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[ソロアサ 二次創作]

[ソロアサシン] 貴方と語る

作者:
掲載日:2026/08/20

※こちらの作品は 高鳥瑞穂様の『「そんなの、ムリです!」~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~』の二次創作になりますm(__)m


 思いついたネタを書き殴ってみたので、敬称・設定諸々が無茶苦茶になっているのでご了承ください。


前衛の部決勝戦……の直後から ボンレスハム視点になります。

『この大会はトラが勝ち抜いて、雪辱を果たすためのものだ』


 仲間うちの誰かがそんな事を言い始めた時には、ほんの少しだけ笑ってしまった。

 ただしそれも準備を始め、研究を重ね、本番を見据える頃には、私達皆が当たり前の事として受け入れていた。

 それほどまでにこの大会のルールと、彼の誇る能力は相性が良すぎた。


 実際に大会本番で、彼がわざとらしく見せつけるような振る舞いをしても、結果は小揺るぎもしない。

 このゲームの中でも上位陣と認められる程の強者でも。

 抜群のセンスを誇り数多の対戦で鎬を削る、プロと名乗れるゲーマーを相手にしても。

 圧勝に次ぐ圧勝で、決勝進出を決めた時点で『リーダーとの再戦』は叶ったものだと思ってしまった。


 たった一人。

 真意をひた隠し続けた少女と、それを支え続けた仲間達を見落としていなければ。


 ……あまり気取った言い回しというのも似合いませんね。


 小さな溜息をつきながら、思わず苦笑してしまう。

 興奮というか、背筋の震えが止まらない程の一戦が終わった今でも、どこか浮ついたままなのだろう。


 彼の前に立ち塞がった少女は、これまでのどんな相手よりも本当に強かった。

 ……というか彼を倒すためだけに、物のついでに世界中のオンラインゲーム業界関係者を混沌とした状況に叩き落しておいて、当の本人だけは何も理解していないという。

 そもそもあんなとびっきりの大発見を引き当てておいて、最後の最後まで隠し通せるなんてどんな心臓をしているのだろう。


「…………いったいどんな星の下に生まれれば、これほど愉快な事になるのやら?」

 これまでもそれとなく交流を続けてきた身だが、この大会、最後の最後まで彼女の真意に気づけなかったというのだから、いっそ笑うしかなくなってくる。


 いくつかの通達を済ませてからゲームを離れて、いつものVRルームの方へと移動する。


 彼のマネージャーであり、同じギルドの仲間でもある私に対しても、試合途中から数え切れない程のメッセージが叩きつけられてくる。

 今一番やりたい事に集中できないのなら、おそらく彼が帰ってくるのはこっちだろう。


 そんな事を考えながら、先程出した物に対する返信に軽く目を通し、問題無さそうな事に一息ついた。


 ――ゲーム内で一緒に集まり彼の勇姿を応援していて、まさかの展開に混乱していた仲間には、

『彼女にとっても大切な一戦が控えているのだから、今はなるべく余計な事はしないように……彼を打ち負かした彼女の努力に敬意を払いましょう』

 ……そう伝えて誰からも異論が出なかった事が、ほんの少しだけ嬉しかった。


 ――決勝戦の同時視聴に集まってくれていたリスナーや、ついったー等各種ツールへは私の名前で、

『これから反省会か検討会になると思うので、この後の配信予定が立っていません。お待たせする事になりますが、次は必ずトラを連れてきます』

 ……と伝えた事で、概ね理解が得られたことも幸いだった。

 その際、「爆弾娘対策会議」というコメントに思わず笑ってしまったり、「その会議がまともに終わるのか?」という心配に答えを返せなかった事はあれだったけど。



 いつも使っているソファーに腰を下ろし、公式配信から決勝戦の動画をダウンロードする。

 ざっと確認してから、冒頭を彼らが登場するタイミングに指定し、〆を決着の瞬間へと決めておく。

 ……そんな作業をしている内に、この部屋への入出メッセージが流れ顔を上げる。


「……おかえりなさい、お疲れさまでした」

「…………ああ」

 思っていた通り、激戦の末に疲れ果てた……なんてことも無く、先程の一戦で頭の中が一杯だといった感じの龍哉が帰って来た。

「…………準備は?」

「できてますよ」

「…………そうか」

 短い言葉に、準備していた動画ウィンドウを示して見せると小さく頷いた。


「……ただし、」

「あ?」

 こちらに歩いて来る龍哉に一声かけると、想定外だったのか不思議そうな顔をして立ち止まる。

「研究するにしても、この後の閉会式にはきちんと出てくださいね」

「…………そうだな」

 完全に忘れていたのか、私の指摘にばつの悪そうな顔をする。


「それともう一つ」

「なんだよ?」

 矢継ぎ早に声をかけると少し不満気だ。

「今夜中ずっとやりたいのなら付き合います。ただ、閉会式が終わった後にシャワーでも浴びて、最低限晩御飯を食べてからにしてくださいね」

「…………」

「明日にはホテルを出るのでしょう?課題はこちらに戻って来てからでも良いですし、貴方の言葉を待っているリスナーも居るんですよ?」

「……分かった、そうする」

 諦めたように溜息をつき、自分の席に来るとどっかりと腰を下ろした。


 ……自制心の一欠片でも残っているのなら御の字だろう。



 早送り、一時停止、少し戻して等速、巻き戻して再生し、確認したら次の場面に。


 黙って待つのも嫌いじゃないが、負けた直後にこれほど打ち込んでいる龍哉を見るのも珍しい。

 公式配信の動画も三往復はしているのに、まだまだ手を止める様子もない。

「…………あっ」

「…………」

 今度は自分視点の動画画面まで開きだした。

 ……正直、この世に一つしかない彼の一人称視点は物凄く気になっていたので、声もかけずに彼の横へと移動しその画面を覗き込む。


「……チッ」

「うわっ、と」

 少し視界を遮ったのだろう。

 体勢をずらすように抱き寄せられるが、それ以上は何も言わない。

 ……早く帰ってくればいいのに。


 目の前に流れる彼目線での試合を眺めているのも不思議な感覚になるけれど、見れば見る程こみ上げてくるものもある。

「貴方はこの大会で、」

「ん?」

「まず間違いなく最強でした」

「…………」

 お世辞でもなく、心の底からの本音を。


「相手の思惑を叩き潰し、歯向かう術を全て捻じ伏せて、やり過ぎなくらい圧勝する様を見せつけた」

「…………」

「実際に外野からも、身内からも、『準決勝までの』セリスが相手なら……それが全体での総意でしたよ?」

「……だよなあ」

 どこか呆れたような声を出しつつ、彼も操作を止めた画面を眺めている。


「セリスはセリスなりに、この大会へとかける思いがあって、その前に立ち塞がるのが間違いなく貴方だった」

「…………」

「貴方の強味を理解するからこそ、彼女もこの一戦に全てを込める必要があった」

「…………」

「息を潜め、牙を隠し、その刃を届かせる事に全てを賭けた」

「……ん?……なあ」

 あの試合の後からずっと追いかけていた私の推論を、黙って聞いてくれていた龍哉が微妙な顔で止めて来た。


「あいつ、潜めていたのか?……あんなんで?」

「………………ふふっ」

 どうしよう、否定する言葉が何も無い。


「たぶん、彼女たちの戦略的には……あってると思いますよ?」

「ん」

「最強の切り札を伏せて、意図的に実力を下げて、大会を通して全員を騙しぬいて来た」

「……そうだな」

「あの決勝戦に全てをぶつければ、いくら貴方が相手でも仕留めきれる勝ち筋があった」

「……それでも博打か」

「おそらくは、そしてそこまで逆算できる軍師ぽんすけが居たおかげで」

「……あんなやりたい放題な道程に繋がったと」

「…………」

 それで成功に結び付いたのだから手に負えない。


「……日本語って難しいですねえ」

「あいつらが飛び抜けて特殊なだけだろ?」

「……その言葉、貴方にだけは言われたくないと思いますよ?」

「……まーな」

 お互いに目を合わせ、どこか呆れたような笑いがこぼれ出していた。


「ポンコツきのこ、実際に食らってみてどうでしたか?」

「んん?ああ……」

 どこか言葉を選ぶように、天井を眺めて考えている。

「途中の大外れ直撃で即終了、それが普通にあり得たかもな」

「……そんな事になったら、貴方には悪いけどトラ小屋一同で大爆笑していましたね」

「公式大会の決勝でそんなオチがついたら、どう言われたって文句はねえよ」

「ふふふ……」

 どこか投げやりな龍哉の様子におかしくなってくる。


「……もしそうなったら、今度はリーダー戦にあのニブイチが放り込まれて、何もできずにリーダーがあっと言う間に消し飛ばされる……と」

「ふっ」

 その様子が鮮明に思い浮かんだのか、珍しくうけてくれたらしい。

「ぶっつけ本番でそれができるんなら、文句なしでアイツも殿堂入りだ」

「ですよねえ……」

 表彰式のど真ん中、会場全体がとても微妙な空気の中、「初見殺し」と銘打たれたタスキを押し付けられ、慌てふためく彼女の様子が目に浮かぶ。


「きちんと力を出し切られたから納得できる負け方ができた、というのも変な話ですねえ」

「あいつもとびっきりだからなあ」

 とびっきり代表がそう評するのだから間違い無い。


「……ポンコツきのこを見せ札に、貴方の耳と手足を縛り付けた」

「…………」

「拳装備への誘導に、覚醒スキルを見せつける事で守勢へと追いやられ、後手後手になって行く……」

「きのこか覚醒かの強制二択……こんなもん聞いた事もねえよ」

「まったくです。でもあの展開の中で、外せば即死な選択肢なんて選べない」

「……だな」

 動画を調整してその場面に持っていき、大混乱な実況席の様子も部屋の中へと広がって行く。


「きのこだけなら、セリスだけなら……まだ確実に付け入る隙も残っていた」

「…………」

「そんな急所を尽く潰し、この大会で貴方を仕留める舞台を完成させた男……」

「……あいつらに時間と猶予を与えすぎるのもめんどくせえな」

「ええ、本当に」

 普段は積極性の欠片も見せない癖に、その気になると嫌らしいほどに知恵が回り、リーダーの首を虎視眈々と狙っている変わり者。


「……そういえば、軍師ぽんすけもこの大会で散々名前が売れたので、彼女共々しばらくは忙殺されますね」

「……ざまあねえな」

 本当に、散々暴れ散らかしたのだから、保護者としての責任は取るべきかと。


「…………そして問題のアーケインムーブになると」

「…………」

 何度繰り返してみても、ここで食らいつかないなんて選択肢は無い。

 ……それ程までに完成された誘導は鮮やかだった。

「あの時」

「……ん?」

「一緒に見ていたメンバーは、あの瞬間勝ちを確信して飛び上がって」

「…………」

「そこからの展開に、まとめてずっこけていましたからね」

「……そりゃしゃあねえだろ」

 思わず苦笑してしまう光景が伝わったのか、龍哉も呆れ顔だ。

「……ここまでされれば、お見事と言うほかありませんね」

「……だな」

 見直す事も考えるべき事もいくらでもある。

 そんな風に考えていたら、とある通知が届き思考が止まる。

「どうした?」

「ようやく後衛の部の決着がついて、ねむ蝉が勝ったそうです」

「……そうか」

「なぜか相手を挑発しながら、ワンサイドゲームを決めたそうですよ」

「……あのバカも大人気ねえなあ」


 ……『貴方がそれを(ry』は受け付けてくれないらしい。


 この先の日程を少し確認してみると、不意に面白い事に気づいた。

 彼に引っ付いていた体勢を戻し、少し身体を伸ばしてから一息をつく。

「ねえ、龍哉」

「ん?」

 また動画を弄り始める様子を確認し、口元を緩める。

「次の戦い、貴方はリーダーとセリス、どっちを応援します?」

「…………」

 お前は何を言っているんだと、その顔にありありと書かれていて笑ってしまう。


「見たくないのなら構いませんよ?私一人で観戦しておくので」

「…………」

 見たいというのも癪だが、見ないという選択肢もありえない。

 可愛らしい葛藤が見え見えなので、黙って待っていれば小さな溜息をついている。

「研究ついでに、あのバカの泣きっ面が拝めるんなら文句はねえよ」

「ふふふふ」

 照れ隠しに睨みつけたって、逆効果にしかなりませんよ?


 今度は自分で公式配信の画面を呼び出して、邪魔にならない程度に音量を上げる。

 尺の調整を兼ねているのか、実況席ではこの大会の、主にセリスの奇行について熱心に語られている。


「……長い長い道のりを経て、」

「ん?」

「ようやく天辺に辿り着いた彼女が、」

「…………」

「想い人に対して、ありったけのオモイでどんな事を仕掛けると思います?」

「……うっへえ」

 思わずと言った調子で天井を見上げ、変な声を上げる。

「ふふふ……そんなに嫌ですか?」

「めんどくせえ……」

「あらあら」

 好戦的な人なのに珍しい。


「そういうお前は、そんな挑戦受けてみたいのか?」

「絶対、嫌ですね」

 迷うことなく即答すれば、意外そうな顔をする。


「そんなどうしようも無い状況になる位なら、ジュースでも片手に外野からヤジでも飛ばしている方がよっぽどマシです」

「……そりゃそうだ」

『あのニブイチ』以上の物がどれだけ飛び出してくるのか分からない戦い、そんな悲惨な状況には近づかないのが一番だ。


「次、どんな事を狙ってくると思います?」

「……イカサマダイスにアレを使った陽動、――――」

「貴方なら何を狙います?」

「――――」


 大きな大会や大事な試合で、負ける事や失敗する事はいくらでもあった。


 そういう時はほとんど塞ぎ込むような形で、思考の世界にのめり込む龍哉に、黙っていつも寄り添ってきた。


 でも今回はあんな派手な目にあったものの、逆に開き直れるきっかけでもあった。


 負けた直後なのに、何かに期待しながら一緒に語り合える。


 あんな不思議な彼女だからこそ、そんな貴重な機会を私達に与えてくれたのかもしれない。

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