

『いいか? もうお前らは喋んな。口を開くな。目も閉じてろ。意識も閉じてろ。目覚めんな、永久に』

『それ消えろと同義語やん!』

『水の、それは出来ない相談だ』

『アタシが悪いっていうのぉ!?』

『話が進まないから、一度落ち着いたらぁ~?』


 驚いたことに白い髪の青年がまともなことを言った。

 それもそうだということで、二人と六体はひとまずキャロラインの私室へ移った。





「で、マジで精霊さんですか?」


 落ち着くには甘いものだとキャロラインは常備してあるお菓子ストックを開き、紅茶を淹れた。青年たちは全員小さくなって、人形用のティーセットで飲んでいる。


『如何にも』

「…………多くない?」


 魔法書を読んだ記憶では、精霊召喚は一体しか喚べない筈だ。


『それは召喚者殿の適性じゃのぅ』

『初めてだよね~、一人の人間が全属性の適性を持っていて、しかもボクたち王を喚べるなんてさぁ~』

「「………王?」」

『それだけ精霊と合うっつーことなんだろ、こんなガキンチョがなぁ』

『あとは、魔力だな』

『契約前は契約後より喚び出しの魔力が少なくてええって言うても、その歳でわいらを喚べるのはえらいもんやで』

「似非関西弁!?」

「ツッコミどころが過多すぎて、何からツッコめばいいのかわかんねぇ!!」


 聞きなれない単語に顔を引きつらせている間も、精霊たちは待ったなしだ。

 キャロラインとウェルスは一口サイズにクッキーを割った。


「とりあえず、王って何?」

「チートの予感がパネェな」

『もぐもぐもぐ…我らは精霊の王である』

『わいらはもぐ…眷族ふぇんそくを統べ、ゴクン、庇護するんがお役目』

『もぐ…王とはそれ即ち、始まりにして眷族の中で最も強き者もぐもぐ』

『儂ら王を喚んだ初めての召喚者よ』

『キミは何を望む?』

『もぐもぐもぐもぐもぐもぐ』


「とりあえず契約を望む。そんで全員そのままでお願いします」


 ぶっちゃけ、キャロラインは精霊を癒やし要員としか考えてなかった。


『小さいまま…?』

『この姿がよいのか?』

『大きいほうが人好きするもんかと思ってたわ』

『過去に眷属が契約した人間は、大きい姿の眷属ほど大層気に入られておったしな』


「その姿が!!!良いんです!!!!」


 机ダンの正しい使い方。


『お、おぅ…』

『そんな力まんでんも…』

『……ふっ』

『くくくっ、はっはっはっ!』

『ふふふ、可愛らしい子だねぇ』

『もぐもぐ…あら、光のが眷属以外を可愛いなんて、今頃向こうは時空歪んでるんじゃない?』

『火の、口元汚れておるぞ』

『いやん』

『気持ち悪!』

『あ゛ぁん?!』


「カワイイ…」

「キャリー正気か」

「ちっちゃい生き物がわちわちしてる…ぴょこぴょこ動いてる…カワイイ……」

「水の精霊さんが結界張ってくれてるから無事なだけで、えっぐいバトルしてっけどそこは触れないんだな、りょ」


 水の向こうで風と火が天変地異かと見紛うほど暴れ狂っていたが、カワイイの前では特段気にすることでもなかった。


「是非契約していただきたいんですが、どうですか!」

『わいはかまへんで〜』

『我も構わぬ。人間の儚き時に付き合うくらい、大した手間ではない』

『ボクも良いよ〜』

『ま、俺も良いか。どうせ暇だし、コイツらから目ぇ離したら人間滅びそうだしな』

『うふっ、ハジメテが可愛い女の子の契約者なんて嬉しいわ!』

『みな諾じゃな』


 めっちゃヤバ気な存在の割にノリ軽いなーと思ったのはウェルスの秘密である。隣の婚約者は飛び上がって喜んでいる。可愛いなおい。


『召喚者殿が我らの名を呼べば、契約は成される』

「名前? あ、そうだ、名乗ってなかったね」

「それどころじゃなくてな」


 契約をしていない段階で願いを叶え小さくなってくれた心優しき精霊たちに、二人は佇まいを直し、破顔する。


「私はキャロライン・ティモールと言います」

「俺はキャリーの婚約者、ウェルス・マーキュリだ」


 どんな姿をとろうと世界の始まりに起源する者たちは、真摯であろうとする童の笑顔に絆される。


『よかろう、我らを召喚せし才ある者よ』

『我らとの繋がりを望む者よ』

『我らを欲する者よ』

『我らに及ばぬ弱き者よ』

『我ら精霊の王がお主に力を貸そう』

『我らと契約せんとするならば、名を呼ぶが良い』






『『『『『『 我が名は─── 』』』』』』







 これが、前代未聞、前人未到の、精霊王召喚。

 今までどれほど人間と友好関係を結ぼうとも精霊たちが口を噤み、誰も知ることのなかった存在。

 そればかりか、六体もの精霊を喚び寄せるという複数召喚。



 今までの常識を徹底的に覆した、精霊王たちと一人の少女が契約を結んだ日の話である。





「精霊王、ゲットだぜ!」

「よっ、永遠の10歳児!」

「博士、最初のポ○モンちょうだい」

「もう伝説っぽいの持ってんじゃん!」

「てか、歳でいえば、し○ちゃんじゃない?」

「永遠の5歳児な」

「ドキがムネムネぇ〜〜」


『契約者殿たちは誠に楽しそうじゃの』

『おもろい子らやなぁ』

『それにしても、人間の食べ物なんて初めて摂取したけど、とっても良いわね!』

『うむ、美味、とはこうものなのだな』

「ふふふ~私のお気に入りおつやストックですからね、厳選してありますよ!」

「精霊は普段なに食べてんの?」

『ボクらは食べるなんて行為しないよ~』

『俺らは魔力がかた成してっからな、人間みたいに生命維持に栄養摂取は必要ねぇんだ』

『人間と契約した眷属を通して、食事というものは理解しておるぞ』

「食べないの!?」

「魔力の塊みたいな感じか?」

「これは、この子たちに美味しいものを沢山教えて食べさせるのが私の使命、ってやつでは…!?」

「キャリーお前天才か…!? それだわ!!!」


『…人の子って可愛いわねぇ』

『美味を教えてくれるのか、…ふ、楽しみだ』

『あっはっは、使命やて!』

『初めての契約者にしては、当たりなんじゃね? なあ光の」

『そうだね〜、心根から晴れ晴れとしていて、…とても、眩しい』

『良き良き。この子の短き生、どういう道を歩むのか、楽しみじゃな!』



 とある貴族屋敷の、とある令嬢の部屋での話。



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― 新着の感想 ―
[一言] 好きです( ˙-˙ ) ほんと好きです( ˙-˙ ) 続きをお待ちしております(*´꒳`*) …初めてなんで色々と間違ってたらすみません(´・ω・`)
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