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第16話 学園祭〜体育の部4日目〜

 体育の部もラスト。

 個人戦の本戦が始まります。


「個人戦は中等部と高等部、同じ闘技場でやるんだっけ?」

「うん」


 隣に座っているのは婚約者殿。

 父様は仕事をサボって来ようとしてましたが、馬車で迎えに来た宰相さんに攫われて行きました。いってらっしゃい。

 ちなみに、一緒に父様を見送ったウェルはニヤニヤとイイ笑顔を浮かべていました。


「中等部からやって、次が高等部だね」

「高等部は分かんねーけど、中等部はどうせロコロの優勝だろ?」


 昨日買ったシルバーチェーンに指を絡め遊びながら、ウェルがそう言いました。


「ダークホースがいるかもしれないよ?」

「でも姉上、同世代でロコロに勝てる者がいたら、その者は既に目をかけられていると思いますよ?」

「だろうなぁ。とりあえず、俺は知んねぇぜ」

「分かってますよ、意外性を期待して言ってみただけですー」


 サイラスとその父の言葉に、ぶうたれるように返しました。

 個人戦が同じ闘技場でする理由は、この方。

 陛下です。王族です。

 王族の方がわざわざ移動しなくてもいいように、毎年手配されている訳です。


「にしても、昨日キャロラインが珍しく戦ってたんだろ?観たかったわー」


 絶対面白かっただろうに、と陛下が残念そうに言いました。

 まぁ、貴方の息子さんが大変愉快なことにはなっていましたよ。


「決勝戦が終わったあとで観に行きましたが、兄がハゲていましたよ」

「ハゲ!?」

「見事にハゲていらっしゃいましたわ」

「くっそ、何があったんだ。めちゃくちゃ気になるじゃねーか」


 今のところ呪いは継続中なので、行けば見れますよ。髪で隠しているとは思いますけど。


「あ、そろそろですよ陛下」

「あん?もう時間か?」


 陛下はこの貴賓室のバルコニーで椅子に座って、挨拶をし、試合中はずっと観戦していなければいけません。

 つまり、公務の一つですね。

 一般市民からしてみれば、王を間近で見られる貴重な機会です。貴族の子弟たちも陛下に自分の力を見てもらえるまたとない好機ですので、本戦へ残ろうとする方は多いですね。


「はぁ、んじゃ行ってくるわ〜」

「はーい。団長さんも護衛頑張って下さ〜い」

「団長さん、ファイト〜」


 ウェルと一緒に砕けた応援を送ったのは、壁際に立っている護衛さんたちの中の1人。陛下の背後に立つ男性。

 現ラリアンシル国騎士団の団長さんです。

 口髭を蓄えたキリッとしているナイスミドルなおじさまで、陛下からも部下からも信頼の厚い質実剛健な方です。


「……貴様らのその言葉遣いはいつになったら治るんだ」

「「来世」」

「馬鹿にしているだろう、このクソガキ共!!!」

「え、まさか…」

「そんな、団長さん…」

「「よく分かったね(な)」」

「ぐぁあああああッッ!!!」


 ただし、私たちの前では格好の弄られ役です(笑)

 おちょくると打てば響くようなリアクションが返ってくるのが楽しくて、ついつい人目のあるところでもやってしまいます。

 小さい頃は子どもだから、という免罪符を掲げて色々やらかしたものです。

 青筋立てて鬼の形相で追いかけてくる団長さんとの鬼ごっこはとても楽しかった。

 ま、今も同じようなものなんですがね。


「やっぱ団長さんは面白ぇな」

「弄り甲斐のある人だよね」

「仕事中の騎士団長の表情をあそこまで豊かに出来る姉上たちは、やっぱり凄いです!」

「流石お姉様ですわ!」


 弟妹分の感覚のズレを華麗にスルーしながら、手元の皿にケーキを乗せます。

 テーブルには陛下の計らいで色鮮やかな菓子が並べられており、自由に食べていいと許可を貰いました。大好きです、陛下!


「♪」

「キャリーはホント甘いもん好きだよな、飽きねぇ?」

「全然」

「お姉様!こちらのお菓子、とても美味しいですわ!」

「え、どれどれ?」

「他国からの輸入品ですね」

「あ、本当だ、これ美味しい。帰りに買いに行こう」

「俺も行くわ」


 帰りの予定を立てながら、3人とティータイムを楽しみます。


「キリ様、そろそろハイネルの次男殿の試合ですよ」

「え!大変!ありがとうございます!」

「いえ、…………キリ様にお礼言われると、違和感が凄い…」


 失礼な。

 今この部屋にいる騎士さんたちは全員が陛下付きの騎士で、私=キリだと知っている方々です。

 ウェルもたまに王城にある騎士の訓練場に出入りしているので彼らとは知り合いです。

 だから、ここに居られるんですがね。

 これが他の目があるところでしたら、私たち陛下やサイラスやメルと一緒に居ませんからね。

 それにしても…。

 確かにキリは王にも偉そうな傍若無人俺様キャラでやってますが、元は私ですし、今はキリじゃないんですからお礼くらい言いますよ。


「ほう?俺が礼を言ったら、そんなに変なのか?……喧嘩・決闘なら絶賛高価買取中だ、買ってやろう」

「すみませんでしたぁぁぁあああああっっ!!!!」


 魔力で声帯をイジってキリの声でそう言うと、騎士が土下座しました。


「俺なら容赦なくブチのめしているところだが……私は優しいので許してあげましょう。ロコちゃんの応援に行かなければ」

「ロコロの応援があるからそれどころじゃない、どーでもいいが本音だろ」

「勿論」

「つか、キャリーの見た目で低いイケボとか超違和感。気持ち悪ぃわ」


 それもそうですね。

 私、どこにでもいるような平凡で普通極まりない見た目ですから。


「姉上は優しいですね」

「キリ様の時も優しいですわよ?」


「「「(それは殿下たちにだけですッッ!!!)」」」


 さて、限定的な不可視の魔法を自分含めた4人にかけ、バルコニーへと出ます。

 陛下が偉そうに座っている椅子に凭れながら、リングへと目をやります。


「お前な、人が座ってるとこに凭れてくるってどーいうことだ」

「何を今更。キリの時なんて常じゃないですか」


 ま、普通だったら不敬罪どころじゃなくて即刻処刑台行きですけど、今他の人には見えてませんからねー。

 見られなきゃいいんです。

 見えている人が黙ってりゃいいんです。


 キィヤァァァァァァッッッ


 最早これは弟分が登場した合図ですね、うるさっ。


「ロコちゃーん!!頑張れーー!!!」


 流石に魔力コントロールがリングにいるロコちゃんまで届きませんので、私の声は聞こえていないと思いますが、ロコちゃんはこちらを振り向いて、陛下に礼をし、そして何もない筈(・・・・・)の陛下の隣へ視線を向けて、ニコッと笑いました。

 っっっ!!!

 っ本当に、うちの弟分カワイ過ぎるでしょう!!!


「流石ロコロですね。魔力も気配もない筈なのに、完璧に捉えましたよ」

「お姉様ならロコロ様を応援しないなんてあり得ませんものね!」

「それで陛下の椅子の手すりにいるって当たりつけられるとこが、キャリーの弟分だな。よく分かってら」


 試合が始まりました。

 ロコちゃんったら、今までずっと瞬殺ですからね。よく見ておかないとロコちゃんの活躍が見れません。

 と、言ってる側から相手の魔法を躱して懐に入り、剣をぶっ叩いて場外。終わりました。早!


「一瞬だな、アイツ実力隠す気なくねぇか?」

「張り切ってるんじゃないですか?機嫌良さそうだし、今日ご隠居も来てるでしょう?」

「……何で知ってんだよ。俺言ってねぇよな?」

「それに、ロコちゃんはまだ手加減してますよ。獲物もいつものと違うし薬も使ってないし、人の目に映る程度のスピードで動いてますしね」

「ハイネル家前当主っつってもバリバリの現役だぞ?何で察知出来てんだお前は」


 陛下が何か言ってますね。聞き流しておきましょう。

 それにしても、やっぱりロコちゃんはカワイイ。

 興に乗ってきました、もっとカワイイ子を増やしましょう♪


「【召喚・ノン】」

『ほ?何じゃ。何ぞあったのかの、キリよ』


 茶髪で右目が隠れるように流れてる前髪に、同色の瞳。

 手の平サイズのカワイイ子。

 土の精霊、ノンちゃんです!


「別に何もないよー、ただ会いたくなっただけ」

『ほお。奇遇じゃな、ちょうど儂もキリに逢いたいと思うておったとこじゃ』

「キャー!以心伝心ー!」

「おいこら」


 ノンちゃんと喋っていたら、ぐいっと腕の中に収められました。


「ん?何?ウェル」

「いちゃいちゃすんな」

「ウェルのヤキモチやきー、いつものことじゃない」

「そんでいつも妬かされる俺の身にもなれ。ノンも、悪ノリすんな」

『ほっほっほっ、若者をからかうのは年寄りの特権じゃ』

「見た目ちっこくて若いくせに!」


 ウェルったら、本当カワイイですね。カワイイって言ったら怒るから言いませんけど。


「お姉様、楽しそうですわね」

「ウェルさん…、頑張って下さい!」

「あー、俺も会いたくなってきた…早く帰りてぇ」

「本日はこれで公務は終了と聞いています。それまでの辛抱です」


 そんな風にノンちゃんと(じゃ)れたりウェルをからかったりサイラスとメルと甘味を頂いたりロコちゃんを応援している内に中等部決勝戦。

 展開早いと云うなかれ。

 特筆することがなかったんです。中等部の子なんてサイラスたちくらいしか知らないし、ロコちゃんは瞬殺で変わり映えしなかったし。


「あれ。静かだと思ったら、ピーター出てたんだ」

「本当ですわね。勝ち上がっていたんですのねぇ」

「ちょっとは気にしてあげなよ、従者兼護衛でしょうに」

「だって、姉上を蔑ろにするんですよ。嫌いです」

「お姉様をたかが男爵令嬢だと見下しますのよ。嫌いですわ」


 決勝戦、ロコちゃんのお相手はサイラスの従者くんこと、ピーター・ブライルくん。

 褐色の髪と蜜柑色の瞳の、中等部3年生です。

 彼は何というか、貴族らしい貴族です。

 最高位の貴族と更にその上の王族が、底辺貴族令嬢の私を慕うのが我慢ならないらしいんです。

 しかも私は平然と砕けた話し方ですから、余計癪に障るんでしょうね。

 それを面白がって、わざと彼の目の前でサイラスたちを構い倒す私も私ですが。


『ほお?そんな者がおるのかの?』

「はい、土の精霊様」

「私たちが姉上と仲良くするのが気に食わないって言うんです」


 しかし、サイラスたちは私を目の敵にするピーターくんが面白くないようで。

 思いっきり嫌ってます。

 それでも彼のサイラスへの忠誠心は褪せること知りません。頑張れピーターくん。

 ぶっちゃけ私は彼が弟妹分たちに嫌われようが好かれようが興味ないのでその辺は放置です。


「ノンは知んなかったか。まぁ割と最近だしな、ピーターと会ったのは」

「そうだね、2年前くらいかな?確か、サイラスとメルを呼んで城下でシルクたちと遊んでたんだよ」

「そしたらサイラスのお忍びを尾けてたピーターがサイラスの扱いに悲鳴上げたんだよな」


 今でも鮮明にリピート出来ますよ。




ーーぬきょぉおおおおおおおおお!?!?!




「実に愉快な悲鳴でした」

「新種のモンスターかと思ったわ」


 余談ですが。

 父様がその気になれば爵位はサクッと上がるんです。

 父様ったら有能(ハイスペック)だから。重要ポストに就けたい上層部と、仕事が少なくて絶対定時に帰れる現在の寂れた片隅部署から動かない父様の攻防戦は、いっそ面白いですよ。いい大人が何やってるんですか、ってなります。

 閑話休題。


「同世代にロコロがいなけりゃ、ピーターもイイトコ行けるんだろうけどなー」

「ロコちゃんと張り合っちゃダメだよね〜」


 年が近く、サイラスたちと私経由で知り合い、それでいて仲が良いので、ピーターくんはロコちゃんのことをライバル視しているんです。無謀。


「何だっけ?最近は、うちを敵視してる国の城に悠々と侵入して情報収集して来たんだったか?」

「そうそう。ほら、ちょっと前に闇属性を習ってたじゃん?中級までマスターしたみたいでさ。頑張れば詠唱ありだけど上級も使えるらしいし。王の寝室に入ってやった!って得意気に教えてくれたよ。超カワイかった」

「流石だな。もう一流じゃん」

「え?ロコロって闇属性使えるんですか?」

『金の弟御は知らなんだかの?水の弟御は、闇のに魔法の教えを請うておるのじゃよ』

「闇の精霊様にですか!それは適任ですわね!」

「……一昨日、風の精霊殿の特訓の話を聞いて、ロコロがゲンナリした様子だったのはそういう理由ですか」


 自由勝手に話していると、試合が始まりました。

 ロコちゃんは今まで通り一瞬でピーターくんの懐へと近付き、剣を振りました。

 それに反応したピーターくんがロコちゃんの剣を衝撃波で弾き、攻撃魔法を放ちました。

 しかし、既にそこにはロコちゃんはおらず魔法はリングへ着弾します。

 そのことに気付いたピーターくんは背後を振り返りましたが、一歩遅く。

 身体強化したロコちゃんが左足を振り抜きました。

 防御しきれなかったピーターくんは直撃。綺麗に宙へ飛ばされました。


「うわー痛そー」

「意識軽く飛んでるだろーな」


 他の人ならこのまま場外で終わりそうですが、ロコちゃんは甘くありません。

 もしもを考えて、確実に仕留めるのを信条としていますからね。

 宙を飛んでいるピーターくんへ向かって、追撃を仕掛けます。

 障壁を横にいくつか展開し、それを足場に空を駆け上がって行きます。傍目から見たらスカイウォークですよ。実況が叫んでいます。

 そしてピーターくんの腹を目掛けて、一閃。

 重力に引かれるまま、リングへと落ちていきます。


「ありゃ鳩尾入ったな」

「容赦ないねー」


 何のフォローもなくリングに落ちたピーターくんは当然重傷。大丈夫?死んでない?

 すぐさま勝利宣言が響き、保健委員がピーターくんを引きずって行きました。

 ……。

 ……別に魔法で追撃すればいいのに、何故わざわざ剣で直接追撃したんでしょう?

 変なロコちゃん。


 と、中等部の個人戦が予想通りに終わったら、お次は高等部。


「表彰式は中高まとめて行いますのでご了承下さい。それでは!高等部個人戦の本戦を行いたいと思います!」


 あ、司会兼実況が変わりましたね。

 何やら昨日より大人しい……、陛下がいるからですかね?


「その前にお知らせです。本戦に出場予定のデュランダル選手ですが、体調不良により欠席だそうです。ということで事前に発表されていたトーナメント表で、デュランダル選手と当たっていたリェチル選手は不戦勝となります!」


 あらブロウ、ラッキーですね。


「サボりか…。精神的被害が余程甚大だったんだな、ウケる」

「チッ」

「父上、舌打ちはやめてください」

「軟弱ですわね」


 ん?


「ウェルたち、欠席の人のこと知ってるの?」

「「「…………」」」

「お前はホントに清々しいな」


 褒められました?


「ほれ、俺様バ会長未来真っ暗王太子サマだ」

「…ああ!」


 そういえば、そんな名前だったような?


「いやですね、呆けかしら?」

「覚える気ないだけだろ」

「顔覚えてんならいいんじゃねーの」

「そうですね。公の場で言わなければいいと思います」

「それ以外でしたら、わたくしたちでどうにか(・・・・)出来ますもの!」


 ……頼もしく育ったものです。


『何じゃ?キリが覚える気もない者と、おぬしらは知り合いなのかの?』

「恥ずかしながら愚兄です」

「愚息です」

「従兄ですの」

『ほうほう、血筋の者か。そんな顔をせずとも()い良い、所詮は人間じゃ』


 ノンちゃんは厳しいですねぇ。

 ん?


「ロコちゃん、何でそんなとこに居るの?早く入っておいでよ」

「お前な、一応俺は国のトップだぞ。イコールこの部屋のトップ。許可取れよ、俺に」

「えっ、許可しないつもりですか?久々に燃やしますよ?」

「止めんかクソガキ!!こんな大衆の目がある中で陛下が突然燃えたら隠蔽出来んだろうがッ!」


 団長さんがそう叫びますが、…団長さん、私が音遮断していなかったら大変なことになってますよ。

 あと、音は遮断出来ても表情までは誤魔化せないんで、団長さん何もないところに怒りの形相を向けてることになってますよ。気付いて。

 陛下を見習って下さい。威厳ある表情を変えることなく、最低限の口の動きで喋ってますよ。


「つまり隠蔽出来たらいいと? オーケー、デュオを喚びましょう。デュオなら出来る」

「ダニエラ、お前だけは俺の味方だと思ってたのに…っ」

「陛下っ、違います!誤解です!」

「団長さん、忠義者のフリをした腹黒だったのねっ」

「黙れクソガキャアアアアッッ!!!」

「ロコロ、これ終わんねぇ流れだからさっさと入って来い」

「…うん、そうするよ」


 そう言って、貴賓室の天井からスルリと降りてきたロコちゃん。


「ロコちゃん、おめでとう!頑張ったね!」


 優勝したんですから、目一杯褒めます。

 ぎゅうっと抱きついて、頭をわしわしと撫でました。


「…ありがと」


 ふにゃりと照れ臭そうに笑ったロコちゃんマジ天使。

 やはり、私の死因は失血死で決まりそうです。




 本戦に進んでいたのは、ブロウ、副会長さん、その他攻略キャラとか。

 顔がいいの同士で戦うので場内からは黄色い悲鳴が鳴り止みません。遮断遮断。


「なー」

「はい」

「そろそろ飽きてきたんだけど、帰っていい?」

「陛下、公務です。途中退席などすれば民にいらぬ誤解を与えます」


「"三頭の騎士"と"隻眼の龍"、"白黒魔法師(モノクロマジャン)"を生贄に!」

「なっ、そのカードは!」

「激レアの!?」

「出でよ!"戦神アレスティアーノ"ッ!!」


「和む〜、超カワイイー」

「小動物がじゃれあってる可愛さがあるよな」

『儂からすれば、おぬしらも(めご)いのじゃがのぅ』


 飽きた子ども組は部屋に戻って遊ぶことにしました。決勝になったら呼んで下さい。ブロウなら決勝に進むと信じてますよ。


「いいなぁ、俺も遊びてぇ。せっかくデッキ強化したのに…」

「陛下、諦めください」


 大人はお仕事頑張って下さい。




「いよいよ体育の部、最後を飾る高等部個人戦の決勝戦だぁぁぁ!」


 その声を合図にテーブルに広げていたカードを片付け始めます。


「キャリー、マジ強過ぎ。また負けた」

「まだまだだね」

「雑誌一緒だけど違う作品!」

「どうやったら姉上に勝てるんでしょう?」

「七つの大罪召喚は卑怯だ」

「あのマジックカードも狡いですわ。ノーコストで場に手札からも山札からも墓地からも自由に三体召喚出来るなんて」


 製作者をナメちゃいけません。


「やっと決勝かよ。サクッとロコロみてぇに瞬殺してけっつーんだよなー」

「無茶言わないであげて下さいよ陛下ー。ロコロは規格外なんすから、比べたら可哀想っすよ」

「ところで決勝、誰が残ったんです?」


 再び陛下の椅子に凭れかかってそう尋ねました。


「リェチルんとこのと、ベルチんとこのだ」

「ブロッサムくんと副会長さんか。昨日と変わり映えしねぇなー」

「どっちが勝つかな〜」

「リェチル様は精霊魔法師でしたわよね?本日はどれほど精霊様を召喚していますの?」

「割としてたぞ。よく魔力持つよな」

「でもそれならリェチル先輩も彼の精霊様も、そろそろ限界が近いのでは?」

「そうだね。ハディくんは最上級だから魔力の回復は早いと思うけど限度があるし、ブロウもブロウで体力はそんな簡単に回復しないしね」

『ほっほっほっ、水のの眷属か。ちょいと見たことのある魔力じゃの』

「え、ノンちゃん、ハディくんのこと見たことあるの? うわぁお、ハディくんってば意外と凄かったのね」


 ある意味予想通りの答えに、全員で好き勝手喋ります。



「双方、構え!ーー開始ッッ!!!」



 さて、昨日勝てたのはチーム戦で、私が色々やって疲弊していたからで。

 実力的には副会長さんの方が上なんですが…。

 果たして、ブロウは勝てますかね?

ロコロがピーターに直接剣を叩き込んだ訳。


答え・(キャリーを敵視しやがって)嫌いだから。


簡潔です。

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