プロローグ
※過度な期待はせず、「ん?」と思うところは記憶から抹消しつつお読みください。
お互いを認め合いそれぞれの生き方を尊重するということ。それを口で言うのは簡単だが、実際にそうしようとすると案外難しい。
なぜなら人の数だけ生き方は存在し、その生き方を構成するファクターは千差万別だから。そしてその中にはきっと、受け入れがたい生き方も存在する。
辛いことがあったはず。しかし、それを打ち消してしまえるほどの幸福もあったはず。
ぶつかり、立ち止まることもあっただろう。決定的に他者と相入れない状況にだってなってしまったかもしれない。
だが……それでも、彼らは進んできたのだ。歯をくいしばって耐えて、自分の足で歩いてきたのだ。
そこから目を逸らし、上っ面だけを見て他者を受け入れた気になってしまうのはあまりにも愚かで、陳腐な言葉を使えば『ひどいこと』ではないだろうか。
……少なくとも、俺はそう思っている。
「こらぁぁーー!! 待ちなさい悠一ぃぃーー!!」
「ゆ、許してくれぇ遥ぁぁあぁーーーーー!!」
叫びながら歩道、俺たちの前方を走っているのは我が友人たちだ。まったく何をしてるんだと呆れるものの、ある意味微笑ましくも思うため止めることはしない。
「仲いいね~二人とも。羨ましいなぁ」
「……いや、あれに憧れんのは駄目だからな? あれは異常だからな?」
笑顔でぽわんとした発言をしたのは俺たち四人の紅一点、清水香里だ。
……紅一点とか言ったら遥に「あたしは? ねえあたしは!?」とか詰め寄られそうだが問題ない。これは心の声だから。
そして、香里を間違った道に進ませないように苦心しているのがこの俺、立花真司。巷では、素直じゃないと評判な男の子である。……自分で言ってて恥ずかしくなったのは秘密だ。
これから、俺たちが歩んできだ道を少しだけ話していきたいと思う。
これは、ほんの少しの不幸と、ほんの少しの救いのお話。