その6
インターホンのチャイムに応じる琴理さん。
ガチャリ、とドアを開けた。
そこには不機嫌そうな男が立っていた。
「やあやあ、昼神くんじゃないか。」
「今日も元気そうで何よりだよ。」
琴理さんは皮肉たっぷりに言った。
事務所の応接室に通し、いのりがお茶を持ってきた。
「で、昼神くん。君が来たということは、また公にはできない事件ができたんだね?」
「いいだろういいだろう。青明琴理さんが見事、有耶無耶にしてみせよう。」
……そこは解決すると断言してほしかった。
ため息をつく彼。
「あなたと喋ると本当に頭痛がする。」
「すっかりこの事務所担当になった僕の気持ちを考えてくださいよ……」
「……君は確かはじめまして、だったよね?」
俺を見ながら彼は言った。
「昼神 夜一、だ。警察官をやっている。」
「佐藤くん。彼はあの一課所属だよ? それでも貧乏くじを引かされ続けるんだから、笑っちゃうよね。」
貧乏くじって、自分のことですよね? 自分で言っていいセリフではないかと。
「さて、昼神くん。本題に入ってくれ。」
眉間に皺を寄せながら、昼神さんは話した。
「……大動脈解離による変死が続いているんです。」
「大動脈解離って血管の壁が破れて出血死する「病気」ですよね? 「変死」ではないのでは?」
俺は首をかしげながらそう聞いた。
昼神さんは無言で頷いた。
「確かに佐藤くんの言う通り、ただ特定病死の兆候が多いだけにも思える。」
「被害者に同じ「外傷」が見られなければ、だが。」
上半身の前後に「穴」が空いていたんだとか。
最初はそれによる出血死も疑っていたらしい。
「被害者の共通項は?」
「ありません。」
頭を振る昼神さん。お手上げ、という感じだ。
「老若男女、です。特定の病院も、共通の通勤先も学校もなし。交友関係も繋がらない。」
「共通点は死因と外傷痕だけ、です。」
……こんなもんどうしろと?
「で、いつもの如く「魔法」のせいだと仕立て上げて欲しいわけだ。」
苦虫を噛むような顔で昼神さんは答えた。
「何もそうは言っていません……」
「ただご助力を仰ぎたいだけで……」
いのりが首をかしげた。
「まあ、仮に「魔法」を使うのだとすれば「火」以外のいずれかでしょうか。」
琴理が答えた。
「土の槍で貫く。水圧カッター。風の鎌を体内に。」
「まあ、いずれでもあり得るね。痕跡はどうとでもなる。」
「よし佐藤くん。」
琴理さんはガバリと立ち上がった。
「初仕事の時間だ。励み給え。」
初が殺人事件とは、またハードな……
あるいは三天王が関与してる、とか?
「あと、これ。」
ほいっと水の入ったペットボトルを投げられる。
「す、水分補給用?」
「馬鹿なのか君は。」
「感情的になった時に水を被り給え。」
……それで「魔法」が使えるかどうか試せと?
傍から見れば頭の冷やし方おかしい馬鹿でしょ。それ。
あと、まだ覚悟ができてないんだけど。
「さて、昼神くん。」
「ご遺体に会わせてくれ。」
……琴理さんは今日も自分勝手。




