第11話 新学期
2学期になりました。
夏の長期休暇は、主にウェルや父様、サイラスたちと遊んで過ごしました。
ブロウたちとも遊びましたよ。勿論、カードで。
カードのイラストを描いていることを知られ興奮されましたが、私とウェルの店だと言うことはまだ知りません。自力で辿り着いて下さい。面白がった陛下たちが情報規制していますが。
校門から校舎への道を歩いていると、約1ヶ月ぶりの姿を発見しました。
「カルロさん!おはようございます!」
「やあ、おはよう、キャリーちゃん。久しぶりだね」
久々の麗しいお姿!
陽差し加減で銀にも見える白髪混じりの御髪も素敵です!
「休暇は楽しんだかい?」
「はい!とても楽しかったです!」
「それは良かった」
「旅行にも行ってきたんですよ」
「へぇ~。どこに行って来たの?」
「隣国の王都に。友人の住まいがありまして。これどうぞ!お土産です」
「いいのかい?」
「はい。奥様と是非」
「わぁ、ありがとう」
ぐはっ…!
その笑顔だけで報われます!
しばらくカルロさんと休暇中の出来事を話し合い、私は職員室に向かいました。
「失礼します」
「おぉ?おはようさん、ティモール。久しぶりだな。今日もこの時間か」
「おはようございます、アイスカ先生。これお土産です、良かったら先生方でどうぞ」
「うぉぉ!?これっ、超有名なパティスリーの!?しかも、このロゴ…本店!?」
「はい。そこの菓子折りです」
「ここの本店って、パティシエの気分で開けるから、めったに買えねぇって聞いてたけど…、よく買えたな!?マジでいいのか?」
「はい」
「よっしゃ!うわー、うまそー…」
「……先生方で食べて下さいね」
「うっ!わ、わかってんよ!」
どうだか。
「鍵、持っていきます」
「おーう。土産、サンキュなー」
ニカッと笑ってお礼を言うアイスカ先生は煌めかしかったです。
「キャリーちゃん、おはよぉ!」
「おはようございますすみません!」
「はよー」
「夏休みの最初に遊んだ以来だね」
私はいつもより早く図書室から出て教室に続く廊下を歩いていると、ブロウたちがやってきました。
「久しぶり。はい、お土産」
「え!どこか行って来たの?」
「婚約者と一緒に隣国に」
「婚約者さんと2人きりで旅行かい?」
「旅路はそうね」
「仲良いんだな!」
「うん。…どうしたの、スミーくん。お土産気に入らなかった?」
「ふぇ!?ちちち違いますすみません!ぇと、あの、その、ここここれって……ま、魔道具じゃ…?」
「うん」
ブロウたちのお土産はお菓子じゃなく実用重視。
魔道具店を経営している友人に良いものを見繕ってもらいました。
「こんな高いもの貰えません!!」
「そんな高くないよ?値切り交渉したし」
原価の半分です。友人は泣いてましたけど。それをウェルと一緒に指差して笑ってましたけど。
「本当にいいのかい?」
「どうぞ」
「うおー!スゲー!キャリー、サンキュー!」
「効果は同封されてる説明書に書いてあるから」
そろそろ予鈴がなるので、私は席に戻ると、ブロウたちもそれぞれの席とクラスに戻って行きました。
コツン、コツ…コツン
変わらない特徴的な足音が教室に近付いてきます。
そしてベルが鳴るとともに教室の扉が開きました。
ガラリ
「…ぉは…う…ござ…いま…す……」
「起立!礼!」
クラス委員が号令をかければ、全員が席を立ち、挨拶をします。
それに入学式の日と同じように挙動不審になるヘブン先生は、変わらないと言うのか成長がないと言うのか…。
HR後の始業式についての連絡事項と、始業式後のLHRについての説明をして、ヘブン先生は脱兎の如く教室を出て行きました。
ブロウたちと講堂へ行き、学園長の簡潔な挨拶を聞いて、始業式は終わりました。
そしてLHR。
「…学、園…祭の…出し……物、を考え…下さい………」
学園祭という単語に、教室が湧きました。
もうそんな時期ですか。
学園祭。
要は体育祭と文化祭を同じ期間にする、学園の催し物です。
準備期間と当日を合わせて、なんと21日間!およそ3週間かけて行われます。
まず、体育祭。
体育祭とは言っていますが、騎馬戦や玉入れなどはしません。模擬戦です。
体育の部は4日間。
1日目は全校生徒チーム戦トーナメントの予選。
2日目は個人戦の予選。
3日目はチーム戦の本戦。
4日目は個人戦の本戦。
3、4日目の本戦は一般公開しており、学生の身内以外の方も観戦出来るようになっています。
対して、文化の部は3日間。
1日目は非公開日。
2日目は学生の身内限定公開日。
3日目は一般公開日となっています。
準備期間中の2週間の予定としては下記の通り。
午前・文化の部の準備。
午後・体育の部に向けて鍛錬。
体育の部のチーム戦は5人1組。
メンバーは友人同士や実力者を勧誘し、夏期休暇が始まる前に希望用紙に記入して提出します。
大体の希望は通りますが、先生たちがパワーバランスがおかしいと思ったチームは変更されます。
私は勿論ブロウたちとで用紙を出しました。
それぞれ専攻が精霊魔法2人、魔法1人、古代魔法1人、薬学1人で、バランスは悪くないので大丈夫でしょう。
「まず、体育…の、部…チームの……メンバー…用紙、を、配り…ま、す…」
確定されたメンバー用紙には、夏期休暇前に書いた名前が。良し。
「キャリーちゃん、頑張ろうねっ」
「ブロウは個人戦も頑張ってね」
「うん!母上たちも観に来てくれるんだぁ。目指すは優勝!」
私たちのチームで個人戦にエントリーしたのはブロウだけでした。
次は文化の部の出し物決め。
学園祭は、来月の初めにあります。
簡単に逆算してみると?
今月の半ばには準備期間は始まっています。
なので、大体のクラスはこの始業式後のHRで決めてしまいます。
「じゃあ、2Aの出し物は、精霊喫茶で決定!」
学級委員長が教卓に立って、候補をまとめ、出し物が決定しました。
精霊喫茶…、つまり精霊たちの可愛さを存分にアピールする喫茶店ということですね!?
良い案だと思います、リンネやハディくんに目一杯おめかしさせましょう!




