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第31話 死んでいい訳ない

 魔女が目覚めた瞬間、森の空気が一気に変化していく。

 森の木々は生気を失い、動物達、鳥は恐怖で姿を隠してしまった。


「お前が『災厄の魔女』か」

「ふふ、そんな風に呼ばれるなんて心外ね」


 そう言うと封印された時のことを思い出したのか、魔女は唇を噛みしめた。

 そして長く伸ばされた爪が目立つ手を掲げ、茨の檻に閉じ込められたレオを引き寄せる。


「レオくんっ!」

「ふふ、でも今回のレオはまだ覚醒もしてないようね。『親』もレオも」


 魔女の言葉にわずかにクラウスが眉をひそめた。

 憎らしいものを見るような目で魔女はレオに視線を移す。


「ふん、こんな赤ん坊でこの私を止められる訳ないわ。すぐに殺してあげる」

「やめてっ!」


 エルナが叫んだその時、魔女は飛んできた攻撃を魔女は避けようとしたが、避けきれずに頬に切り傷ができた。

 すかさずそんな魔女に追撃するように、クラウスが睨んで攻撃をしかける。


「レオは殺させない」


 クラウスは魔術で氷の刃をつくると、それらを操り魔女へと向かわせる。


「こざかしいっ!」


 魔女はいとも簡単にその攻撃を振り払い、その勢いのままクラウスに茨の蔓を飛ばして反撃する。


「クラウス様っ!」


 魔女の攻撃で傷を負ったクラウスに駆け寄ったエルナに、彼は声を掛ける。


「離れていろ」

「でもっ!」


 食い下がるエルナだったが、クラウスは向かってくる魔女の攻撃に気づいて彼女を突き飛ばした。

 エルナがいた場所に茨の棘が刺さり、そこの地面が毒で解け始める。

 自分がそこにさっきまでいた恐ろしさで、エルナは実が震える思いになった。


(これが、戦い……)


「あら~外しちゃったのね。まあ、いいわ。私の本当の狙いは、『あ・な・た』」


 魔女は真っ赤なルージュが引かれた唇を上げながら、再び茨の蔓を伸ばして、クラウスめがけて攻撃を仕掛ける。

 その攻撃を避けつつも、わずかな魔女の隙を見つけてクラウスは攻撃をしていく。


「ふん、貴方なかなかの魔術使いね」

「…………」


 その言葉にクラウスは何も答えない。

 魔女は何度かレオを攻撃しようとするも、クラウスがそれを許さずにレオを守り続けている。


「じゃあ、これならばどう?」


 魔女がそう言った瞬間、魔女の目の前にリリアが立った。


「リリアさんっ!」

「さあ、これは貴方のお友達でしょう? 殺せるかしら、貴方に」


 クラウスはリリアが目の前にいても、攻撃の構えをやめることはなかった。


(駄目……このままじゃ、リリアさんが死んじゃう!)


 エルナがそう思った瞬間、ぎろりと魔女の瞳がエルナに向けられる。


「貴方、この娘に虐められてたんでしょう。それなのに、助けるの? 力もないのに? ここで殺された方がいいと思わない?」

「耳を貸すな!」


 精神攻撃を仕掛けられたエルナに、クラウスは叫ぶ。


(死んだほうがいい……? リリアさんが? 私を虐めてたから……?)


 確かに彼女には何度も虐められ、苦しめられて辛い思いをした。

 しかし、本当にここで死ぬべき人間だろうか。

 エルナは魔女を真っすぐに睨みつけ、想いを叫ぶ。


「死んでいい訳ないでしょ!」

「なっ!」

「貴方の犠牲となって死ぬなんて、絶対に許される訳ない! 彼女は私が守る!」

「エルナっ!」


 クラウスが呼び止めるのも聞かず、エルナはリリアのもとへ走り出した。


「馬鹿な女っ! 死ににくるなんてっ!」


 魔女は不敵な笑みを浮かべながら、真っ直ぐ向かってくるエルナに茨の棘を飛ばした。


(この速度なら、間に合う……)


 エルナはリリアを抱きしめて、そのまま草むらへ飛び込んだ。


「いたっ……」


 クラウスが魔女の攻撃からエルナを守ろうとしたが、それをすり抜けた棘がエルナの足に刺さった。


「もういいわ、所詮人形ね」


 そう言うと魔女はリリアの操り糸を外し、彼女を解放した。


「よかった……」


 エルナはリリアの無事を確かめると、そのまま倒れてしまう。


「エルナっ!」

「よそ見するんじゃないよ!」


 クラウスと対峙する魔女は容赦なく彼を痛めつけていく。


「くっ……」


 魔術の強い彼でも、『災厄の魔女』相手に魔術を使用し続けていれば、身体への負担も大きい。

 一方、エルナもまた棘から流れ入る毒と闘っていた。


「んぐっ……」


 毒によって足の傷はどんどん広がっていき、黒く変色していく。


(このままじゃ、みんな死んじゃう……)


 その時、エルナの耳に声が届く。



『自分を信じて』



「え……?」


 その声は確かに聞き覚えがあった。

 しかし、違和感がある。

 いつも聞いているはずなのに、聞いたことのない声。


(誰……?)


 エルナは声がした方を向いた。

 そこには茨の檻で閉じ込められているレオの姿があった。


(レオくん、なの……?)


 エルナは棘の毒で意識がもうろうとしながら、レオにそっと手を伸ばした。


「レオくん……」



『エルナ、自分の力に気づいて』



(自分の力……? 私にも魔女と戦える力があるってこと?)


 エルナの視線の先には、レオが真っ直ぐ檻の中からこちらを見ている様子が映っている。


(守らせて、レオくんもクラウス様も、リリアも!)


 そう心の中で呟いた瞬間、魔女の叫びが響き渡る。


「終わりよ。死になさいっ!」


 クラウスに向けて攻撃の刃が放たれた時、エルナは叫んだ。


「やめてっ!」


 その瞬間、エルナから眩い光が解き放たれる。


「なっ!」


 魔女は思わず身体をのけぞらせ、手で顔を覆った。

 クラウスもまた何が起こったのか分からず、光を纏うエルナを見つめる。


「まさか、あれは古代魔術か……?」


 レオの『親』が持つ唯一無二の武器が、精霊レオと同じ古代魔術『光の魔術』を使えることである。

 レオの呼びかけにより、『親』としてまだ覚醒していなかったエルナの力が、今解き放たれたのだ。



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