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たろ君の秘密  作者: SHINOBI‐Z
2/4

中編

主人公の一人称を私→一果(名前呼び)に変えました。

たろ君の衝撃の告白から一夜明けて翌日。


「たろ君、たろ君~ほーら、あなたはだんだん曲げたくなーる。ほれほれ~」


彼の目の前でスプーンを掲げると、それは涼しい顔でたろ君はひょいと取りあげパンの上にマーガリンを塗った。


「え~、スプーン曲げなんて定番中の定番じゃん」


たろ君は黙って首を横に振る。

どうやら物を曲げた動かしたりは出来ないようである。


テレパシーと催眠のみが出来るらしい。それでも十分すごいけど。

こうして見たら普通の人なんだけどなぁ、ともぐもぐとトーストを咀嚼しているたろ君を見上げると目が会った。

たろ君の能力について、まだまだ全然分からないのでいくつか質問することにした。


「人の考えている事ってどういう感じに分かるの?意識を集中させたら?」

NO.とたろ君が首を横に振った。


「じゃあ普通の声みたいに聞こえてくる感じに分かるの?」

YES.


「誰でも?どんな人でも?」

YES.


「どれくらいの範囲で聞こえるの、例えばこの距離なら私のしか聞こえない?」

NO.


「じゃあ…このマンションに住んでる人くらいは常時聞こえてる感じ?」

YES.


「え…じゃあ、301号室のイケメン大学生の葉山さんの生活音も聞き放題?!……じゃ、なくて。たろ君それって結構うるさくない?だって四六時中他人のくそどうでもいい心の呟きつまりツィッター!を脳内再生されてるわけでしょ」

……NO?


いや、首を傾げられても分からん。

たろ君は一果の方をじっと見たままである。何か考えているのか、なんなのか全く分からない。

もしかして、一果?


「なに?一果が人一倍騒がしいからって!?毎日毎日ぎゃーぎゃーきゃぴきゃぴうるさくしているから近辺の心の声など気にならんわぁあ!というわけで、黙れクソアマがぁああ!!って事!?そういうことなの、そういうことなの!たろ君!!」


激情のあまり気付くと私は、たろ君に詰め寄りがくがくと揺さぶっていた。

たろ君は食パンを齧ったまま(かろうじてまだ死守)、一果の腕を止めようとしていた(しかし、握力50の一果の前ではそよ風のような抵抗にしかならなかった)。


「ハッ…私、なんてはしたないマネを…」


やべぇ、いままで必死に捨てられまいと猫被ってたのに…。なんだこのゴリラ女、こんな奴だとは思わなかった。えーいこんなアラサー女とっととドブ川に捨てちゃえー☆てな感じで振られてしまう…!な、なんとか取り繕わないと!


「えへー、ちょっと今手が滑ってぇ。えへへ~、ベーコンエッグの時かな?ちょっとエキストラバージンオイル使いすぎちゃったペロ」


てへへ~、とたろ君のシワシワになったシャツを直しながら言い訳するも(…そういえば、たろ君心の声が読めるんだっけ…?)と思い出した。

YES.とたろ君が首を動かした。


まじか…。まさか全てお見通し…?弁明の余地無し?

YES.


あれ、これ声に出してないんだけどなぁ…。もしかして一果たち会話なしで意志疎通できる?

YES.


スゲ――――!なんかスゲ―――!テレパシースゲー!

YES.


やったああああ!すごーい、まさに以心伝心!

YES.


あれ…でも、他の人とも以心伝心?

ていうか一果は、たろ君の考えていること分からないし…つまり一果の一方通行じゃん!

相変わらず会話のキャッチボール出来てなくない?


ピッ。


あ、たろ君が妙にタイミング良くテレビのチャンネルを出した。なんだその露骨な「なんか核心に触れそうだから誤魔化してしまえ」みたいな行動は。

ていうか、そもそもなんでたろ君は一果にいきなりカミングアウトしだしたんだろう。

付き合った当初ならまだしも、こんなに時間が経っているのに。

もしかして素子との会話を聞いて…ないわけがないな!原因はそれかー!


いや待て待て。もしかして。


結婚詐欺を疑われてのカミングアウト→身の潔白の証明→新たな信頼→愛情が深まる→ゴォオオルゥウイィイン!!!


え、なに。そういうことなの⁉︎たろ君!!

結婚しよってことなの⁉︎どうせこれも聞こえているはずなのに否定しないってことは、イコール図星かつ真実と見なすけどいいんだよね⁉︎

何なら箪笥の中に一果の分は記入済みの婚姻届あるから、たろ君今書いとく⁉︎

なんなら明日朝一で提出しに行くけどいいよね⁉︎何も問題はないよね⁉︎

幸せな家庭を作ろうね!たろ君!


ちょんちょんと肩を軽く突っつかれて、我に返った。たろ君が一果を無言で呼んでいる。


「え、なに?」


『劇場版 仮面ファイター正義〜血染めの白帯、裏切りのダークネス〜』の予告がやっていた。

欠かさず見ている戦隊ヒーロー番組だ。必然的にたろ君も見ている。一果に至ってはTVで視聴後、DVD初回盤を購入さらにはコミカライズした漫画を購入、現在同人誌にまで手を出しているというハマりっぷり。

いや、どうか良い歳した大人がなにやってるんだと呆れないでほしい!

複雑で深いストーリーと話題のキャスト陣、仮面ファイターは今や単なる子供番組ではないのだ。


ていうかうっかり忘れてたけど今日、公開初日だ!

スマホで調べると近所の映画館でも上映するらしい。しかも今日は日・曜・日!や・す・み!


「えへへぇ〜、たろくーん」


ぺっとりたろ君の腕にくっ付いて、デートのおねだりをするとたろ君が此方に振り返る。

たろ君は何か言いたげに(しかし頑なに終始無言)で目を細めていた。

…そういえば、たろ君人混みが苦手だった。人酔いする性質で、たろ君と一緒に某歌手のコンサートに行ってたろ君が一人で人混みに流され(一果は余りにエキサイトしすぎて気付かなかった)、貧血で倒れて救護室でライブを聞くはめになった事があった…。それ以来、元々少なかったたろ君が仕事以外で外出する事が心なしか減ったような。


今思えば、テレパシー能力者のたろ君がそんな人口密集地に行ったら普通の人より余計気持ち悪くなるのは当たり前なのかもしれない。

日曜だし、広い年齢層に人気のある作品だ。きっと混むだろう。長時間並ぶだろうし、下手したら立ち見になるかもしれない。……うん、映画は後で個人的に行こう。


「…なんでもなーい。食パンもう一枚焼く?」


たろ君は首を振った。そしてスマホのモニターを私に向けた。

チケット予約完了の確認、の文字。


「た、たろ君…もしかして」


映画、予約してくれた上に一緒に行ってくれるのか。普段は断然DVD・ブルーレイ派のなのに。

さ、さすがたろ君…。気が利く上に優しい。これは濡れた。

こうして一果とたろ君は映画館デートすることになった。



上映は昼過ぎということで、午前中は街中をぶらつくことにした。

いや、ぶらつくというより殆ど外出しないため、外着がそのまま部屋着化していたたろ君の服装をなんとかするためにショッピングした。


はっきり言って、たろ君はファッションにこだわらない。あまり自分を着飾る事に興味はないようだ。一応たろ君の名誉のために言っておくが、散髪や髭剃りくらいの事はやっているのでムサい状態ではない…が、さすがに色褪せて袖口びろびろになってるTシャツじゃだめだと思うんだ、うん。そのシャツ着やすくてお気に入りなんだろうけどね。


「あ、こっちの色も良くない?ちょっと着てみ?下はこのやたらファスナーが付いてるやつとかどうかな?可愛くない?ロマンじゃない?ファスナー開けたり開いてるの見るのって、なんかドキドキしないフヒヒ」


たろ君が鼻息荒くにやにやしながら手渡された服をじっと此方を見た。

一果は当然エスパーではないが(もう許して下さい…)という心の声が聞こえる。

かれこれ今のお店で五軒目で、このに来てから30分は経過している。


「だって、こんな時じゃないとたろ君の私服増やせないじゃない」


たろ君自分じゃ滅多に買い換えないし。

たろ君を着せ替えて遊ぶなんてそうそう出来ることないし。おっと、これは欲望が滑り出てしまった。


「た、たろ君割とスタイルいいからなんでも似合うからつい色々着せたくなっちゃうんだよ!それとももう疲れた?ダメ?迷惑?もう帰りたい?」


たろ君は若干哀愁漂う顔で固まってから静かに首を振って、カーテンの奥に消えた。

へへへへ、ちょろいぜ。たろ君はちょっと上目遣いにお願いすればたろ君は大抵のことは聞き入れてくれる。人の心が読めているくせにちょろい。


「あ、たろ君たろ君!なんかすごい色のアロハある!たろ君アロハ!」


「……」


何故か見つけた蛍光グリーンのアロハシャツに興味を惹かれ、たろ君に見せようとするとまだ着替え中だった。

確信犯です。えへ☆

もう何年も同棲してるんだし今更だと思うが奥ゆかしいたろ君は自分の服でパンツを隠しながら無言でアロハを受け取った。その仕草がたまらなくかわいいと思う己は自他ともに認める変態なので問題ない(?)。


それからさらに一時間後やっとたろ君の洋服の購入が済んだ。

お店でそのまま着替えたたろ君の姿をしげしげと眺めながら我ながらなかなかいい仕事をしたと思う。

まぁ、たろ君なら生まれたままの姿でも十分可愛いし素敵なんだけどねっ。むふん。


一果が異様ににやにやしていたからか、心を読んだからかたろ君は急に手を取った。

たろ君がそんな積極性を見せるのは滅多にない事で驚く。


「どしたのたろ君…はっ、もしやチューしたくなった…!?」


高鳴る胸を抑えて目を瞑ると、たろ君は一果の手を掴んだまま早足で歩き出した。

わけが分からず一果もそのまま付いていく。


「な、何?ホントにどうかした?どこにいくの?映画館は?」


「………」


やはり返事がない。

他にどこかに行く予定とかはなかったはず。急にどこかへ寄る予定ができたのだろうか。

方向は完全に映画館とは真逆だし。

こっち人通りも多いしたろ君苦手なんじゃない?しかも今日はこの近隣でビアガーデンをしていていつもより賑わっている。


「たろ君、ビール飲みたかったの?」


やっとそこで立ち止まったたろ君は首を横に振る。だよね、たろ君アルコール一切受け付けないもんね。

じゃあどうしたのだろうと思うと指差した先には前から最近出来たばかりのイタリアンレストラン。料理もさることながら絶世の美男子店員(現役大学生!!)がいると素子が大絶賛していたんだった。ここ最近色々ありすぎて頭から吹っ飛んでたけど、多分偶然じゃない。たろ君がちゃんと覚えていてくれたのだ。

た、たろ君…まさかここに来るためにあんなに急いでいたのか…。思いのほか服を選ぶのに時間がかかってしまったし。


「たろ君だいすき!!」


大げさかもしれないけど人目も恐れずたろ君につい抱きついてしまった。

たろ君はされるがまま一果にぎゅるぎゅる締められていたが、ぎこちない手つきで肩に触れた。そのまま私の肩に洋服の一部みたいに乗っかる。それがよくわかんないほど嬉しい。


(一果、あんたさぁ、それ騙されてるんじゃない?)


ふと素子の言葉を思い出す。

いいんだ、騙されたって。どうされたって。


たろ君になら。


愛してるから。超超超、愛してる。絶対たろ君の両親より一果のほうがたろ君を愛してる。結構マジでそう思い込んでいる系女子27歳。

たろ君が何者でも何があっても誰に言われてもずっと大好き。


優しいから?気が利くから?話を聞いてくれるから?一緒にいて落ち着くから?

超能力者だから?


違うよ。好きだから好きなんだよ。

一果はお馬鹿だからうまく言えないけど、たろ君の全部が好き。

何をしてもされてもキュンキュンする。愛しすぎて食べちゃいたくなる。

それだけなんだよ。五年も一緒にいてこれなんだからきっとこの先も大好きだよ。きっと一生たろ君のこと愛してるよ。


だからそんなに不安にならないで。





レストランで昼食をとった後、何故かタクシーに乗って映画館へ向かった。

時間にも余裕があったのにタクシーに乗りたがったのはたろ君だ。疲れたのだろうか。

そんなこんなで映画館には無事に上映前にたどり着き、チケットも予約していたおかげで座ることができた。


「チュロスとキャラメルポップコーンLとフレンチドッグとプレッツェル二個ずつと、メロンソーダとウーロン茶…あ、ホットドッグとかあるけどどうする?」


たろ君がぶんぶん首を振った。

そして山盛りのトレーを見て、胃をさすっていた。

さっきのイタリアンでマルゲリータとペペロンチーノを二人で分けあって食べたくらいで一果の胃袋は満たされないんだからね!大丈夫、一応キャべジン持ってきてるから!


それにしても本当に人が多い。休日で昼間なのもあって特に親子連れが多い。

その中で中学高校生くらいの学生や20代くらいの大人もちらほらいる。同士よ…と生暖かい気持ちになる。


たろ君と「やっぱ初日公開はすごい人だねー」とか喋っていると余程エキサイトしたのか獣の仔と化した小学校低学年くらいの男の子がたろ君にぶつかった。


「ああ、ごめんなさい!」


すぐさま男の子のお母さんらしきひとが来て男の子を捕まえた。

男の子はじーっとたろ君の方を見ていたがお母さんが謝らせていた。

たろ君は軽く首を振って「気にしないで下さい」のジェスチャーをする。

特にたろ君も男の子にも何もないようなので、今度はちゃんと捕まえとくのでーとそのまま親子はどこかへ行った。


「あれ、たろ君手どうしたの」


ふとたろ君の手のひらに何か付いているのを見つけた。

色が薄い上に肌の上に付けたので見えにくいが何かのハンコのようだ。映画館に来るまでは付いてなかったので、さっき付いたのかのかと考える。そういえば男の子は何か持っていたような。仮面ファイターのグッツだろうか。映画見終わったらチェックしないと。


「あ、もう映画館の中に入れるみたいだよ」


ハンコについては特に気にせず、たろ君に声をかけた。

顔を上げたたろ君の顔が妙に強張っている。感情が薄いのはいつも通りだが、普段とは明らかに違う。


「ど、どうしたの…たろ君」



「おい、止めときな。勝手が過ぎるんだよ」



きゅうに野太い声が聞こえてぎょっとして後ろを振り返る。

いつからいたのだろう。


ざっと2mはあるであろう大男がいた。

ソフトモヒカンの黒髪にゴーグルのようなサングラスをかけて、体格はレスラーかラガーマンのようにがっちりした巨漢。それに黒スーツを着ている。この暑い季節に。しかし汗一つかいている様子もない。


誰、この人だれ…。

ていうか今喋ったのってこの人だよね?これって私たちに言ったのか?


「やつらもう中に紛れ込んでたぜ、そのまま暗闇に乗じてお前を掻っ拐う算段だったらしい」


やっぱりこっちを見て言ってる。なにこの人、たろ君の知り合い?

YES.とたろ君が頷いた。そうなのか…。なんか良く分からない事を言ってるけど、大丈夫なのか。


「ったく、こんな時に映画とか何考えてんだ。警告は通達されてるはずだろ、護衛するこっちの立場になれっていうんだよ。チョロチョロと動き回りやがって、彼女と気楽にデートってか?いい気なもんだなァ」


「た、たろ君なにこれどういうこと?」


まるでドッキリに巻き込まれた気分だ。

日本語をちゃんと喋っているのに相手の言っている事が何一つ分からない。


「でもよォ、ペケコ、お前なんでみすみす接触を許した?その手かなり強力な蛍光塗料だぞ。おそらくこの国のものじゃない。館内に入ったらそれ頼りに探すつもりだったんだ。避けようと思えば対処可能だったはずだ。相手が子供だったからか?それとも心を読んじまったか?情けをかけるのは自由だが、こっちに飛び火しない程度にしろよ」


「ちょ、ちょ、ちょっと!アナタ!」


ひとりべらべらと喋り続ける(なんかたろ君を責めてるっぽい?)謎の大男とたろ君の間に勇気を振り絞り割り込んだ。

大男はサングラスで目元の様子は分からないが、愛想はいいらしく口元を緩めてにっこりと笑った。


「おお、面と向かって話すのは初めてだな!遠藤一果!あんたはすげぇ面白いやつだな」


「なんで名前…」


「そりゃ、報告に上がっていたり俺自身あんたたちを見守ってたからだ。なに礼はいらねーよ。こっちも任務だ、気にすんな」


ハハハと笑い声まで豪快だが「アレ…今すごく爽やかにストーカーをカミングアウトされてない?」ということに気付く。任務ってなんだ。


「あ?ああ、悪い悪い。そうだな、一般人には通じないか。

じゃあ怪しい者ではないってことで自己紹介を。俺はこいつのそうだな…職場…ていう言葉であってるのか?まぁ、一緒に働いている人間だ。名前はキャシーだ。

組織の命令であんたたちの事を守ってる。まぁ、そういう任務だから気にしないでくれ」


いやいやいやいや!

キャシー名乗った男はこれで完璧に説明しきったと信じ込んでいるらしく、そのまますぐにたろ君に向き直った。ていうか名前、明らかに偽名じゃねーか!まんま東洋人顔だし、似合わなすぎる…。たろ君のことも変な名前で呼んでたし。


「取り敢えずお前は来い、上が報告を求めてる。すぐにだ、すぐ」


たろ君の手を取りキャシーさんがずんずん歩き出した。

え?え?と呆然としてるとエレベータにあっというまに二人が乗ってしまった。


「ああ、悪いがあんたは連れて行けないんだ。敵は除いてるからあんたは映画でも見てきな、むしろ二三時間つぶしたほうがいいかもな」


そう言い残して、エレベータの扉が締まる。

いや、全然意味が分からない。少しも分からない。

たろ君もなんで大人しくあんな怪しげな人に付いていったのだろう?

ああ、混乱して思考がまとまらない。


何回電話やメールしてもたろ君は出ない。

せっかくチケットを取ったのだし戻ってくるかと待っていたが、結局たろ君は暗くなっても戻ってこなかった。私も気が気じゃなくて映画を見ず、ずっとエレベーターの前から動けなかった。


取り敢えず家に帰ればたろ君先に戻って来るかもと思ったら、マンションが燃えてた。


燃えてた。火事だ。


人だかりができて、救急車や消防車な何台も泊まっていた。

あまりの出来事に気が付いたら薄ら笑いながら頬を抓っていた。

しかも私たちの部屋がモロ燃えてた。見慣れた窓から火柱が立っているのが見えた。


がくり、と脱力して膝から地面に座り込んでしまった。


ただもう勢いよく燃えるオレンジの炎を見上げるしかなかった。

ショックで何も言葉が出なかった。

ポケットの携帯が震えた、見るとたろ君からメールがきていた。


『ごめん、別れよう。さよなら』


メールにはたったそれだけ書かれていた。

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