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第13話 学園祭〜体育の部1日目〜

新キャラ1名。

 本日、晴天。

 気温も良好。

 まさに闘い日和。

 闘技場の観客席には高等部の生徒たち、リングには学園長と先生方。

 拡声の魔道具を持った学園長が手を上げ、生徒たちが待ち望んだ宣誓を告げました。


「――これより!学園祭を開始する!!」


 ウォォォオオオオッッ


 学園祭、体育の部。

 チーム戦トーナメント予選、開始!




「凄い熱気…」

「みんな気合い入ってるね〜」


 熱気に包まれる闘技場の観客席は、生徒たちがそれぞれ戦いやすい服装で予選に臨んでいます。

 体育の部では、体育着以外の服装も認められており、基本、防御力を高める鎧や装飾品型の魔道具を身に付けています。

 極まれに華美な服装の方もいるらしいですが、自己責任です。


「選手の怪我は自分たちで治療せよ。こちらが危険だと判断した場合だけ、各闘技場の控え室に設置された治療室に運ばれることを覚えておけ」

「出張保健室よ〜ん。ミンチ以外なら保健医のアタシがキッチリ治してアゲルから、正々堂々ヤり合いなさぁい?」

「それではトーナメントを発表する!事前にチームに配られた番号と照らし合わせて、各自確かめよ!尚、Bブロックの者は第2闘技場に移動するように!20分後に一組目を開始する!」


 フォン…と、魔道具でスクリーンのようにトーナメント表が表示されました。

 予選ではA、Bブロックに分かれ、それぞれの上位6チームが本戦に進めます。


「何番だっけ〜?」

「152番」

「どこだ!わかんねぇ!」

「……あっ、ありました。あそこに…すみません僕なんかが見つけてすみません!」

「ホントだ、Bブロックの最後の方だね」


 では移動ですね。

 私たちは今いる第1闘技場に隣接されている第2闘技場へと向かいます。

 その途中、私の携帯が鳴りました。


「はい」

〈もうトーナメント表は出ましたか?〉

「出たよ。最後の方。そっちは?」

〈Aの2試合目です〉

「早いね。丁度、闘技場を出たとこだし、見に行くよ」

〈本当ですか!?頑張りますね!〉

「うん。頑張れ」


 念話を切って、ブロウたちに断りを入れました。


「ごめん。ちょっと中等部の試合を観戦してきていいかな?」

「中等部、ですか?キャリーさん兄弟いましたっけ…すみません詮索なんかしてすみません!」

「弟分たちがいるんだよ。随分張り切ってるみたいだから、その応援」

「キャリーって何気に顔広ぇよな!普段、あんなにも人に興味なさそうなのにさ!」

「アハハハ…」


 サルくん、地味に鋭いですね。


「大丈夫だよ〜。敵情視察は僕らがやっとくし〜」

「俺らに任せて。行っておいで」


 チームメンバーの了承を得て、私は中等部の試合が行われている第3闘技場へと向かいました。

 闘技場は全部で5つあり、出番がまだの生徒は観戦の行き来が自由になっています。

 第3闘技場では丁度一組目が終わったところでした。


「危ない、遅れるとこだった」


 私はリングがよく見える席に座り、次のチームの登場を待ちました。




「お姉様ぁー!」

「姉上!見てくれてましたか!?」

「はいはい。見てたけど、外で姉呼びは止めようか?」


 念のため、人気のない場所に移っておいて良かったです。

 先程の試合で張り切り過ぎて相手チームを瞬殺した第2王子と公爵令嬢の突進を受け止めながら、心の中で自分の判断を褒めました。

 そして、2人の後ろに付いて来てた子に話しかけてます。


「ロコちゃんも一緒のチームだったんだね」

「殿下に誘われてさ」

「ロコちゃん強いもんねー」


 ロコロ・ハイネル。

 ハイネル侯爵家の次男で、現在12歳の中等部1年生です。

 あだ名はロコちゃん。

 サイラスは正統派王子系美少年ですが、ロコちゃんは妖艶系美少女に見える美少年です。

 色素の薄い水色の髪はハーフアップにし、紫がかった青の瞳に流し目をされたら一発KO!

 中1でこの色気とは…、末恐ろしい子です。

 声変わりがまだきておらず、甘い高い声がカワイイです。


「ロコロ様は年下ですが、わたくしたちよりもお強いですからお誘いさせていただきましたの!」

「ロコロは学年問わず引く手数多で、勧誘大変だったんですよ」

「そんなことないですよ。殿下たちの方がたくさん勧誘されてたじゃないですか」


 サイラスたちの実技の成績は平均よりは良いですが、物凄く良いという訳ではありません。


「それは、僕らと組んで良いとこ見せたら取り立てて貰えるかもっていう下心があるからだよ。ロコロだって分かっているでしょ?」


 そういうことです。

 王太子でなくとも直系の王族には違いありませんしね。


「まぁ、そうですね。それは否定しませんが、その理由(シタゴコロ)ばかりじゃないと思いますよ」

「「え?」」


 ロコちゃんの言葉に、きょとんと首を傾げる2人に苦笑が零れました。


「サイラスもメルも見目麗しいからねぇ」

「学園内だと、身分は関係なく勉学に励めって言葉を良いように解釈した猛者がたまにいるよ」

「それは凄いね」


 まさに勇者という称号が相応しい行為です。


「何なのですか?」

「気にしなくていいよ、気に留めることすら馬鹿馬鹿しいから」

「その通りです」

「むぅ…。ロコロ様だけお姉様と通じ合っているなんて狡いですわ!」

「おーい、メル?そこなの?」

「フッ…。たとえ殿下たち相手でも、キャリーの弟ポジションは譲りませんよ!!」

「ロコちゃんまで…」


 はい。

 あだ名で呼んでいる時点でお分かりかもしれませんが、ロコちゃんも私のカワイイ弟分です。

 経緯は省きますが、サイラスたちより前に弟分だったことにより、私の1番の弟分らしいです。カワイイけど、そんな張り合うことでしょうか?

 ご実家のハイネル家とも仲良くさせて貰っています。

 ハイネル家…、覚えておいででしょうか?

 爽やかの実家、王家直属暗殺一家です。

 ロコちゃんは爽やかの異母弟にあたり、爽やかよりも全ての意味で有望視されている一流の暗殺者(アサシン)です。


「あの脳味噌クソお花畑…、早く出てけばいいのに」


 最早ロコちゃんの口癖となっている、このセリフ。

 ロコちゃんは異母兄が大嫌いです。


「ちゃんと知りもしないで…、知ろうともしないで上辺だけを見て、甘ったれたガキみたいなことばかりを口走る。あんなクソと血が繋がってるなんて反吐が出るね」


 私はカワイイ弟分にこんなことを言わせる爽やかが嫌いです。

 甘いものと菓子作りが好きな、甘えん坊なんですよ?

 許せませんよね、極刑ものですよ全く。


「そういや、キャリーのチームメンバーってどんな奴?」

「似非チャラ男とメガネとサルと気弱」

「何それ」


 簡潔に表すとしたら、これで間違いありません。


「…ん?あれ?よく考えたら、私、紅一点?うわ、気付かなかった…。目立つかな?」

「はっ?なに、メンバー全員男なわけ?」

「うん」


 ブロウ以外はフツメンですけど、そのブロウが目立つんですよね。

 ……友人になった時点で目立たないのは無理ですかね。諦めきれませんが。


「………」

「お姉様の試合はいつ頃なのですか?」

「もう少ししたらかな」

「私たちはまたこれから試合ですが、姉上はどうされます?」


 もう一試合くらい見ていきたいですけど、時間ギリギリですしねぇ。


「キャリーはチームに戻りなよ。試合が終わったら、そっち見に行くから」

「え、何で?」

「チームの奴らが、キャリーに相応しいか見極めないとね」

「えぇ?みんな良い子だから平気だよ?」

「キャリーは内側に入れた奴にはとことん甘いから信用ならない」


 確かにそうですが、内側に入れるまでに時間がかかりますよ?


「それに…」

「それに?」

「キャリーの応援も、したいし」


 ズキューン!!

 頬を赤らめて、拗ねるように唇を尖らせながらの上目遣い、って狙ってるでしょう!?

 そんな誘惑(ハニートラップ)、余所で使ったらお姉ちゃん怒りますからね!


「キャリーってば、いつも目立つからって、人目のあるところじゃ一緒に居てくれないじゃん。だから今日くらい、大勢に紛れて応援するくらい、いいでしょ?」

「くっ!」


 いけない。

 このままでは、負ける…!


「殿下たちも行きたいですよね、キャリーの応援」

「行きたい!」

「はい!」


「……………………」


 弟妹分たちのキラキラ輝く瞳に敗北しました。




「あっ、キャリーちゃん、おかえり〜」

「ただいま」

「もうそろそろだから、念話しようかって言ってたところだよ〜」


 えーと、今の試合は…、私たちの2つ前ですか。危ないところでした。


「にしても、キャリーさぁ。マジでその格好、大丈夫なわけ?」

「防御力はあるよ?」

「それは分かってるんだけど、やっぱり見た目がね」

「浮いてますよね…すみません僕なんかが人に浮いているとか言ってすみません!」

「そうだね〜。みんな何かしらの防具をつけてる中で、普通のシャツとズボンだも〜ん」


 私の格好は授業と変わりません。

 防具も魔導具も全くなしで、ハッキリ言って浮いています。自覚アリです。


「でもそれ確かに性能いいよね〜。僕も欲し〜。買ったの〜?」

「さあ?貰い物だから売り物かは知らないけど、ヒクモ使ってるらしいし、防護魔法もかかってるから、そこそこ値は張ると思うよ」

「ひ、ヒクモですか!?凄いです!ハッ、すみません僕なんかが食いついてすみません!」

「ヒクモに防護魔法って…、やっぱり貴族はおかしいね」

「いや、僕の家でもこんなの滅多に手に入れれないよ〜?」

「あ!試合終わったぜ!」

「ホントだ。行こうか」


 雑談を交わし、いよいよ一回戦です。


「32番チームと152番チーム、揃っているな?」

「「はい」」


 一回戦の相手は全員3年生ですか。

 男1人に女4人…、ハーレム?


「右から2番目の子、めっちゃ可愛くね!?」

「右端だね」

「………左端が可愛いと思いますすみません!!」

「え〜?全員可愛いよ〜」

「私は左から2番目がイイと思う」


 全員で批評会。

 右から、エロカワ系、アイドル系、男、悪女系、清楚系の順です。

 ちなみに男は平凡です。少年漫画系の主人公か!


「鈍感男主人公はボコられて当然の存在であるby私!!」

「キャリーちゃん?」


 全員にきょとんとされました。

 くっ…。これがウェルなら絶対ノってきてくれるのに!

 今このチームと当たったことが惜しまれます。


「試合、始め!」


 審判の先生の合図と同時にリング内を魔法が飛び交いました。


「【水花球】!」

「【水球】と【水刃】で〜」


 清楚系の中級魔法をブロウが初級魔法で相殺して、水の刃で切り裂き。


「水よ、研ぎ澄まし、刃となれ!【水じ」

「おらぁ!【火侵爆】!」


 アイドル系の詠唱を遮って、サルくんが圧倒し。


「喰らいなさい、【水矢】」

「【土壁】」


 悪女系から迫る水の矢をメガネくんが単発の土の壁で防ぎ。


「うぉおおおっ!」

「【召喚・リンネ】」

『はいですぅ!』

「ファイト」

『あぅ、はいですぅ…【旋風】』


 恐らく魔法で強化した剣を握って叫びながら走ってくる男子生徒を、リンネが初級魔法で迎え撃ち。


「ウフフッ【水圧線】」

「ヒッ!?」

「【火燈蓮撃】!!危ないなぁ、スミー大丈夫かい?」


 戦闘があまり得意ではないスミーくんに向けて放たれたエロカワ系の中級魔法は、メガネくんの上級魔法に飲まれました。


「スミー、平気〜?【花水木】」


 ブロウが悪女系にトドメを差してから、スミーくんに駆け寄ります。

 これでリングに立っているのは5人。


「勝者、152番チーム!」


 弱かったですね。私は何もしていませんけど。

 全員無傷で終わりました。

 その後、2回戦3回戦4回戦〜とサクサクと勝ち進みました。


 途中。


「先輩ー!頑張れー!!」

「きゃあっ!風の精霊様、素敵ですわ!」

「先輩たち、男なら女性は死ぬ気で守りなよ!!」


 自分たちの試合を終わらせてきた弟妹分の応援が響き、闘技場内がざわめきました。

 王族に公爵に侯爵ですから。

 とても目立っていましたが、辛うじて私に注目が来ることは避けられたのでいいでしょう。

 何より、物凄くカワイかった!!

 めっちゃ必死に頑張って応援してくれてるんだもの!カワイ過ぎる!!

 試合中1人で悶えました。

 注目が3人のところにあったおかげで白い視線は免れましたが、……応援されるのも悪くありませんね。


 こうして、私たちのチームは順調に勝っていき、本戦へと駒を進めました。

 …………あれ?

 何故、私は目立って注目される本戦へと進んでいるんでしょう?


・ヒクモ

上位の魔法師や騎士が軍で出向いて、何とか捕獲出来る蜘蛛型の魔物。

吐き出される糸の強度がとんでもなく高くて防具に最適だが、総じて強くて凶暴な性格。

糸に絡まれば身動き出来ず終わり。身体はただの剣じゃ歯が立たないくらい硬い。

しかも絶命すると糸の強度が落ちるから、討伐じゃなく“捕獲”が絶対条件。

その条件と少な過ぎる繁殖数から、高級素材とされている。


魔法のふりがな

水花球すいかきゅう

火侵爆ひしんばく

火燈蓮撃かとうれんげき

花水木はなみずき


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